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306話
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話し合いを終え、そして迎えた次の日、お昼まで頂いてしまった私達はしばらくお世話になったドレットさん宅を出ることになった。
「本当に馬車は2台だけで良かったのかい?今日は出かける用事もないから、いくらでも出してあげるのに……。」
「いや、馬車を出してくれるだけでありがたいからな。2台で大丈夫だ。それに、これ以上この議論を続けたら、またソラが自分達は翼で飛んでいくからいいと言い出しそうだ。」
「そうか。じゃあ、気をつけて帰るんだよ。またいつでも遊びに来てほしい。ソラ君とレイ君もね。」
そう言って笑うドレットさんにそれぞれ挨拶やお辞儀をするなどしてから、私達はそれぞれの馬車に乗り込んでいく。すると、ソラさんに手を繋がれていたレイさんがポツリとつぶやく。
「僕、ハルお兄ちゃんと一緒の馬車が良かったな……。」
「こら、レイ。話しただろう?わがままはいけないよ。」
「でも……、」
「私は一緒でも良いですよ。ガルムさんとアルトさんもいいですか……?」
「あぁ、俺達は構わないぞ?」
ガルムさんがアルトさんの分も纏めてそう言ってくれるも、ソラさんはそれでも大丈夫だと言う。
「いえ、皆さんで1台使ってゆっくりしてください。それに、僕達兄弟はこれから一緒に働くことになるウォルトさん達とお話しをしておきたいですし。」
「ふむ、そうか……?そんなに焦らなくてもいいのだが……、まぁ、分かった。じゃあ、またあとで。ウォルト達もあとでな。」
「はい。ハル様につきましては、お体にお気をつけてください。」
こうして2台の馬車にそれぞれ乗り込んで今度こそ、ドレットさん宅を出発する。ドレットさんは律儀に見えなくなるまで見送ってくれていた。
「なんだか、色々ありましたが、あっという間の数日でした。ですが、とても楽しかったです。」
「そうか、それは良かった。それを聞けただけでも、旅行に来た甲斐があったというものだ。な、アルト。」
「あぁ、ハルにとって良い気分転換になったみたいで何よりだ。」
そう言ってアルトさんは膝の上の私をギュッと抱きしめてくれる。そこでふと、旅行に来る前までの日々を思い出す。
あれ……?悪阻が酷くて王城に行かなくなったけど、もしかして、近々行かなくては行けないのかな……?
「ん?どうしたんだ?ハル。……!もしかして、強く抱きしめすぎたか……!?す、すまない……!」
「あっ、いえ……!ただ、考え事をしてしまっていて……。すみません……。」
「そうか、良かった……。それで、何を考えていたんだ?良ければ聞かせてくれないかい?」
「そう、ですね……。」
ここで話したら、旅行最後の雰囲気を壊しかねないのでは……?で、でも、逆に話さなければ、それはそれで心配させてしまうかも……。
「あの、それが……、旅行の雰囲気を壊しかねない話題なので……、」
「それでも俺は話して欲しい。もちろん、話したくないのなら、大丈夫だ。」
そうガルムさんが微笑みながら優しく言ってくれた。アルトさんはどうかと見上げると、同じようにニコッと笑ってくれて、まるで大丈夫だと言っているようだった。
「その……、こうして旅行に行けるぐらい悪阻が良くなってきたので、近頃王城に行かなくては行けないのではと思いまして……。」
「そのことか。まぁ、そうだな……。何だかんだこちらの要望通り、あれから接触をしてこなかったからな……。」
「そうだな……。となると、そろそろ行かないと、しびれを切らしてしまうかもな。こちらから向かうと言った手前、ハルの体調が優れる日に行こうか。すまないな。」
そうアルトさんが謝ってきたため、私は慌てて顔をあげてもらう。
「いえ、いいんですよ……!お二人と平穏に暮らすために必要なことですから。」
「すまない、ありがとう。さ、こんな話しはここまでにして、帰路を楽しむとしようじゃないか。帰るまでが旅行とも言うしな。」
「そうだな、ガルムの言う通りだ。ほら、外を見てくれ。綺麗だぞ。」
