異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第六章 初めての 異世界旅行は エルフ村

第101話 旅行の終わりと……

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 メレスと別れた後、ディニエルの案内であちこちを巡った。

 例えば、世界樹の木を利用して建てられた建物だ。

 世界樹は新芽や葉っぱなどは採取してもすぐに元に戻るが、流石に太い幹などはすぐには再生しないらしい。
 そのため、世界樹の木材はほとんど手に入ることは無く、一年に一度くらいの間隔で、丁度いい太さの枝を切断するという決まり。

 その建物の中は、エルフについての資料館のようになっていた。
 世界樹の木で建てられているからか、中にいると、とても落ち着いた気持ちになったな。
 
 そういえば、この村に来た時に遠くに見えた巨大な樹が世界樹だと思ったが、その周りにある樹も世界樹らしい。
 そして、ここにあった説明を読んだ感じでは、その巨大な樹は、御神木のようなものらしい。

 他には、途中途中で食べ歩きなんかもした。
 飲食を提供するお店を見つけるたび、ディニエルが淡々とそのお店の感想を言ってくるから、カレーでお腹いっぱいになったにも関わらず、段々と空腹を感じ、何度か買い食いしてしまった。
 ベイラなんかも

「せっかく観光に来たんだしな! リューナも遠慮せずにどうだ?」

 と、色々な物を食べたり、リューナに勧めたりしていた。
 とはいえ、流石に夕食が食べられないのももったいないので、夕方辺りでは食べるのをやめたけどな。

 そうして観光しているうちに、夕暮れが近づいてきた。
 するとディニエルが、

「いい景色。こっち」

 と言って、木の上に設置されたウッドデッキまで案内してくれた。
 俺たち以外には誰もおらず、貸し切りみたいな感じだな。
 
 そこは、エルフの村が見下ろせる場所にあり、そこから夕暮れに沈むエルフの村や世界樹を一望することができた。
 そして周囲にはいくつものツリーハウスがあり、なんというか、すごくファンタジーっぽさを感じられた。

 ……うん。
 これを見れただけでも、この村に来た甲斐があったな。



 そんな感じで景色を堪能していたら、辺りが段々と暗くなってきた。

「暗くなってきたし、そろそろ宿にむかった方がいい時間だよな。……宿はどこにあるんだろ? 今回は全部リューナにおまかせ、って感じだったから、リューナに案内してもらえばいいのかな?」

「そちらに関しましては、手配する、とおっしゃっていただいたので、ディニエルさんにおまかせしています」

 確かに、現地を一番知っている人に任せるのが正解だしな。

「じゃあ、ディニエル。今回も案内してもらってもいいか?」

 それにしても、今日はずっとディニエルに案内してもらっているな。
 ……俺はほとんど情報がない状態でここに来たから、案内して、なんて言われても困るけどさ。

「ここ」

「……へ?」

「ここ」

 ここって、俺たちがいるのは木の上にあるウッドデッキなんだけど……。
 ……まさか、ここで寝袋を敷いて寝る、とかじゃないよな?

 残りの二人も流石に困惑しているようで、リューナ、ベイラと顔を見合わせていると、

「ディニエル様御一行ですね。本日の宿泊についてご説明いたします」

 と、宿の従業員と思しきエルフの人が現れた。
 
 従業員さんの話によると、このウッドデッキから見えるツリーハウスのうち4つが、それぞれ俺たちの部屋になるらしい。
 
 おお、今日はあれに泊まれるのか。

 そして食事は、このウッドデッキに用意してくれるそうだ。
 こんなにいい景色が見れる場所なのに、どうして俺たちしかいないんだろう、なんて思っていたけど、本当に貸し切りだったんだな。

 ということで、それぞれが一度部屋に戻り、荷物などを整理して、またウッドデッキに戻ってくることにした。

 部屋は木の香りに包まれており、熟睡できそうな感じだった。
 部屋から見た景色は、少し暗くなっていはいたけど、ウッドデッキと同じように遠くまで見通せた。
 
 月明かりに照らされたその光景は、なんとも神秘的で幻想的な感じがして、思わず見入ってしまった。

 朝目覚めたら、今度は朝日に包まれた光景が見られるのか。
 ……この宿、すごくいいな。

 次にここに来るなら、また泊りたいくらいだな。

 それにしても、手配してくれたディにエルには、本当に感謝だな。
 というか、今日一日はディニエルにずっと案内してもらったし、後で何かお礼をしないとかもな。



 景色を楽しむのもほどほどにし、先ほどのウッドデッキに戻ると全員が揃っていた。
 そして、宿の従業員さんたちが食事の準備をしてくれていた。

 机や椅子が配置され、肉や野菜が並んでいて、網が置かれた大きめなコンロの魔道具が配置されていた。

 ……これ、もしかしなくてもBBQだよな?

