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第六章 初めての 異世界旅行は エルフ村
第100話 実話(じつは)ドラゴン
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カレーを食べ終わった後、店員さんがサービスで飲み物を提供してくれた。
食休みも兼ねて、しばらくここにいても大丈夫、とも言ってくれた。
ちなみに飲み物はラッシーだった。
ディニエル以外はプレーンを、ディニエルは、世界樹の抹茶を使った抹茶ラッシーをお願いしていた。
……そういうのもあるのか。
というか、乳製品は使って大丈夫なんだ、なんて思ったけど、よく考えると魔法で殺菌とかもできそうだし、直火の使えない環境ではむしろ有用な食材なのかもな。
◇
「それじゃ、お言葉に甘えて少しのんびりしようかねぇ。せっかくの機会だし、皆との縁を深めておくとしようか。この店に来る道中は、名前くらいしか聞けなかったし。そうだねぇ。それじゃ、今やっている仕事なんかを始めた切っ掛け、なんてどうだい?」
……俺はどうしよう。
「ああ、そこの彼は異世界から来たんだったわね。それなら、こっちに来てからの話を聞かせて欲しいわねぇ」
それなら、色々と話せそうだ。
……信じてもらえなさそうな話は、ちょっとぼかそうかな。
「それじゃ、まずは言い出しっぺの私からいこうかね。私はさっき言った通り、錬金術師をやっているわ。それと、色々な薬とかスパイスの調合もしてるわね。実は、このお店のスパイスも私が調合しているのよ!」
「いい仕事してる。おいしかった」
なるほど。
店員さんと親し気な感じだったけど、そういった理由もあったんだな。
「昔から、何かを混ぜて新しいものを生み出す、っていうことに興味があって、そこから錬金術の方向に行ったの。その過程で調合の知識も得る機会があった、って感じね。あ、ちなみに今日ここに来た理由なんだけど……」
メレスの話によると、今日は世界樹の葉を求めてここに来たようだ。
そのついでに、ここで食事をする予定だったみたいで、俺たちと出会ったタイミングは色々と丁度良かったみたいだ。
「んじゃ、次はあたしでいいか? あたしは魔道具を色々作っているんだが……」
ベイラは、子供のころから魔道具の構造に興味があり、時には魔道具を解体していたみたいだ。
……そして元に戻せなくなって、親に怒られたりな。
それで、本格的に魔道具職人を目指した理由としては、父親、ヴェイグルの影響が大きかったようだ。
何かを作り出す、ということに魅力を感じたみたいだ。
「ただ、あたしの父親は鍛冶職人でな。あたしは、武器自体にはそこまで魅力を感じなかったんだ。それで、昔から好きだった魔道具を作る職人を目指した、ってわけだ」
「なるほどねぇ。私は、知り合いのおじちゃんが薬師でね。その作業を小さいころに見ていたのが、最初の切っ掛けだと思うわねぇ。それと、ベイラの親父さんが鍛冶職人なら、私が材料を提供していたりしてね。……実はたまに、この国で有名な鍛冶職人にも材料を提供しているのさ」
「……もしかしてその職人の名前って、ヴェイグルって名前じゃないか? もしそうなら、あたしの父親じゃんか」
「あら、本当に? ……世間て、思っているより狭いのねぇ。そういえば彼から、魔道具職人の娘がいる、なんて話を聞いたことがあったわねぇ。これは秘密だ、なんて念押しをされたけど」
「……あの親父、やっぱりあちこちで話してるじゃんか。どおりで、親父の知り合いっぽい客が突然来るわけだ。まあ、そういった客はきちんとしてるから、親父も信頼できる人にしか話してないんだろうけどな」
……確かに、ヴェイグルならやりかねないな。
「次は私。昔から父親の人形を見てた。似合う洋服を想像した。最初は……」
ディニエルも、ある意味父親、イズレの影響を受けた、って感じか。
それと、母親の方が編み物とかを趣味でやっていたみたいで、子供のころから一緒に何かを作っていたみたいだ。
三人とも、子供の頃に何かに興味を持って、それが今の仕事に繋がっているんだな。
そういえばユズも、祖父がおもちゃ屋をやっていて本人も作っている、ってパターンだな。
この世界では、そういった例が結構多いのかな?
