ルピナスは恋を知る

葉月庵

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97話

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席に座ったは良いものの、目の前の豪華な料理を前にどれから食べるべきか分からずに視線を彷徨わせていた。

「ハル様、お嫌いなものがありましたらお伝え下さい。代わりのものを持ってきますので。」

「い、いえ、大丈夫です……!」

ウォルトさんにいらぬ誤解をさせてしまっているようで申し訳なくなってしまい、取り敢えず目の前のスープを一口食べる。

あっ、美味しい……!

「どうだ、ハル。美味しいか?」

特に注視せずに口に入れてみたため、それが何スープなのか分からなかったため、初めてそれを認識したが、どうやらブイヤベースのようだ。それを味わいながら咀嚼していると、アルトさんが問うてくる。

「はい、美味しいです。」

「遠慮せず、どんどん食べてくれ。」

そう言われ、そのまま食べ進めようとすると一向にアルトさんが食事に手を付けず、こちらをニコニコと見つめているのに気がつく。

「あの……、アルトさんは食べないんですか?」

「ん?あぁ、ハルは少食だから、ハルが残したものを食べようと思ってな。だからハルは色んなものに手を付けていいぞ。」

「そんな、悪いです……!アルトさんも私が残したものではなく、ちゃんと食べてください……!」

自分がお邪魔している身分でここまでされるのは申し訳なかったため、即断った。すると、アルトさんは良いことでも思いついたでも言わん顔をした。

これはマズイ。この顔は、この後私が恥ずかしくなってしまうようなことを言う時だ……!

「では、ハルが食べさせてくれるなら食べよう。」

うっ……、また"あーん"か。今、目の前にはウォルトさんとシータさんもいるのに……。

本当にしなくてはいけないものかとアルトさんの顔を伺い見れば、既に前のめりになり近づいてきていた。これは避けられないかもしれないと腹をくくり、目の前のローストされたカウの肉をフォークに差す。

「あ、あーん……。」

フォークに刺さった肉を差し出すと、ガルムさんより短いマズルでパクリと食べた。やはり、こういう時にしか見えない鋭い犬歯が見えると、ドキドキしてしまう。

「ん……、上手い。ほら、ハルも食べてみるといい。なんなら、俺が食べさせてやろうか?」

「いや、大丈夫です……!そ、それより、アルトさんは毎日こんなに美味しい料理を食べられて幸せですね。」

私がこの状況を変えようと話題をそらすと、その意図が伝わったのか、ウォルトさんが返してくれる。

「過分なお言葉ありがとうございます。アルト様は自分のことを含めて色々やってしまうので、食事くらいはとお願いして日々作らせていただいているのですよ。」

軽く言っているが、執事がいるのに自分で色々やるのは凄いことなのではないのかと驚きの眼差しでアルトさんを見ると、何でもないように微笑見ながら、"あーん"に満足したかのように食べ始めていた。
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