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第五章 切望を 叶えた者と 挑む者
第78話 魔界の過去と自称魔王
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「五百年前ってことはつまり、魔界と人間界が魔力の道ってやつで繋がった頃のこと、だよな?」
「ああ、そうだな。……そしてそれは、一部の魔族が人間界に乗り込んだってことでもあるな。詳しくはソフィアに聞いてくれって言って、オレが説明を避けたやつだな」
……説明を避けた?
あの時のは単にソフィアの方が詳しいから、ってことじゃないのか。
「……実はな、その人間界に乗り込んだ自称魔王ってやつは、オレとよく模擬戦をしていたやつらなんだ。だから、そん時はオレの口から上手く説明できる気がしなくてな」
え?
ホムラとよく模擬戦をしていたってことは、少なくともホムラとは友好的な関係だったってことだよな?
……そんな人物が人間界に乗り込んで支配しようとするなんて、ちょっと信じられないな。
「……前にホムラは、弱者を虐げるのは嫌い、って言っていたよな。でも、その魔族が人間界に乗り込むっていうのは完全にそれだと思う。ホムラとはよく模擬戦をしたって言っていたけど、そんなことをしそうな性格だったのか?」
「あー、いや、そのな。……ハクトは、あの後でソフィアに話を聞いた、ってことでいいんだよな」
「そうだな。確か、異世界から来た人がその魔族を撃退したって聞いたよ。それが勇者と魔王の話として本になっているっていうのも。……あ! そういえば、その話が書かれた本を読もうかと思ってたけど、すっかり忘れてた!」
「いや、読んでねぇのかい! 同じ異世界から来た人物ってことで、色々と気にならなかったのか? その異世界人がどんな人物で何をしたか、とか、魔族に何をしたかとか。……それと、ハクトが異世界人だと知った魔族に襲われないか、とかは考えなかったのか?」
……確かに、今考えるとその可能性もあったのか。
でも、
「俺が最初に出会った魔族がホムラで、次がハヤテだったな。だから、俺の中での魔族って言えばその二人なんだ。……そして、その二人からは敵意や悪意は感じなかったし、その後会った魔族、というか魔皇からも、そういったことは全く感じなかったよ。あ、ホムラからは模擬戦しないか、って言われてたり、ハヤテがいたずらを仕掛けて来たし、強いて言えばそれがそうかな? なんてな」
なんて、ちょっと茶化しつつ言った。
「だから、今まで魔族から襲われるかも、なんて考えたことはなかったな。そもそも、魔族とか人間族とか関係なくそういった人はいるだろうし。それに、街を歩いている時にも、たまに近寄りがたい雰囲気の人とかは見かけるしな」
うん。
魔族だから怖い人、人間族だからいい人、なんてのはないだろう。
「それに、魔族とか人間族とか関係なく、仲良くできるなら仲良くしたいだろ?」
「……そうだよな、ハクト。お前はそういうやつだったな。……それであいつ、自称魔王の話だったな。いや、この際、それ以前の魔族がどうだったかを説明するのがいいか。……前に、魔族ってのは強い奴が偉い、みたいな話をしたよな? だから昔は、弱い奴が強い奴に従うのが当たり前だったんだ。でもな、実は弱い奴にとってもそれでよかったんだ」
どういうことだろう?
普通に考えると、誰かに従うのが当たり前ってのはあまりよくないと思うんだけど……。
「というのもな。強い奴の元にいれば、他の強いやつから守ってもらえるし、強い奴が狩った魔物を分け与えてもらえたんだ。その代わり、そいつらは自分の得意な事とかで貢献する、って感じだな。例えば、魔法の制御が得意であれば部屋の温度を一定に保つ、とかだな」
そういえば前に、アオイから聞いたな。
誰かに魔法を使わせることで生活を楽にしていた、だから魔道具を作るみたいな発想がなかった、って。
それと、魔界の魔物って強いイメージがあるし、確かにそれを狩れない魔族からしたらその方がいいだろうな。
「とはいえ、もちろんそうでない魔族もいた。満足に食料を分け与えなかったり、体調が悪い奴にも無理やり魔法を使わせたり、とか、まあ色々とな。そういった奴に対して、オレは勝負を挑んで蹴散らしてきたって感じだ」
「それと、見どころのある魔族を鍛えたり、だな」
出会ってすぐにその話を聞いて、ホムラはいい奴なんだろうな、って認識を持ったんだ。
そして何度か会ってもその印象は変わらなかったし。
「まあ、そうだな。……それで、そういうことをしていたら、いつの間にかオレの周りにはたくさんの魔族が集まるようになってな。そして気づけば魔王の一人に数えられてたってわけだ。他の奴も理由はそれぞれあるが、魔族が集まった結果魔王と呼ばれるようになった、って感じだな」
「……私は、ちょっと違うかも。……本がゆっくり読みたくて、挑んでくる魔族を適当にあしらってた。……そうしてたらいつの間にか、魔王と呼ばれてた」
なるほどな。
……ヒカリは何となくわかるけど、他の皆がどうして魔皇、当時の魔王になったか気になってきた。
いや、今は自称魔王の話だったな。