なんて考えていたら、リューナが話はじめた。
「では、最後はハクト様に締めていただくため、私がお話しますね。まず、今の私は”ドラゴンメイド”という……」
「ちょ、ちょっと待った!」
……忘れてた。
というか、リューナが俺に雇われる切っ掛けを話すと、自然と魔皇の話になっちゃうし、なんとか誤魔化さないとだった。
「あー、えっとな。先に説明しておくと、”ドラゴンメイド”っていうのは俺の世界の言葉なんだ。”ドラゴン”っていうのがドラゴン、”メイド”っていうのがメイドって意味だな。それで、ええと……」
「彼女は魔族。元はドラゴンの魔物。かっこいい」
あっ、ディニエルがストレートに言ってしまった。
……まあ、最終的には言うつもりだったけど、もうちょっとこう、段階を踏んでいきたかった。
「元ドラゴン? ……魔族って言うのにも少し驚いたけど、まあどこかにはいるだろうからねぇ。けど、魔物から魔族、ってのは中々信じがたいね」
あれ?
魔物から魔族になった、っていうのには懐疑的みたいだけど、魔族ってことにはあんまり反応していないみたいだな。
「本当。リューナ。変身お願い。一部だけ」
「わかりました。では、腕を変化させましょうか」
と、以前やったみたいに鱗と鋭い爪が出現した。
「へぇー。なるほど、本当みたいね。パレードで見た魔皇を除けば、魔族には初めて会ったけど、魔族はそういう事も出来るのねぇ」
「ああ、いえ。私のように魔物から魔族になった者など、一部の魔族だけですね」
「そうなのね。……今日は、異世界から来た人に魔族、二人の珍しい人に会えてラッキーだったわ」
……うーん。
やっぱり、魔族に対して全然抵抗とかはなさそうだ。
「ちょっと聞きたいんだけど、いいか? あー、えっと、異世界から来たからあんまりわからないんだけど、魔族がいてびっくりしたり、警戒したり、みたいなのはないのか? 昔、魔族と人間族でトラブルみたいなのがあったみたいだけど」
無知を装いつつ、聞きたいことを聞いてみることにした。
「そうねぇ。昔あったみたいだけど、私は当事者じゃないからねぇ。それに、リューナは私たちと全然変わらないし、逆に人間族にも変な人はいるからね。そもそも、魔族とはほとんど出会う機会もないし、警戒も何もないかしらね。遠くにいるよく知らない人たち、って印象ね」
うーん。
つまり、そもそも良く知らないから、警戒心を抱くとかそうでないとか以前の段階って感じか。
……魔族に会ったことがない人では、メレス以外に話を聞いたことがないけど、他の人も同じような感じなんだろうか。
考えてみれば魔族側の話だけしか詳しく聞いていないし、それがこの世界全体の考えだと思っていたけど、そうじゃないのかもしれない。
……後で、調べてみた方がいいかもしれないな。
「ああでも、パレードで見た魔皇の人たちは別かもしれないわね。彼女たちは、魔界の王様みたいなものなんでしょう? そんな人たちと街中でばったり会っちゃったら、とても驚くだろうねぇ」
……勝手に勘違いしていたけど、前にユズが驚いて気絶したのは、ハヤテが魔族だからってよりも、魔皇だったから、ってことだろうな。
その後、俺とリューナがどう出合ったかや、俺に雇われることになった経緯などを説明したが、魔皇の部分は偉い魔族、ってことで誤魔化しておいた。
……誤魔化しても平気なら、態々言う必要はないと思うからな。
◇
その後は、異世界についての話や、魔族、魔界の話で盛り上がった。
途中、混ぜるといえば、色んな味のハーブソルトがあったな、なんてポロっと喋ったらメレスが想像以上に食いついてきた。
何種類か食べたことはあるけど。流石に詳しい配合は知らない、と答えたら感覚共有の魔道具で教えて欲しい、なんて言われてしまった。
今は持っていないから、また今度会いましょ、という約束とともに。
……その時は、もう少し詳しく錬金術を教えてもらおうかな?
