異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第二章 魔道具と 魔族とけいきの いい話

第24話 魔族と人間族

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 とりあえず俺も心当たりがないため、誰が訪ねて来たかをメイドさんに聞いてみた。

「も、申し訳ございません。先にお伝えすべきでした。……地魔皇ちまこう様がお見えになっています」

 ちまこう……ってアオイか!?
 魔道具について連絡したら、さっそく来たらしい。
 突然来たのだろうし、メイドさんも混乱してるっぽいな。

「さっき連絡したのがアオイ、えっと地魔皇で、さっそく俺に会いに来たみたいだ。調理用の魔道具の話だし、皆が問題なければここに来てもらっても大丈夫かな?」

「……そうですね。地魔皇様をお待たせするわけにはいきません。すぐにこちらに案内してください」

 と、ですわが無くなったクレア。
 そしてそれに対し、コクコクうなずくパティオさん。

 ……パティオさんはともかく、この国の王女様でも魔界のトップに会うのは緊張するのだろうか?



「突然の来訪すまないね。ハクト君が新しい調理用の魔道具の話をしたと聞いて、我慢できずに来てしまったよ。」

 アオイは興味ないかもとか思ったけど、全くそんなことはなかったな。

「そちらの王女様は直接話したことはなかったけれど、何度か会ったことがあるね。そちらは料理人かな? 今回はハクトの友達としてきたから、気楽に接してくれると嬉しい。それと、私のことはアオイと呼んで欲しいかな」

「ようこそいらっしゃいました。地、いえ、アオイ様。本日はよろしくお願いいたします」

 クレアのですわ、が完全に無くなってしまった。
 ……なんだか、緊張しているにしてもおかしい感じがするな。

 それ受けたアオイは、少し寂しそうな顔をした気がする。
 そんな感じの表情を、前に見た気がするな。

 ……そうだ、前に魔界でホムラに魔法を教わった時だ。
 魔族の悪いイメージが残ってる、みたいな話だったはずだ。
 王様は平気そうだったけど、何度も魔皇の皆と会って話しているだろうし、それで魔族に対するイメージが変わったのかもしれないな。
 
 でも、クレアは会ったことはあっても会話をしたことがなかったみたいで、魔族であり、さらにそのトップというイメージが先行してしまっているのだろう。

 ……これは、この世界では昔からある問題なんだろう。
 そういえば、王様も難しい問題が残っているって言っていたか。

 ……だけど、初対面でも俺と楽しく会話できた二人がこうなってしまっているのは、何だか嫌だな。

 よし!

「クレア、緊張しすぎて、ですわ、がどっかに行っちゃってるよ? アオイは魔道具のことになるとたまに暴走しちゃうけど、それ以外はただの魔道具が好きな人だから、暴走してない時は安心していいよ。そういうことでアオイ、今日はホムラがいないし気をつけてね?」

 アオイは一瞬目を丸くしたあと、

「あはは、そうだね。今日は止めてくれる役割の人がいないし気をつけるとしよう。……王女様、いやクレアさん、と呼んでもいいかな? 私は地魔皇っていう立場ではあるけど、今はただの魔道具が大好きな人物だと思って接してくれると嬉しいかな」

 クレアは一度深く呼吸をすると、
 
「すみませんですわ。……魔族の方とお話しする機会がなくて緊張していた、というのは言い訳ですわね。気楽に接してほしい、と言われている方に対して丁寧に接するのは、失礼なことなのですわ。……これからは、私《わたくし》もアオイさんと呼ばせていただくのですわ! よろしくお願いするのですわ!」

「うん、こちらこそよろしくおねがいするよ」

 クレアはですわ、が戻ったようでよかった。近くでそのやり取りを見ていたメアリさんも、顔を少しほころばせているように見えた。
 アオイもどこか嬉しそうにしている。
 
 後は、完全に固まっているパティオさんか。
 クレアは王女様ってこともあって切替が早かったけど、パティオさんは魔族ってことに加え、そのトップ相手に緊張するな、という方が難しいかな?

