ルピナスは恋を知る

葉月庵

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7話

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死にたい。こんな思いをするのなら、死んでしまいたい。そうだ、いっそ食事と水を取らなければ死ねるのではないのか。

今日の分の採血を終え、意識がぼーっとする中、私はこの辛い檻の生活を終える方法を模索していた。

私はやっと死ねるかもと考えたら、行動するしかなかった。早速今日から抜いてみようと意気込んでいた。

♢♢♢♢♢♢♢♢

「ほら、今日の食事だ。食べなさい。」

いつも通りテルさんは盆に食事を乗せて持ってきた。そして、檻の中の机に乗せるとさっさと上へ戻っていった。

冷めきった食事はを手に取り、簡易トイレの前に立ち、その中に食事を全部捨てた。流れるかどうかは一種の賭けであったが、流動食が中心であったため、無事に流すことができた。

罪悪感などない私はきっと極悪人なのであろう。

その日から飲食なしの生活は続いた。空腹と渇きに耐えることは辛かったが、やっと死ねると考えたら乗り切ることができた。

そして、3日経った現在。私はそろそろ限界が見えてきていた。

やっと、やっとだ……!!

意識が朦朧とする中、いつの間にかテルさんが檻の中に入り、私の目の前まで来ていた。

「君のその態度は大変気に入った。だが、私も君の血で大変儲けていて、みすみす手放すことはしたくないからね。不本意ではあるがこれを使わせてもらうよ。」

人は死ぬ間際まできちんと聞こえるのだと聞いたことはあるが、本当なのだなと、考えながら聞いていた。

テルさんはおもむろに手のひらサイズの瓶を開け、飲ませてきた。

何か嫌な予感がする。嫌だ、嫌だ!!私は死ぬんだ!!

必死に顔を背けようとしたが、体力もすり減っている今、テルさんに頭を固定されてしまえば、抗うことなどできなかった。

「なに、これ……?」

体の異変に声が震える。

あれだけ限界だった空腹感と喉の渇きがなくなっていくのを感じたからだ。

「あと一本。」

そうして持っていた二本目の瓶を手に、また私に飲ませた。

そんな……

二本目を飲まされ終わる頃には空腹感と喉の渇きは完璧になくなっていた。

「いいねぇ、その顔。額縁に入れて飾りたいくらいだ。フフフッ。じゃあ、明日もまた来るよ。」

そう言って驚きと絶望で固まる私を置いてテルさんは出ていった。

最後の希望さえ打ち砕かれた私は、それから以前にもまして採血にも抵抗しなくなっていった。

飲食はしていなかっただが、採血の際にテルさんが持ってきた瓶を飲まされていた。

今思うとあれは回復ポーションだろう。空腹にも一時的に効果があるとか聞いたことがある。

あとどれだけ耐えれば良いのだろう。寿命までだとしたら、やっぱり辛いな……。

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