異世界で 友達たくさん できました  ~気づいた時には 人脈チート~

やとり

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第六章 初めての 異世界旅行は エルフ村

第100話 実話(じつは)ドラゴン

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 カレーを食べ終わった後、店員さんがサービスで飲み物を提供してくれた。
 食休みも兼ねて、しばらくここにいても大丈夫、とも言ってくれた。

 ちなみに飲み物はラッシーだった。
 ディニエル以外はプレーンを、ディニエルは、世界樹の抹茶を使った抹茶ラッシーをお願いしていた。
 ……そういうのもあるのか。

 というか、乳製品は使って大丈夫なんだ、なんて思ったけど、よく考えると魔法で殺菌とかもできそうだし、直火の使えない環境ではむしろ有用な食材なのかもな。



「それじゃ、お言葉に甘えて少しのんびりしようかねぇ。せっかくの機会だし、皆との縁を深めておくとしようか。この店に来る道中は、名前くらいしか聞けなかったし。そうだねぇ。それじゃ、今やっている仕事なんかを始めた切っ掛け、なんてどうだい?」

 ……俺はどうしよう。

「ああ、そこの彼は異世界から来たんだったわね。それなら、こっちに来てからの話を聞かせて欲しいわねぇ」

 それなら、色々と話せそうだ。
 ……信じてもらえなさそうな話は、ちょっとぼかそうかな。

「それじゃ、まずは言い出しっぺの私からいこうかね。私はさっき言った通り、錬金術師をやっているわ。それと、色々な薬とかスパイスの調合もしてるわね。実は、このお店のスパイスも私が調合しているのよ!」

「いい仕事してる。おいしかった」

 なるほど。
 店員さんと親し気な感じだったけど、そういった理由もあったんだな。

「昔から、何かを混ぜて新しいものを生み出す、っていうことに興味があって、そこから錬金術の方向に行ったの。その過程で調合の知識も得る機会があった、って感じね。あ、ちなみに今日ここに来た理由なんだけど……」

 メレスの話によると、今日は世界樹の葉を求めてここに来たようだ。
 そのついでに、ここで食事をする予定だったみたいで、俺たちと出会ったタイミングは色々と丁度良かったみたいだ。
 
「んじゃ、次はあたしでいいか? あたしは魔道具を色々作っているんだが……」

 ベイラは、子供のころから魔道具の構造に興味があり、時には魔道具を解体していたみたいだ。
 ……そして元に戻せなくなって、親に怒られたりな。

 それで、本格的に魔道具職人を目指した理由としては、父親、ヴェイグルの影響が大きかったようだ。
 何かを作り出す、ということに魅力を感じたみたいだ。

「ただ、あたしの父親は鍛冶職人でな。あたしは、武器自体にはそこまで魅力を感じなかったんだ。それで、昔から好きだった魔道具を作る職人を目指した、ってわけだ」

「なるほどねぇ。私は、知り合いのおじちゃんが薬師でね。その作業を小さいころに見ていたのが、最初の切っ掛けだと思うわねぇ。それと、ベイラの親父さんが鍛冶職人なら、私が材料を提供していたりしてね。……実はたまに、この国で有名な鍛冶職人にも材料を提供しているのさ」

「……もしかしてその職人の名前って、ヴェイグルって名前じゃないか? もしそうなら、あたしの父親じゃんか」

「あら、本当に? ……世間て、思っているより狭いのねぇ。そういえば彼から、魔道具職人の娘がいる、なんて話を聞いたことがあったわねぇ。これは秘密だ、なんて念押しをされたけど」

「……あの親父、やっぱりあちこちで話してるじゃんか。どおりで、親父の知り合いっぽい客が突然来るわけだ。まあ、そういった客はきちんとしてるから、親父も信頼できる人にしか話してないんだろうけどな」

 ……確かに、ヴェイグルならやりかねないな。

「次は私。昔から父親の人形を見てた。似合う洋服を想像した。最初は……」

 ディニエルも、ある意味父親、イズレの影響を受けた、って感じか。
 それと、母親の方が編み物とかを趣味でやっていたみたいで、子供のころから一緒に何かを作っていたみたいだ。

 三人とも、子供の頃に何かに興味を持って、それが今の仕事に繋がっているんだな。
 そういえばユズも、祖父がおもちゃ屋をやっていて本人も作っている、ってパターンだな。