「それで、そんな魔王に憧れを持つ魔族もやっぱりいて、特に比較的若い奴にそういった傾向があったんだ。その自称魔王も、その一人だったってわけだな。……そして、そんな状況で違う世界に行けることに気づいたそいつが、その世界での魔王になろうと乗り込んだ、ってわけだ。んで、そのバカとその取り巻きが、強い奴を見つけては勝負を挑み、勝ったから従え! って言って回ってたって感じだな」
……つまり、魔界のルールを人間界に適用して、その場所のトップになろうとしたってことか。
というか、ついにバカとか言い出した。
「んで、異世界から来た人間、後に勇者って呼ばれる奴にボコボコにされてな。そんで、バカから話を聞いた勇者が逆に魔界に乗り込んできたんだ。そん時は丁度、オレたち六人で集まってた時でな。もちろんオレも驚いたが、それ以上にヒカリのやつがかなり狼狽えてたな。ずっと、どうしましょう、どうしましょうって言いながら歩き回ってたぜ」
それを聞いてヒカリの方を見ると、恥ずかしそうにしながらそれは忘れて! みたいなハンドジェスチャーをしていた。
あ、ちなみに俺、というか俺たちがホムラの話を聞いている間もヒカリはどこかの魔族と話していた。
そして説得()している時はとっても怖い雰囲気だったので、無理やり認識から排除してたりした。
「まあ幸い、勇者は話のわかるやつでな。魔界と人間界の間にある常識の違いを認識してくれて、いい感じに間を取り持ってくれたんだ」
……もしかしたら、その勇者って呼ばれた人もファンタジーの本を読んでいたのかもしれないな。
こっちの世界では五百年前だけど、元の世界はそこまで時間が経ってないのかも?
「ただまあ、流石に自称魔王とその取り巻きはお咎めなしとはいかなくてな。結果として、人間界では悪い魔族たちが人間界を侵略し、最後は魔界のルールで裁かれた、ってことになってるぜ。もちろん、国のトップには代々真実が伝わってると思うがな」
「ちなみに、その自称魔王たちは反省して、今もあちこちで働きまわってるよ~。その中の何人かは、ヒカリの代理をしてくれてるんだ~」
ヒカリの代理をしてた魔族って、そういう経緯があったのか。
……昔、ヒカリに説得()された魔族とかではなかったんだな。
というか、国のトップしか知らないやばい秘密を知ってしまったんだが、大丈夫なんだろうか。
……いや、今更すぎるか。
「ああ、そうだな。……そしてそれは、一部の魔族が人間界に乗り込んだってことでもあるな。詳しくはソフィアに聞いてくれって言って、オレが説明を避けたやつだな」
……説明を避けた?
あの時のは単にソフィアの方が詳しいから、ってことじゃないのか。
「……実はな、その人間界に乗り込んだ自称魔王ってやつは、オレとよく模擬戦をしていたやつらなんだ。だから、そん時はオレの口から上手く説明できる気がしなくてな」
え?
ホムラとよく模擬戦をしていたってことは、少なくともホムラとは友好的な関係だったってことだよな?
……そんな人物が人間界に乗り込んで支配しようとするなんて、ちょっと信じられないな。
「……前にホムラは、弱者を虐げるのは嫌い、って言っていたよな。でも、その魔族が人間界に乗り込むっていうのは完全にそれだと思う。ホムラとはよく模擬戦をしたって言っていたけど、そんなことをしそうな性格だったのか?」
「あー、いや、そのな。……ハクトは、あの後でソフィアに話を聞いた、ってことでいいんだよな」
「そうだな。確か、異世界から来た人がその魔族を撃退したって聞いたよ。それが勇者と魔王の話として本になっているっていうのも。……あ! そういえば、その話が書かれた本を読もうかと思ってたけど、すっかり忘れてた!」
「いや、読んでねぇのかい! 同じ異世界から来た人物ってことで、色々と気にならなかったのか? その異世界人がどんな人物で何をしたか、とか、魔族に何をしたかとか。……それと、ハクトが異世界人だと知った魔族に襲われないか、とかは考えなかったのか?」
……確かに、今考えるとその可能性もあったのか。
でも、
「俺が最初に出会った魔族がホムラで、次がハヤテだったな。だから、俺の中での魔族って言えばその二人なんだ。……そして、その二人からは敵意や悪意は感じなかったし、その後会った魔族、というか魔皇からも、そういったことは全く感じなかったよ。あ、ホムラからは模擬戦しないか、って言われてたり、ハヤテがいたずらを仕掛けて来たし、強いて言えばそれがそうかな? なんてな」
なんて、ちょっと茶化しつつ言った。
「だから、今まで魔族から襲われるかも、なんて考えたことはなかったな。そもそも、魔族とか人間族とか関係なくそういった人はいるだろうし。それに、街を歩いている時にも、たまに近寄りがたい雰囲気の人とかは見かけるしな」
うん。
魔族だから怖い人、人間族だからいい人、なんてのはないだろう。
「それに、魔族とか人間族とか関係なく、仲良くできるなら仲良くしたいだろ?」
「……そうだよな、ハクト。お前はそういうやつだったな。……それであいつ、自称魔王の話だったな。いや、この際、それ以前の魔族がどうだったかを説明するのがいいか。……前に、魔族ってのは強い奴が偉い、みたいな話をしたよな? だから昔は、弱い奴が強い奴に従うのが当たり前だったんだ。でもな、実は弱い奴にとってもそれでよかったんだ」
どういうことだろう?
