ルピナスは恋を知る

葉月庵

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298話

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着物を買った後も買い物は続き、そこでお土産は全て買った。買い物を十分に楽しんだ私達は今日の目的である、昨日お爺さんに教えてもらった秘湯を目指し、森の中を歩いていた。

「ハル、辛くないか?言ってくれれば背負ってあげるぞ?」

「いえ、大丈夫です。むしろ、お二人こそ大丈夫ですか……?あの後、色々買ったものを全て持っていますし……。」

「大丈夫だ。なぁ、ガルム?」

「あぁ、このくらい何ともないさ。ここからハルを抱えても大丈夫なくらいだ。」

買った物の中には、カズラさんへのお土産も入っているため、それくらいは持ちたいと言ってもお二人は持たせてくれなかった。改めて、あの量のお土産袋が収納できるほど魔力を持っているお二人には驚かされる。

「ん……?アレか……?」

「どれ……。ふむ……、アレみたいだな。この距離だと後5分と言ったところか。」

私よりも遠目が利くお二人はどうやら目的地が視えたみたいだ。私はアルトさんと並んで前を歩いていたのに見えなかった。ちなみに、道が狭いこともあり、ガルムさんは私の後ろを歩いている。そうして歩くこと数分、ガルムさんの目算通り5分程度で到着した。

ここが、その温泉施設か……!お爺さんに教えてもらたっから来れたけど、そうじゃなかったら、一生これなかったかも……!

早速古風な出で立ちな施設の中へと入ると、女将さんが受付で出迎えてくれる。

「いらっしゃいませ。こんな辺境な場所までよく、来てくださいました。ご宿泊ですか?それとも日帰りでしょうか?」

「日帰りで3人で頼む。代金はこれで足りるか?」

「はい。お釣りはこちらです。ご確認ください。温泉はあちらでございます。では、ごゆるりと。」

「あぁ、ありがとう。」

代金を支払ってくれたアルトさんを待って私達は、温泉へと向かった。脱衣場で買ったばかりの着物を脱いだ私達は早速浴室へと入る。

「ほう……!どうやらタイミングが良かったみたいだな……!」

「だな、まるで貸し切りみたいだ。さ、体を洗って早く湯に浸かろうか。」

「はい……!景色も既に綺麗ですし。秘湯、楽しみですね……!」

そうして私達は誰かが来ないうちにパパっと体を洗った。ちなみに私は、当たり前のようにお二人によって洗われていた。

「よし、入るか。ハル、足元に注意しながら入るんだぞ?ほら、手を貸してくれ。」

「ありがとうございます、ガルムさん。」

私は差し出されたガルムさんの手を取って湯船に足をつける。アルトさんも私達に続いて入り、景色がよく見える場所を示してくれる。

「そこがいいんじゃないか?」

「そうだな、ハルは俺の膝の上でいいか?」

「はい、大丈夫ですよ。」

「ククッ……。じゃあ、失礼するぞ、ハル。」

ガルムさんは私を抱き上げ、景色を見やすいように座った。やっぱり裸の状態で抱きしめられると、体温が直に伝わってよりドキドキしてしまう。

頑張って意識しないようにしてから、私は改めてゆっくりと湯に浸かりながら景色を眺める。森の中にある秘湯ということもあり、視界には木々が映るが中心には滝があり、日の光が当たって水面がキラキラと輝いていた。事前にお爺さんが言っていた通りの絶景だった。

「これはまた、見事な滝だな。マイナスイオンも感じられる。」

「滝の音も心地良いな。これは確かに、こんな森の中にあっても足を運びたくなる気持ちも分かる。」

「凄いです……!こんな絶景、初めて見ました……!」

アルトさんの言うマイナスイオンとやらは良く分からなかったが、冷たい空気が優しく頬に届くのがそれなのかもしれない。

「こういう景色を見に、旅行しにいくのもいいな。また今度、落ち着いたときにでもな。」

「それはいいな。次はいつになるか分からないが、その時には新しく家族が増えているかもな。」

「そ、そうですね……!私も皆で行きたいです……!そのためにも、子育て頑張らないとですね……!」

「それは俺達にも言えることだな。子育ては番が協力して行うものだからな。」

「そうだぞ?だから、ハルだけで何でもしようとしないようにな。ハルは頑張り過ぎる気概があるからな。」

「ぜ、善処します……。」

こうしてしばらくの間、お二人と話しながら絶景を眺めながら温泉に浸かるのであった。
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