そして、食事休憩も終わり、この後に予定のあるメレスとはここで別れた。
今日は、素材のためにここに来たみたいだからな。
食休みも兼ねて、しばらくここにいても大丈夫、とも言ってくれた。
ちなみに飲み物はラッシーだった。
ディニエル以外はプレーンを、ディニエルは、世界樹の抹茶を使った抹茶ラッシーをお願いしていた。
……そういうのもあるのか。
というか、乳製品は使って大丈夫なんだ、なんて思ったけど、よく考えると魔法で殺菌とかもできそうだし、直火の使えない環境ではむしろ有用な食材なのかもな。
◇
「それじゃ、お言葉に甘えて少しのんびりしようかねぇ。せっかくの機会だし、皆との縁を深めておくとしようか。この店に来る道中は、名前くらいしか聞けなかったし。そうだねぇ。それじゃ、今やっている仕事なんかを始めた切っ掛け、なんてどうだい?」
……俺はどうしよう。
「ああ、そこの彼は異世界から来たんだったわね。それなら、こっちに来てからの話を聞かせて欲しいわねぇ」
それなら、色々と話せそうだ。
……信じてもらえなさそうな話は、ちょっとぼかそうかな。
「それじゃ、まずは言い出しっぺの私からいこうかね。私はさっき言った通り、錬金術師をやっているわ。それと、色々な薬とかスパイスの調合もしてるわね。実は、このお店のスパイスも私が調合しているのよ!」
「いい仕事してる。おいしかった」
なるほど。
店員さんと親し気な感じだったけど、そういった理由もあったんだな。
「昔から、何かを混ぜて新しいものを生み出す、っていうことに興味があって、そこから錬金術の方向に行ったの。その過程で調合の知識も得る機会があった、って感じね。あ、ちなみに今日ここに来た理由なんだけど……」
メレスの話によると、今日は世界樹の葉を求めてここに来たようだ。
そのついでに、ここで食事をする予定だったみたいで、俺たちと出会ったタイミングは色々と丁度良かったみたいだ。
「んじゃ、次はあたしでいいか? あたしは魔道具を色々作っているんだが……」
ベイラは、子供のころから魔道具の構造に興味があり、時には魔道具を解体していたみたいだ。
……そして元に戻せなくなって、親に怒られたりな。
それで、本格的に魔道具職人を目指した理由としては、父親、ヴェイグルの影響が大きかったようだ。
何かを作り出す、ということに魅力を感じたみたいだ。
「ただ、あたしの父親は鍛冶職人でな。あたしは、武器自体にはそこまで魅力を感じなかったんだ。それで、昔から好きだった魔道具を作る職人を目指した、ってわけだ」
「なるほどねぇ。私は、知り合いのおじちゃんが薬師でね。その作業を小さいころに見ていたのが、最初の切っ掛けだと思うわねぇ。それと、ベイラの親父さんが鍛冶職人なら、私が材料を提供していたりしてね。……実はたまに、この国で有名な鍛冶職人にも材料を提供しているのさ」
「……もしかしてその職人の名前って、ヴェイグルって名前じゃないか? もしそうなら、あたしの父親じゃんか」
「あら、本当に? ……世間て、思っているより狭いのねぇ。そういえば彼から、魔道具職人の娘がいる、なんて話を聞いたことがあったわねぇ。これは秘密だ、なんて念押しをされたけど」
「……あの親父、やっぱりあちこちで話してるじゃんか。どおりで、親父の知り合いっぽい客が突然来るわけだ。まあ、そういった客はきちんとしてるから、親父も信頼できる人にしか話してないんだろうけどな」
……確かに、ヴェイグルならやりかねないな。
「次は私。昔から父親の人形を見てた。似合う洋服を想像した。最初は……」
ディニエルも、ある意味父親、イズレの影響を受けた、って感じか。
それと、母親の方が編み物とかを趣味でやっていたみたいで、子供のころから一緒に何かを作っていたみたいだ。
三人とも、子供の頃に何かに興味を持って、それが今の仕事に繋がっているんだな。
そういえばユズも、祖父がおもちゃ屋をやっていて本人も作っている、ってパターンだな。
この世界では、そういった例が結構多いのかな?