「それで、こっちで固まっているのがパティオさん。アオイみたいに、料理のことになると暴走しがちみたいなんだ。今日は俺が元の世界の料理を教えたら、実際にそうなっちゃってね。ウォーターボールをぶつけられても全然元に戻らなかったよ」

「……流石に私はそこまでではない、と思うよ。まあでも、私が言うのもなんだけど、そこまで何かに熱中できるというのはいい事だと思う。パティオさんは、今日はどんな料理を教えてもらったんだい?」

「へ、あ、わ、私ですか? 今日はショートケーキ、ええと、いちごと、白いクリームと、ふわふわな生地の、ええと、甘い食べ物です」

 ……やっぱり駄目そうだ。うーん……、そうだ!

「パティオさん、パティオさん」

「……ん? 何だい? ハクト君」

「俺の元いた世界では、料理を便利にするための道具って色々あるんだけど、さらには専門の道具が必須な調理法とかもあるんだ」

「! 本当かい!?」

 フィッシュ! フィィィィィッシュッ!

「例えば、真空調理とか低温調理って呼ばれている調理法があるんだけど……」

 俺はソフィアの漫画から得た真空調理の知識をパティオさんに教えた。真空状態だと調味料の味が素材によく浸透したり、低温で調理すると素材を柔らかく仕上げたり旨味をより残したりできるらしい。

「な、何だかすごい調理法だね。うん、是非ともやってみたい。 そして、どんな味か、どんな料理に応用できるか、色々と確かめてみたくなってきたな!」

 新しい調理法、パティオさんが興味を持たないはずなかったな。

「けど、その調理法を行うための道具をこの世界で作るとすると、密閉状態の袋を真空、つまり空気のない状態にできる道具や、常に一定の温度に保つための道具が必要だと思うんだけど、この世界にそういった道具は多分ないと思うんだ」

「た、確かに……。そんな道具聞いたこともないし、どうやって職人に作ってもらえばいいかもわかならいな……」

「そこでアオイの出番だ! 彼女は魔道具の職人だし、もしかしたら彼女ならそういった道具を魔道具で作れるかもしれないよ? アオイ、どうかな?」

「おっと、ここで私の出番か。そうだね、確約することはできないけれど、実際に存在しているものなら、ハクト君から情報を得れば似たものを作り出せると思う。リンフォンを始め、様々な魔道具を発明してきた自負もあるからね」

「パティオさん。長く生きる魔族だからいろんな知識を持っているだろうし、魔界のトップの一人ってことは、様々な人脈もあると思うんだ。そんな彼女に料理の魔道具を作ってもらえるって、すごい事じゃない?」

 言っていて思ったけれど、魔皇、魔界のトップが魔道具を作っているのは不思議だな。
 まあ、趣味だってことかもしれないけど。

「魔皇で魔道具職人、確かにすごい……。ああ、確かに、この機会を逃すのはもったいないね!」

 と言いつつ、テンション高くアオイの方に向き合った。
 が、そのままの勢いというのは流石に難しかったみたいで、一呼吸置いてから話しかけた。

「……アオイさん、先ほどまでの態度、失礼いたしました。改めて、パティオと申します。本日はよろしくお願いします」

「うん、よろしくたのむよ。このお城で何度か、パティオ君が担当した食事をいただいたと思うけど、どれもとってもおいしかったよ」

「本当ですかい! 魔族の料理の知識がなくて心配でしたが、お口にあったようで良かったです」

 勢いで砕けた話し方に、っていうのは難しかったみたいだけど、パティオさんも会話ができるようになってよかった。
 というか、アオイはパティオさんにも君づけで呼ぶんだな。

 確かに年齢を考えるとそう呼んでも、ってあれ? なんだかアオイから魔力が飛んで来てたような……。

 魔族でも年齢の話はタブーみたいですね、はい。
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