ルピナスは恋を知る

葉月庵

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40話

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私は厨房のサリアさんに注文を伝え、作ってもらったものを持ち再びあの獅子獣人さんの元へ向かった。

「お待たせしました。ピグの野菜炒めです。」

「ありがとう。」

私はお盆から料理の皿を獅子獣人さんの前へ置いていく。

パシッ

「!?」

突然手を捕まれ、昨日のこともあり体を強張らせる。

「ハルは細いな。俺が遠慮なく触ったら壊してしまいそうだ……。ここで働く前は何をしていたんだ?ちゃんと食べているのか?」

無理矢理何かされるわけではない……?私を心配しているのか……?

「あの……?」

私は困惑して質問に何も答えられないでいた。それをどう解釈したのか、獅子獣人さんは私の手をパッと離してくれて、言葉を続ける。

「あぁ、俺ばかり聞いて自身のことは何も話していなかったな。悪い。俺はアルト、隣町を拠点に冒険者ギルドに所属している。少し事情があってここにはしばらく滞在しているんだ。」

「アルトさん、ですね。よろしくお願いします?」

未だ困惑しており、どう返したら良いのか分からず、語尾が疑問形になってしまう。

「で、ハル。お前はこれまで何をしていたんだ?」

「えと、今は訳あってここで働かせてもらっていますが、本来は駆け出しの冒険者をやっています……。」

「何!?冒険者なのか!?なら尚更ちゃんと食べていないとダメだろう。」

「一応最近は食べています……。」

「食べていてそれなのか……。」

目の前の獅子獣人さん、改め、アルトさんは私を上から下を隅々まで見る。そうマジマジと見られると何だか恥ずかしくなってくる。私は段々アルトさんから視線をそらしてしまう。

「そ、そんなに見ないでください。」

「ハハハッ、ハルはいじらしくて可愛いな。ずっと俺の手元に置いておきたいくらいだ。」

「なっ……!?」

自分の顔が一気に赤くなるのを感じる。

どうしよう……、何故か胸がドキドキする!?こんなこと言われたことないから、どんな反応すれば良いのか分からないよ……。

「ハル君、次のお客さんお願い!」

助かった……。ナイスタイミング、キルシュさん!

私はアルさんに頭を勢いよく下げ、次のお客さんの元へと向かう。チラッとアルトさんの方を見ると優しく微笑んでこちらにひらひらと手を振っていた。

うぅ、落ち着け、私……。深呼吸をして、笑顔を忘れずに………。

「お待たせしました、ご注文を伺います。」

「やぁ、ハル君。噂に釣られてやってきたよ。」

初めて目の前のお客さんの顔を見ると、冒険者ギルドでぶつかってしまったことで知り合ったライさんだった。

「あっ、ライさん、こんにちは。えと、噂って何ですか?」

「知らないの?熊の蔵に新しく入った新人が可愛いらしい笑顔で話してくれるってやつ。俺はそれがきっとハル君だと思って来たんだ。」

そんな根も葉もない噂が広がっているのか……。まぁ、それでお店にお客さんが来るなら、良いのかな?

「そうなんですね。わざわざありがとうございます。」

「そういえば、さっきの獅子獣人ってハル君の知り合い?」

そういいながら、若干顔が引きつったように見える。ライさんとアルさんは知り合いなのだろうか。

「えと、今日で会うのが二回目になります。なので、知り合いかどうかと聞かれれば、微妙な感じです。」

「そうか……。あぁ、注文だったね。えと、じゃあコッコの塩焼きを一つお願いするよ。」

ぱっと表情を戻し、ライさんは注文をする。

私もこのくらい表情をすぐ切り替えられたら、さっきのアルさんの言葉にも上手く対応できたのかな……?

「分かりました。では、失礼しますね。」

頭を下げてから厨房に注文を届けに向かう。

それにしても、一回ぶつかってしまっただけの私に配慮して、働いているお店に来てくれるなんて、ライさんは凄く律儀な人だな。

その後、今日は特に特別なことはなく働いていた。強いて挙げるなら、心なしか昨日よりも来店してくれるお客さんが増えたような気がする。私は忙しい方が自分が役に立てている感じがして良かった。
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