なんて考えていたら、リューナが話はじめた。
「では、最後はハクト様に締めていただくため、私がお話しますね。まず、今の私は”ドラゴンメイド”という……」
「ちょ、ちょっと待った!」
……忘れてた。
というか、リューナが俺に雇われる切っ掛けを話すと、自然と魔皇の話になっちゃうし、なんとか誤魔化さないとだった。
「あー、えっとな。先に説明しておくと、”ドラゴンメイド”っていうのは俺の世界の言葉なんだ。”ドラゴン”っていうのがドラゴン、”メイド”っていうのがメイドって意味だな。それで、ええと……」
「彼女は魔族。元はドラゴンの魔物。かっこいい」
あっ、ディニエルがストレートに言ってしまった。
……まあ、最終的には言うつもりだったけど、もうちょっとこう、段階を踏んでいきたかった。
「元ドラゴン? ……魔族って言うのにも少し驚いたけど、まあどこかにはいるだろうからねぇ。けど、魔物から魔族、ってのは中々信じがたいね」
あれ?
魔物から魔族になった、っていうのには懐疑的みたいだけど、魔族ってことにはあんまり反応していないみたいだな。
「本当。リューナ。変身お願い。一部だけ」
「わかりました。では、腕を変化させましょうか」
と、以前やったみたいに鱗と鋭い爪が出現した。
「へぇー。なるほど、本当みたいね。パレードで見た魔皇を除けば、魔族には初めて会ったけど、魔族はそういう事も出来るのねぇ」
「ああ、いえ。私のように魔物から魔族になった者など、一部の魔族だけですね」
「そうなのね。……今日は、異世界から来た人に魔族、二人の珍しい人に会えてラッキーだったわ」
……うーん。
やっぱり、魔族に対して全然抵抗とかはなさそうだ。
「ちょっと聞きたいんだけど、いいか? あー、えっと、異世界から来たからあんまりわからないんだけど、魔族がいてびっくりしたり、警戒したり、みたいなのはないのか? 昔、魔族と人間族でトラブルみたいなのがあったみたいだけど」
無知を装いつつ、聞きたいことを聞いてみることにした。
「そうねぇ。昔あったみたいだけど、私は当事者じゃないからねぇ。それに、リューナは私たちと全然変わらないし、逆に人間族にも変な人はいるからね。そもそも、魔族とはほとんど出会う機会もないし、警戒も何もないかしらね。遠くにいるよく知らない人たち、って印象ね」
うーん。
つまり、そもそも良く知らないから、警戒心を抱くとかそうでないとか以前の段階って感じか。
……魔族に会ったことがない人では、メレス以外に話を聞いたことがないけど、他の人も同じような感じなんだろうか。
考えてみれば魔族側の話だけしか詳しく聞いていないし、それがこの世界全体の考えだと思っていたけど、そうじゃないのかもしれない。
……後で、調べてみた方がいいかもしれないな。
「ああでも、パレードで見た魔皇の人たちは別かもしれないわね。彼女たちは、魔界の王様みたいなものなんでしょう? そんな人たちと街中でばったり会っちゃったら、とても驚くだろうねぇ」
……勝手に勘違いしていたけど、前にユズが驚いて気絶したのは、ハヤテが魔族だからってよりも、魔皇だったから、ってことだろうな。
その後、俺とリューナがどう出合ったかや、俺に雇われることになった経緯などを説明したが、魔皇の部分は偉い魔族、ってことで誤魔化しておいた。
……誤魔化しても平気なら、態々言う必要はないと思うからな。
◇
その後は、異世界についての話や、魔族、魔界の話で盛り上がった。
途中、混ぜるといえば、色んな味のハーブソルトがあったな、なんてポロっと喋ったらメレスが想像以上に食いついてきた。
何種類か食べたことはあるけど。流石に詳しい配合は知らない、と答えたら感覚共有の魔道具で教えて欲しい、なんて言われてしまった。
今は持っていないから、また今度会いましょ、という約束とともに。
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