異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

文字の大きさ
79 / 161
第五章 切望を 叶えた者と 挑む者

第75話 おひろめ

しおりを挟む
 次の日、予定のより少し早く教会の前に行くと、そこには既にホムラが来ていた。
 ……って、迎えに行くって言っていたのに、来るのはアオイじゃないのね。

「よう、ハクト。元気そうでよかったぜ! それじゃ、さっそく城に行くか!」

 と、何故ホムラが迎えに来たかも聞けないまま、いつものごとく転移された。



 転移した先は前回来たソファが置いてある部屋、ではあるのだが、椅子の配置が違っていた。
 全ての椅子の正面が正面に置かれた物体に向くよう、扇形に配置されていた。

 アオイはそこで、何かの確認をしているみたいだった。

 ……あれが、アオイの言っていた魔道具だろうか?
 そして、そのお披露目でもするって感じかな?

 それと、この部屋にはヒカリを含めた魔皇全員が集合していた。
 とりあえず、アオイが何をしているのか聞きに行ってみるか。

「やあハクト君。ちょっと準備に手間取ってね。すまないけど、迎えに行くのをホムラに代わってもらったんだ」

「おはよう、アオイ。それは構わないけど、準備っていうのはなんだ? やっぱり魔道具か?」

「もちろんそうだよ。この前試作品が完成したやつだね。ホムラが代わってくれたおかげで、既に準備はできているよ」

「おっ、それは楽しみだな。あ、それと他の皆もおはよう。今日はヒカリも集まれたんだな」

 前回は代理を頼んだけど、結局はヒカリが解決することになっちゃったんだよな。
 今回も代理を頼んでる、って感じだろうか。

 それなら、今日も途中で離脱することになっちゃうかもしれないのか。

「アオイちゃんのおかげで、今日は集まることができたの。それと、今日は問題が起きても席を外すことなく解決できそうです。完全に解決した、ってわけじゃないのだけれど、アオイちゃんが作った魔道具の―」

「―おっと。その説明はちょっと待って欲しいかな。まずは、何も知らない状態で魔道具を見てもらいたいからね」

「あっ、そうだったわ。……それじゃあ魔道具の説明が終わってから、改めてお話ししますね」



 他の皆とも軽く話をしつつ、まずは魔道具のお披露目となった。
 それと、今日は何の目的で集まったのか聞いてみたんだけど、アオイから、まずは魔道具に集中して欲しいから秘密、と言われてしまった。

 ちなみに、俺の席は一番前の真正面だった。
 目の前には魔道具が置いてあり、そばにはアオイが早く見せたそうにうずうずしながら立っていた。

 ちなみに、他の皆はアオイの工房で既に見たそうだ。
 そして、色々と説明をされたり、意見を求められたりした、とのことだった。
 ……もしかして、それがあったから昨日は落ち着いていたのかな?
 
「それじゃあ、さっそく魔道具を起動してみようか」

 そう言いながら、アオイは魔道具を操作した。
 すると、正面にある壁にカッコつけたハヤテの姿が投影された。
 
「おお! 壁に写すタイプの魔道具を作ったんだな」

 魔道具でプロジェクターを再現したのか。
 確か、アオイにはプロジェクターのイメージは共有してなかったはずだ。
 それなのに、俺の世界にあったものを再現するとは、流石はアオイだ。