普通に考えると、誰かに従うのが当たり前ってのはあまりよくないと思うんだけど……。
「というのもな。強い奴の元にいれば、他の強いやつから守ってもらえるし、強い奴が狩った魔物を分け与えてもらえたんだ。その代わり、そいつらは自分の得意な事とかで貢献する、って感じだな。例えば、魔法の制御が得意であれば部屋の温度を一定に保つ、とかだな」
そういえば前に、アオイから聞いたな。
誰かに魔法を使わせることで生活を楽にしていた、だから魔道具を作るみたいな発想がなかった、って。
それと、魔界の魔物って強いイメージがあるし、確かにそれを狩れない魔族からしたらその方がいいだろうな。
「とはいえ、もちろんそうでない魔族もいた。満足に食料を分け与えなかったり、体調が悪い奴にも無理やり魔法を使わせたり、とか、まあ色々とな。そういった奴に対して、オレは勝負を挑んで蹴散らしてきたって感じだ」
「それと、見どころのある魔族を鍛えたり、だな」
出会ってすぐにその話を聞いて、ホムラはいい奴なんだろうな、って認識を持ったんだ。
そして何度か会ってもその印象は変わらなかったし。
「まあ、そうだな。……それで、そういうことをしていたら、いつの間にかオレの周りにはたくさんの魔族が集まるようになってな。そして気づけば魔王の一人に数えられてたってわけだ。他の奴も理由はそれぞれあるが、魔族が集まった結果魔王と呼ばれるようになった、って感じだな」
「……私は、ちょっと違うかも。……本がゆっくり読みたくて、挑んでくる魔族を適当にあしらってた。……そうしてたらいつの間にか、魔王と呼ばれてた」
なるほどな。
……ヒカリは何となくわかるけど、他の皆がどうして魔皇、当時の魔王になったか気になってきた。
いや、今は自称魔王の話だったな。
「それで、そんな魔王に憧れを持つ魔族もやっぱりいて、特に比較的若い奴にそういった傾向があったんだ。その自称魔王も、その一人だったってわけだな。……そして、そんな状況で違う世界に行けることに気づいたそいつが、その世界での魔王になろうと乗り込んだ、ってわけだ。んで、そのバカとその取り巻きが、強い奴を見つけては勝負を挑み、勝ったから従え! って言って回ってたって感じだな」
……つまり、魔界のルールを人間界に適用して、その場所のトップになろうとしたってことか。
というか、ついにバカとか言い出した。
「んで、異世界から来た人間、後に勇者って呼ばれる奴にボコボコにされてな。そんで、バカから話を聞いた勇者が逆に魔界に乗り込んできたんだ。そん時は丁度、オレたち六人で集まってた時でな。もちろんオレも驚いたが、それ以上にヒカリのやつがかなり狼狽えてたな。ずっと、どうしましょう、どうしましょうって言いながら歩き回ってたぜ」
それを聞いてヒカリの方を見ると、恥ずかしそうにしながらそれは忘れて! みたいなハンドジェスチャーをしていた。
あ、ちなみに俺、というか俺たちがホムラの話を聞いている間もヒカリはどこかの魔族と話していた。
そして説得()している時はとっても怖い雰囲気だったので、無理やり認識から排除してたりした。
「まあ幸い、勇者は話のわかるやつでな。魔界と人間界の間にある常識の違いを認識してくれて、いい感じに間を取り持ってくれたんだ」
……もしかしたら、その勇者って呼ばれた人もファンタジーの本を読んでいたのかもしれないな。
こっちの世界では五百年前だけど、元の世界はそこまで時間が経ってないのかも?
「ただまあ、流石に自称魔王とその取り巻きはお咎めなしとはいかなくてな。結果として、人間界では悪い魔族たちが人間界を侵略し、最後は魔界のルールで裁かれた、ってことになってるぜ。もちろん、国のトップには代々真実が伝わってると思うがな」
「ちなみに、その自称魔王たちは反省して、今もあちこちで働きまわってるよ~。その中の何人かは、ヒカリの代理をしてくれてるんだ~」
ヒカリの代理をしてた魔族って、そういう経緯があったのか。
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……いや、今更すぎるか。
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