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96話
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「ん……。」
目が覚めるといつもの紺色ではなく、金色が視界に入ってきた。
あれ……、ここは……。あっ、そうか。今はアルトさんの部屋にいるんだった。痛みは……うん、すっかりなくなっている。
ずっと視界に入っている目の前のアルトさんの胸筋はガルムさんのものと負けるとも劣らないものだった。これは恥ずかしくって目に毒だと顔を見ると、アルトさんはまだ心地よさそうに眠っていた。
アルトさんはギルドマスターだから日頃の疲れが溜まっているのかも知れない。もしかしたら、今日は無理をしてデートしてくれてるのかも……。
そう思いながら顔を見つめていると、ちょっとしたいたずら心が芽生えてくる。昔、近所の猫の喉辺りを撫でたら喉を鳴らしてくれたけど、同じ猫科ならどうなのだろうと。
どんどん好奇心がせり上がってきて気づいた時には既にアルトさんの喉元に手で触れていた。ここまできたら、後には引けないからと自分に言い訳をして、昔を思い出しながら指を動かす。すると、どうだろう。喉を鳴らすことはなかったが、心地良いようなくすぐったいような表情をしているではないか。
喉をならさなかったことは残念ではあるが、甘えてもらっているようで私の心が満たされる感じがする。
「フフッ……!」
「……何しているんだ?」
「!?あ、あの、すみません……!つい気になっt、あ、いや、その……違うんです……!」
まさか起こしてしまうなんて……!なんというタイミングだろうか。これではまるでちょっとした変態ではないか。
「ククッ……。謝るってことは、俺がやり返しても構わないな。」
そう言って答えを聞かぬままアルトさんは私に手を伸ばしてきた。そして、スッと指の爪側の面を使って優しく顎から頰にかけて撫でられる。
「痛みはどうだ、もう大丈夫かい?」
「は、はい……、おかげさまで……。」
「それは良かった。」
そうして手を返しその流れで顎をつかまれ、親指でスッと唇をなぞられる。キスとは違う感覚にゾクッとし唇が僅かに開く。そこにアルトさんの唇が重ねられれば、頭に心地よさが駆け巡る。頭がぼーっとしてきていると、突然扉がノックされ意識が戻される。
「アルト様、お食事の支度ができました。」
「ククッ、これ以上はやめておこうか。ハル、行こうか。」
私は今のキスにより恥ずかしさがこみ上げてきていたため、俯きながら差し出された手を取る。そしてそのままエスコートされ、料理が並んでいるテーブルがある部屋までやってきた。目の前のテーブルには様々な料理が色とりどりに並んでおり、いい匂いが漂っている。
「わぁ……!」
「さぁ、冷めないうちににお召し上がり下さい。お酒もご用意しているので、良かったらこちらもどうぞ。」
私が目の前の料理に感嘆の声を上げると、ウォルトさんの隣に立つ人物が話す声で、初めて見る人がいることに気づく。私とパチッと視線が合うとその女性はフッと優しく微笑み頭を下げながら自己紹介を始めた。
「はじめまして、ハル様。旦那のウォルトと一緒にアルト様にお仕えしている犬獣人の執事、シータと申します。」
「よ、よろしくお願いします。」
「さぁハル、座ろうか。何処に座ってもいいぞ。なんなら俺の膝の上でも……。」
「こ、ここに座ります……!」
私がシータさんに頭を下げているとアルトさんが横からとんでもないことをいったため、慌てて近くの席の前に立つ。ならばと言った感じでアルトさんは私の正面の席に座った。
目が覚めるといつもの紺色ではなく、金色が視界に入ってきた。
あれ……、ここは……。あっ、そうか。今はアルトさんの部屋にいるんだった。痛みは……うん、すっかりなくなっている。
ずっと視界に入っている目の前のアルトさんの胸筋はガルムさんのものと負けるとも劣らないものだった。これは恥ずかしくって目に毒だと顔を見ると、アルトさんはまだ心地よさそうに眠っていた。
アルトさんはギルドマスターだから日頃の疲れが溜まっているのかも知れない。もしかしたら、今日は無理をしてデートしてくれてるのかも……。
そう思いながら顔を見つめていると、ちょっとしたいたずら心が芽生えてくる。昔、近所の猫の喉辺りを撫でたら喉を鳴らしてくれたけど、同じ猫科ならどうなのだろうと。
どんどん好奇心がせり上がってきて気づいた時には既にアルトさんの喉元に手で触れていた。ここまできたら、後には引けないからと自分に言い訳をして、昔を思い出しながら指を動かす。すると、どうだろう。喉を鳴らすことはなかったが、心地良いようなくすぐったいような表情をしているではないか。
喉をならさなかったことは残念ではあるが、甘えてもらっているようで私の心が満たされる感じがする。
「フフッ……!」
「……何しているんだ?」
「!?あ、あの、すみません……!つい気になっt、あ、いや、その……違うんです……!」
まさか起こしてしまうなんて……!なんというタイミングだろうか。これではまるでちょっとした変態ではないか。
「ククッ……。謝るってことは、俺がやり返しても構わないな。」
そう言って答えを聞かぬままアルトさんは私に手を伸ばしてきた。そして、スッと指の爪側の面を使って優しく顎から頰にかけて撫でられる。
「痛みはどうだ、もう大丈夫かい?」
「は、はい……、おかげさまで……。」
「それは良かった。」
そうして手を返しその流れで顎をつかまれ、親指でスッと唇をなぞられる。キスとは違う感覚にゾクッとし唇が僅かに開く。そこにアルトさんの唇が重ねられれば、頭に心地よさが駆け巡る。頭がぼーっとしてきていると、突然扉がノックされ意識が戻される。
「アルト様、お食事の支度ができました。」
「ククッ、これ以上はやめておこうか。ハル、行こうか。」
私は今のキスにより恥ずかしさがこみ上げてきていたため、俯きながら差し出された手を取る。そしてそのままエスコートされ、料理が並んでいるテーブルがある部屋までやってきた。目の前のテーブルには様々な料理が色とりどりに並んでおり、いい匂いが漂っている。
「わぁ……!」
「さぁ、冷めないうちににお召し上がり下さい。お酒もご用意しているので、良かったらこちらもどうぞ。」
私が目の前の料理に感嘆の声を上げると、ウォルトさんの隣に立つ人物が話す声で、初めて見る人がいることに気づく。私とパチッと視線が合うとその女性はフッと優しく微笑み頭を下げながら自己紹介を始めた。
「はじめまして、ハル様。旦那のウォルトと一緒にアルト様にお仕えしている犬獣人の執事、シータと申します。」
「よ、よろしくお願いします。」
「さぁハル、座ろうか。何処に座ってもいいぞ。なんなら俺の膝の上でも……。」
「こ、ここに座ります……!」
私がシータさんに頭を下げているとアルトさんが横からとんでもないことをいったため、慌てて近くの席の前に立つ。ならばと言った感じでアルトさんは私の正面の席に座った。
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