 夕食についてディニエルに聞いてみると、やっぱりそうみたいだ。
 魔道具なら直火を使わなくて済むため、こうしたエルフの村では定番になってるようだ。

 あ、ちなみに、ツリーハウス内にも空調やトイレ、シャワー用の魔道具が配置されていた。
 考えてみると、昔から続いているエルフの村の雰囲気を残しつつ、魔道具で快適に過ごせる用にしているんだな。

 そういうのも、なんかいいかもな。 

 BBQは、従業員さんに焼いてもらうこともできたが、自分たちでやることにした。
 その方が楽しいと思うしな。

 と思ったけど、リューナの焼き加減が絶妙で、ほどんどリューナに焼いてもらうことになってしまった。
 
……いや、ほら。
 食材もどうせなら、美味しく食べてもらったほうがいいだろうし、ね?

 この魔道具で焼いた食材は、肉も野菜も絶品だった。
 直火で焼かないため、あの独特の香りや焦げ目はなかったが、それとは別種のおいしさがあった。

 話を聞いた感じでは、周囲の魔力が遠赤外線みたいに影響して、それが旨味に繋がるみたいだ。
 魔力の 力って すげー。

 と、そんな感じで食事を終え、食事の感想や今日行った場所の感想を言い合っていると、段々と夜もけて来たため、それぞれの部屋に戻ることにした。

 さて、明日も楽しみだな。
 おやすみなさい。



 そして、次の日。

 予想通り、いやそれ以上の光景を朝から見つつ朝食をいただいた。
 内容としては、海エルフが昔から食べていた魚料理だった。

 うん、これもとってもおいしかった。

 今日は、世界樹の新芽狩りの予定だ。

 とはいえ、今日予約してくれた内容はそれだけではなく、まずは森を散策して、その後で新芽狩り、お昼はそれを天ぷらにしたものをいただく、というコースみたいだ。

 昨日上から見ていた森の中を歩き、世界樹の枝が植えられたところで新芽を採取した。
 森の中だからか、より空気、というか魔力が澄んでいるように感じられたな。

 その後は、自分たちで採取した新芽に加え、様々な野菜の天ぷらの定食をいただいた。

 天ぷら用には塩が二種類あり、山エルフが採取している岩塩と、森エルフが生産している藻塩があった。
 味の違いが感じられて、どっちもおいしかった。



 食事後はまたディニエルの案内で様々な場所に向った。

 そして、また別の宿に泊まることになっていた。
 こちらは、畳が敷かれた和室に温泉がついており、日本の旅館のような雰囲気を味わえた。

 うん。
 一泊かと思っていたら、二泊だったよ。

 話によると、この世界での観光は、初日と最終日は移動で時間を使うことが多いようだ。
 なので、観光と言えば二泊三日以上が主流で、今回もそのパターンだったみたいだ。

 次の日は最終日ということで、観光をほどほどに済ませてお土産を買うことにした。
 世界樹の茶葉と保管用の魔道具も、もちろん買ったぞ。

 ……後で、神様からもらった魔道具に移し替えておこう。

 そして名残惜しくも転移門で街に戻り、解散となった。

 今回の旅行、すっごく楽しかった。 



 まだ明るいし、教会にいってお土産渡そうと教会にむかった。

 いつものようにソフィアのいる部屋にむかうと、ソフィアが何かの紙を広げていた。
 
「おかえりなさい、ハクトさん。旅行、楽しめましたか?」

「ただいま。ああ、色々と始めてみるものも多かったし、食事もおいしかったし、すっごく楽しめたよ」

 あ、食事の部分でソフィアが反応したな。
 ……今度行くときは、ソフィアと一緒に行こうかな。

「それで、今見ているのはなんだ? 漫画とかではないと思うけど」

 普段なら、漫画を読んでいることが多いから、ちょっと気になった。

「これは、ハクトさんの家の設計図です」

「ああ、なるほど。俺の家の、……って、ええ!?」

 え、ちょ、どういうこと?

「ハクトさんにおまかせされましたので、漫画を読む業務を後回しにし、こちらを進めていました」

 どことなく得意げな表情で、そうソフィアが言った。
 ……確かにソフィアにおまかせしたけど、それは土地関係の話だけのつもりだったんだよなぁ。

 そういえば神様が急に連絡してきたけど、ソフィアが勝手に話を進めてるのを知ったからじゃないか?
 うん、絶対に、面白そうだからって理由で、俺に言わなかったんだな。

 ……この世界でも暮らしていくことに決めたけど、これからもこういったことがいっぱいあるんだろうな。

 まあでも、今回の旅行が楽しかったこともあってか、それも楽しんでいけるといいな、なんて思えた。
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