 この世界では、そういった例が結構多いのかな?
 なんて考えていたら、リューナが話はじめた。

「では、最後はハクト様に締めていただくため、私がお話しますね。まず、今の私は”ドラゴンメイド”という……」

「ちょ、ちょっと待った!」

 ……忘れてた。
 というか、リューナが俺に雇われる切っ掛けを話すと、自然と魔皇の話になっちゃうし、なんとか誤魔化さないとだった。

「あー、えっとな。先に説明しておくと、”ドラゴンメイド”っていうのは俺の世界の言葉なんだ。”ドラゴン”っていうのがドラゴン、”メイド”っていうのがメイドって意味だな。それで、ええと……」

「彼女は魔族。元はドラゴンの魔物。かっこいい」

 あっ、ディニエルがストレートに言ってしまった。
 ……まあ、最終的には言うつもりだったけど、もうちょっとこう、段階を踏んでいきたかった。

「元ドラゴン? ……魔族って言うのにも少し驚いたけど、まあどこかにはいるだろうからねぇ。けど、魔物から魔族、ってのは中々信じがたいね」

 あれ?
 魔物から魔族になった、っていうのには懐疑的かいぎてきみたいだけど、魔族ってことにはあんまり反応していないみたいだな。

「本当。リューナ。変身お願い。一部だけ」

「わかりました。では、腕を変化させましょうか」

 と、以前やったみたいに鱗と鋭い爪が出現した。

「へぇー。なるほど、本当みたいね。パレードで見た魔皇を除けば、魔族には初めて会ったけど、魔族はそういう事も出来るのねぇ」

「ああ、いえ。私のように魔物から魔族になった者など、一部の魔族だけですね」

「そうなのね。……今日は、異世界から来た人に魔族、二人の珍しい人に会えてラッキーだったわ」

 ……うーん。
 やっぱり、魔族に対して全然抵抗とかはなさそうだ。

「ちょっと聞きたいんだけど、いいか? あー、えっと、異世界から来たからあんまりわからないんだけど、魔族がいてびっくりしたり、警戒したり、みたいなのはないのか? 昔、魔族と人間族でトラブルみたいなのがあったみたいだけど」

 無知を装いつつ、聞きたいことを聞いてみることにした。

「そうねぇ。昔あったみたいだけど、私は当事者じゃないからねぇ。それに、リューナは私たちと全然変わらないし、逆に人間族にも変な人はいるからね。そもそも、魔族とはほとんど出会う機会もないし、警戒も何もないかしらね。遠くにいるよく知らない人たち、って印象ね」

 うーん。
 つまり、そもそも良く知らないから、警戒心を抱くとかそうでないとか以前の段階って感じか。
 
 ……魔族に会ったことがない人では、メレス以外に話を聞いたことがないけど、他の人も同じような感じなんだろうか。
 考えてみれば魔族側の話だけしか詳しく聞いていないし、それがこの世界全体の考えだと思っていたけど、そうじゃないのかもしれない。

 ……後で、調べてみた方がいいかもしれないな。

「ああでも、パレードで見た魔皇の人たちは別かもしれないわね。彼女たちは、魔界の王様みたいなものなんでしょう? そんな人たちと街中でばったり会っちゃったら、とても驚くだろうねぇ」

 ……勝手に勘違いしていたけど、前にユズが驚いて気絶したのは、ハヤテが魔族だからってよりも、魔皇だったから、ってことだろうな。

 その後、俺とリューナがどう出合ったかや、俺に雇われることになった経緯などを説明したが、魔皇の部分は偉い魔族、ってことで誤魔化しておいた。
 ……誤魔化しても平気なら、態々言う必要はないと思うからな。



 その後は、異世界についての話や、魔族、魔界の話で盛り上がった。

 途中、混ぜるといえば、色んな味のハーブソルトがあったな、なんてポロっと喋ったらメレスが想像以上に食いついてきた。
 何種類か食べたことはあるけど。流石に詳しい配合は知らない、と答えたら感覚共有の魔道具いつものやつで教えて欲しい、なんて言われてしまった。
 今は持っていないから、また今度会いましょ、という約束とともに。

 ……その時は、もう少し詳しく錬金術を教えてもらおうかな?
 
 そして、食事休憩も終わり、この後に予定のあるメレスとはここで別れた。
 今日は、素材のためにここに来たみたいだからな。
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