「あっ……!本当ですね……!」
こうして早々に話しはきり上げ、最後まで旅行を楽しむのであった。
「本当に馬車は2台だけで良かったのかい?今日は出かける用事もないから、いくらでも出してあげるのに……。」
「いや、馬車を出してくれるだけでありがたいからな。2台で大丈夫だ。それに、これ以上この議論を続けたら、またソラが自分達は翼で飛んでいくからいいと言い出しそうだ。」
「そうか。じゃあ、気をつけて帰るんだよ。またいつでも遊びに来てほしい。ソラ君とレイ君もね。」
そう言って笑うドレットさんにそれぞれ挨拶やお辞儀をするなどしてから、私達はそれぞれの馬車に乗り込んでいく。すると、ソラさんに手を繋がれていたレイさんがポツリとつぶやく。
「僕、ハルお兄ちゃんと一緒の馬車が良かったな……。」
「こら、レイ。話しただろう?わがままはいけないよ。」
「でも……、」
「私は一緒でも良いですよ。ガルムさんとアルトさんもいいですか……?」
「あぁ、俺達は構わないぞ?」
ガルムさんがアルトさんの分も纏めてそう言ってくれるも、ソラさんはそれでも大丈夫だと言う。
「いえ、皆さんで1台使ってゆっくりしてください。それに、僕達兄弟はこれから一緒に働くことになるウォルトさん達とお話しをしておきたいですし。」
「ふむ、そうか……?そんなに焦らなくてもいいのだが……、まぁ、分かった。じゃあ、またあとで。ウォルト達もあとでな。」
「はい。ハル様につきましては、お体にお気をつけてください。」
こうして2台の馬車にそれぞれ乗り込んで今度こそ、ドレットさん宅を出発する。ドレットさんは律儀に見えなくなるまで見送ってくれていた。
「なんだか、色々ありましたが、あっという間の数日でした。ですが、とても楽しかったです。」
「そうか、それは良かった。それを聞けただけでも、旅行に来た甲斐があったというものだ。な、アルト。」
「あぁ、ハルにとって良い気分転換になったみたいで何よりだ。」
そう言ってアルトさんは膝の上の私をギュッと抱きしめてくれる。そこでふと、旅行に来る前までの日々を思い出す。
あれ……?悪阻が酷くて王城に行かなくなったけど、もしかして、近々行かなくては行けないのかな……?
「ん?どうしたんだ?ハル。……!もしかして、強く抱きしめすぎたか……!?す、すまない……!」
「あっ、いえ……!ただ、考え事をしてしまっていて……。すみません……。」
「そうか、良かった……。それで、何を考えていたんだ?良ければ聞かせてくれないかい?」
「そう、ですね……。」
ここで話したら、旅行最後の雰囲気を壊しかねないのでは……?で、でも、逆に話さなければ、それはそれで心配させてしまうかも……。
「あの、それが……、旅行の雰囲気を壊しかねない話題なので……、」
「それでも俺は話して欲しい。もちろん、話したくないのなら、大丈夫だ。」
そうガルムさんが微笑みながら優しく言ってくれた。アルトさんはどうかと見上げると、同じようにニコッと笑ってくれて、まるで大丈夫だと言っているようだった。
「その……、こうして旅行に行けるぐらい悪阻が良くなってきたので、近頃王城に行かなくては行けないのではと思いまして……。」
「そのことか。まぁ、そうだな……。何だかんだこちらの要望通り、あれから接触をしてこなかったからな……。」
「そうだな……。となると、そろそろ行かないと、しびれを切らしてしまうかもな。こちらから向かうと言った手前、ハルの体調が優れる日に行こうか。すまないな。」
そうアルトさんが謝ってきたため、私は慌てて顔をあげてもらう。
「いえ、いいんですよ……!お二人と平穏に暮らすために必要なことですから。」
「すまない、ありがとう。さ、こんな話しはここまでにして、帰路を楽しむとしようじゃないか。帰るまでが旅行とも言うしな。」
「そうだな、ガルムの言う通りだ。ほら、外を見てくれ。綺麗だぞ。」
「あっ……!本当ですね……!」
こうして早々に話しはきり上げ、最後まで旅行を楽しむのであった。
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