 それと、なんで写っているのがハヤテなんだろう。

 ……ハヤテが何か企んでいる気がする。 
 あえてスルーしておこう。

「その反応を見ると、もしかしてハクト君のいた世界には似たような物があったのかな?」

「ああ。プロジェクターっていうものがあるんだ。……最初に会った時、これも思いつけばよかったな」

「まあ仕方がないさ。それにね、それを共有してもらったとしても、あまり製作時間は変わらなかったかな」

 アオイによると、

「それとね、別の魔道具も試作品ができてるんだ」

 と、どこからともなくアオイは大き目な長方形の箱を取り出した。
 そして、その上に一回り小さな紙をセットした。

「それで、この魔道具を起動するとね」

 といいつつ魔道具を起動し、

「こんな感じで紙に転写されるんだ」

 と、アオイが見せて来た紙には、変顔をしたユズが転写されていた。

「ぶほっ!」

 くそっ、油断した!
 さっきのハヤテはブラフで、こっちが本命だったか。
 
 そんな俺の様子を気にすることなく、アオイは説明を続けた。

「実は紙にも工夫がしてあって、光魔法を吸収するようになっているんだ。……おや? こっちもハヤテのだったはずだけど、いつの間にか変わっていたんだね」
 
 これはアオイも知らなかったみたいだ。
 ……つまり、アオイにもばれないように入れ替えたのか。
 そういうところは流石魔皇って感じだけど、もっと別の事に実力を発揮してほしい。

 そのいたずらを仕掛けたハヤテの方を見ると、

「あの子がユズって子だよ! 前に話した通り、人間界では一番の仲良しなんだよ! この前レイとヒカリ以外に合わせることができたから、いつかヒカリにも合わせたいな~」

「あら、あの子がそうなのね。そうね。機会を作って、一度は会いに行けるようにしたいわ」

 と話を上手く逸らしていて、ヒカリ対策も万全だった。



 その後も、魔道具について技術的な話があったけどほとんど理解できなかった。
 分かったこと言えば、頭の中でイメージした映像を壁に投影する、というヒカリが作り出した魔法をヒントにした、みたいな部分だけだ。
 この魔法があったから、俺がプロジェクターについて教えなくても似たような魔道具が作れたってことか。

「さて、ハクト君。この魔道具を見て何か意見はないかな? どちらも、ハクト君のいた世界には似たものがあるようだし、それを元に考えてくれると嬉しいな。ああそれよりも、プリンタとプロジェクターといったかな? それがどう使われているかを知りたいね。それと、プロジェクターとテレビという物は同じような目的で使われていそうだけど、その話も聞きたいな。あ、他にも……」

 やばい、アオイが久々に暴走してる!
 と思っていたら、ホムラがアオイに近づいて、そしてげんこつを……、

「アオイ。それよりも、今日皆を集めた目的が先だろ? 魔道具については、それが終わってから思う存分すりゃあいい」

 ……落とさずに、言葉で説得を始めた。
 それを聞いたアオイは暴走を続け……

「……ああ、そうだったよ。流石に、今日はそっちを優先しないとだね」
 
 ……ずに落ち着いた。
 なん……だと……。

「それじゃ、ハクト君。魔道具については、後ほど色々と聞かせてもらいたいな」

「え? あ、ああ」

 予想外の事態に驚いていて、反射的に頷いてしまったけど、これ後で大変なやつだ。
 ……というか、ホムラも話を後で思う存分すれば、とか言っていたな。

 ああ、前に魔道具について散々話を聞かされたから、俺も同じようにってことか?
 まあ、ホムラが言わずとも同じことになっていそうだけどさ。

 というか、アオイがこうなるくらい重要な話とは一体……。



 その後、魔道具の片づけをしている時に、ヒカリに話を聞くことにした。
 俺が話を聞いた感じでは、テレビ電話のような魔法を開発したみたいだった。
 とはいっても、自分の姿を遠くの場所で映し出すという、一方的なものみたいだけど。

 なんでも、今までは通信用の魔道具を使って、問題を起こした魔族と話すということをやっていたらしいのだが、相手が本当に魔皇なのか? と疑われることが多かったらしい。
 それで、最終的にはその場所に行くことになる、といったパターンになるらしい。

 それが、ヒカリの姿を映しながら会話をすることで、相手から疑われることがほとんどなくなったようだ。

 ヒカリの顔はみんな知ってるので、ほとんどの魔族はその指示に従うらしい。
 ……魔界中で知られているって、やっぱり色々とすごいな。

 ……前に考えた、魔皇が裁判官を任命するって案も、本当に任命されたかを証明できないと同じようなことになりそうだな。

 まあ、それは後で考えようか。
 まずは、今日の話が先だもんな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』

アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた 【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。 カクヨム版の 分割投稿となりますので 一話が長かったり短かったりしています。

処理中です...