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「さぁ、採血の時間だよ。」
そう言ってもう何度目かも分からない拷問じみた物をやろうとテルさんは階段から降りてきた。
私は虚ろな目をしながら、テルさんを見ることもなく自分の足をみていた。
最初に採血をしてから今日まで食事は毎食出されていたし、水浴びも毎日させられていたため、健康的とは言えないものの、痩せ細っているとか、小汚いとかはなかった。
一回なぜこんなことをするのに最低限の暮らしはさせるのか問うたことがある。
テルさんは不思議そうに仕事道具を手入れするのは当たり前だと答えていた。
そんなことを思い出しながら、何度も聞いた動作音をした後、壁に寄せられる。私は、抵抗は無駄だと分かったときからもがくのをやめた。
「最近どうも君の反応が薄くなってしまったからね、今回は趣向を変えよう。丁度試してみたいことがあったんだ。」
その言葉に手のひらの痛みに耐性がつき始めてしまった私は、今日始めてテルさんの顔をみた。
相変わらずの糸目でこちらを見下してきている。感情が大きく動くとき以外は開かないようだ。
ジューッという音がする何かを持ったテルさんはこちらに一歩一歩近づいてきた。
見慣れない物に思わず顔が恐怖に染まってしまう。
「フフッ。久しぶりにその顔を見たが、やはり君はその顔がよく似合っているよ。最近のこの世に絶望する顔もとてもそそられるけどねぇ。でもお楽しみはこれからだ。」
その手に持つ熱いものを肌がさらされている腕に押しつけた。
「あ゛ぁ゛っ!!」
食肉が焼け焦げるものとは明らかに違う鼻にツンとくる臭いが届いた。
痛い、痛い、痛い、痛い!!
「ハハハハハハハハッ!!ッぁー……!!いいね、いいね。凄く良いッ!!さて、そろそろかな。」
そう言ってテルさんはその熱い物を私から外す。
皮膚が焼けただれたところから血が溢れ出していく。私は浅く息を吸いながらその部位を見ていた。
そして血が溢れている所からだんだん先ほどのことがなかったかのようにいつもの皮膚にもどっていく。
「やはりか。ではこれではどうかな?」
そう言って先ほどよりは熱く無さそうな物を押し付ける。
「熱っ!!」
先程とは違いその物体はすぐに離れた。
その箇所を見ると、皮が剥がれるか剥がれないかぐらいの状態だった。血は出ていなかったため、その火傷はすぐに治らなかった。
それを見たテルさんは先程集めた血を掬い、その火傷した部位に流した。するとみるみるうちにその火傷は消え、またも何もなかったかのようになった。
テルさんは予想通りといった顔で最初に押し当てた熱い物体を持ち上げた。
「これで実験は終わりだ。せっかくなのだ。採血はこれで行おう。フフフッ!!」
私は何度したかも分からない恐怖の顔で二個に増えた熱い物体を見た。
結局この日はテルさんが満足するまで採血が行われた。
その次の日からは熱い物を押し当てられることはなくなったが、手のひらと同時に腹も刺されるようになった。
そのとき、あの日の母を思い出してしまい、より恐怖の色が濃くなった私も見てとても嬉しそうな顔をしていた。
その日からしばらくの間、腹を刺しながら恐怖に染まる私を見て楽しんでいた。
そう言ってもう何度目かも分からない拷問じみた物をやろうとテルさんは階段から降りてきた。
私は虚ろな目をしながら、テルさんを見ることもなく自分の足をみていた。
最初に採血をしてから今日まで食事は毎食出されていたし、水浴びも毎日させられていたため、健康的とは言えないものの、痩せ細っているとか、小汚いとかはなかった。
一回なぜこんなことをするのに最低限の暮らしはさせるのか問うたことがある。
テルさんは不思議そうに仕事道具を手入れするのは当たり前だと答えていた。
そんなことを思い出しながら、何度も聞いた動作音をした後、壁に寄せられる。私は、抵抗は無駄だと分かったときからもがくのをやめた。
「最近どうも君の反応が薄くなってしまったからね、今回は趣向を変えよう。丁度試してみたいことがあったんだ。」
その言葉に手のひらの痛みに耐性がつき始めてしまった私は、今日始めてテルさんの顔をみた。
相変わらずの糸目でこちらを見下してきている。感情が大きく動くとき以外は開かないようだ。
ジューッという音がする何かを持ったテルさんはこちらに一歩一歩近づいてきた。
見慣れない物に思わず顔が恐怖に染まってしまう。
「フフッ。久しぶりにその顔を見たが、やはり君はその顔がよく似合っているよ。最近のこの世に絶望する顔もとてもそそられるけどねぇ。でもお楽しみはこれからだ。」
その手に持つ熱いものを肌がさらされている腕に押しつけた。
「あ゛ぁ゛っ!!」
食肉が焼け焦げるものとは明らかに違う鼻にツンとくる臭いが届いた。
痛い、痛い、痛い、痛い!!
「ハハハハハハハハッ!!ッぁー……!!いいね、いいね。凄く良いッ!!さて、そろそろかな。」
そう言ってテルさんはその熱い物を私から外す。
皮膚が焼けただれたところから血が溢れ出していく。私は浅く息を吸いながらその部位を見ていた。
そして血が溢れている所からだんだん先ほどのことがなかったかのようにいつもの皮膚にもどっていく。
「やはりか。ではこれではどうかな?」
そう言って先ほどよりは熱く無さそうな物を押し付ける。
「熱っ!!」
先程とは違いその物体はすぐに離れた。
その箇所を見ると、皮が剥がれるか剥がれないかぐらいの状態だった。血は出ていなかったため、その火傷はすぐに治らなかった。
それを見たテルさんは先程集めた血を掬い、その火傷した部位に流した。するとみるみるうちにその火傷は消え、またも何もなかったかのようになった。
テルさんは予想通りといった顔で最初に押し当てた熱い物体を持ち上げた。
「これで実験は終わりだ。せっかくなのだ。採血はこれで行おう。フフフッ!!」
私は何度したかも分からない恐怖の顔で二個に増えた熱い物体を見た。
結局この日はテルさんが満足するまで採血が行われた。
その次の日からは熱い物を押し当てられることはなくなったが、手のひらと同時に腹も刺されるようになった。
そのとき、あの日の母を思い出してしまい、より恐怖の色が濃くなった私も見てとても嬉しそうな顔をしていた。
その日からしばらくの間、腹を刺しながら恐怖に染まる私を見て楽しんでいた。
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