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98話
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それから食事は進み、結局私はどれも美味しくいただいた。ただ、量に関しては少食気味な私には多かったため、自分の分の料理は数品手をつけなかった。それを見ていたアルトさんは自分の分からわざわざその料理を食べさせてくれた。毎回毎回"あーん"だったのはとても恥ずかしかったが。今は食事を終えアルトさんの部屋に戻り、食後のお茶をいただいているところだ。
「うん、やはり食後はこれに限るな。」
アルトさんはそう言いながらカップを傾ける。自分も飲んでみたが、確かにスッキリとした味わいで、胃が落ち着くような感じがした。アルトさんの口ぶりからすると、これは習慣になっているようだ。そして、アルトさんは持っているカップを置いてから口を開く。
「ハル、今日の食事で何が一番美味しいと感じたのかな。」
「えと、どれも美味しかったので優劣はつけられないです……。」
「気を使わなくてもいいんだぞ?俺が思うに、ハルは甘いものが好きなのではないかな。甘いものを食べているとき、少し他の物よりも口角が上がっているように感じた。」
なんと、そこまで見ているのか。自分でも気づいていないほどの些細な変化でも気づくのは、ギルドマスターの仕事柄なのかはたまたアルトさんの素質なのか分からないのけど凄いことだ。
そうか……、アルトさんがそう言うなら、私は甘いものが好きなのかもしれない
「そう、なんですね。自分では分かりませんでした。あまり甘いものを食べ慣れていないからかもしれませんね。」
「なら、これからは沢山食べよう。俺はハルの幸せそうな顔が好きなんだ。」
「っ……///!そうですか……。」
面と向かって微笑んでこんなことを言ってくるなんて、ズルいと思う。ガルムさんは特に凄いと思っていたけれど、アルトさんも大概だ。
「フフッ……。ほら、こっちに来てくれるかい?日中聞けなかった話を聞かせてくれ。」
私は火照った頬を隠しながら、広げられたアルトさんの腕の中に向かう。そしてそのままアルトさんの膝の上へと座らされる。
「あの、こうする理由ってあるんですか……?」
私は今日ずっとアルトさんとの距離が近いことに疑問を持ち、率直に聞いた。
「もちろん、ハルとくっついていたいからだが?」
アルトさんはおかしなことでも聞くものだとでも言わんばかりに答えるので、呆気に取られてしまった。
「それだけ、ですか……?」
「ん?そうだぞ?恋人とくっついていたいと思うのは普通のことではないか。ハルもそう思っているのではないか?」
確かにさっき、今のようにして欲しいとお願いしたのは心がポカポカしてくるからだけど、でも……。
「……私はアルトさんに抱きしめられると、ドキドキしてしまいます……。」
私が思っていることを正直に伝えると、アルトさんは頭上でくつくつと笑った。私はそれに疑問に思っていると、アルトさんによりギュッと抱きしめられた。
「ハルは可愛いな。ハルがそう思ってくれていて嬉しいよ。」
私はより濃くなったアルトさんの匂いと体温に頬を赤らめて固まってしまった。
「アルト様、お風呂の準備が整いましたので、お好きな時にお入りください。」
ノックと共にウォルトさんの声が扉越しに聞こえる。その声に反応してアルトさんの腕が少し緩み、密着状態から少し解放され気持ちを落ち着かせる。
「そうか、もうそんな時間か……。寝てしまって夕食が遅れたからか。ハル、今から風呂に入ろうか。」
「お風呂、ですか……?」
お風呂か……。もう随分と入っていないな。長い間シャワーや簡易的な水浴びだけだったからすっかり存在を忘れていた。
「ちょっと待っていてくれ。」
私がお風呂について考えていると、アルトさんはヒョイと私をベッドの上に下ろし、チェストから服を二着取り出す。そして、サッと手を差し出される。
「さぁ、行こうか。ハルの分の服も持っているから安心してくれ。」
えっ……、お風呂って一人一人入るものじゃないの?まさかこれって、一緒に入るってこと……!?
「うん、やはり食後はこれに限るな。」
アルトさんはそう言いながらカップを傾ける。自分も飲んでみたが、確かにスッキリとした味わいで、胃が落ち着くような感じがした。アルトさんの口ぶりからすると、これは習慣になっているようだ。そして、アルトさんは持っているカップを置いてから口を開く。
「ハル、今日の食事で何が一番美味しいと感じたのかな。」
「えと、どれも美味しかったので優劣はつけられないです……。」
「気を使わなくてもいいんだぞ?俺が思うに、ハルは甘いものが好きなのではないかな。甘いものを食べているとき、少し他の物よりも口角が上がっているように感じた。」
なんと、そこまで見ているのか。自分でも気づいていないほどの些細な変化でも気づくのは、ギルドマスターの仕事柄なのかはたまたアルトさんの素質なのか分からないのけど凄いことだ。
そうか……、アルトさんがそう言うなら、私は甘いものが好きなのかもしれない
「そう、なんですね。自分では分かりませんでした。あまり甘いものを食べ慣れていないからかもしれませんね。」
「なら、これからは沢山食べよう。俺はハルの幸せそうな顔が好きなんだ。」
「っ……///!そうですか……。」
面と向かって微笑んでこんなことを言ってくるなんて、ズルいと思う。ガルムさんは特に凄いと思っていたけれど、アルトさんも大概だ。
「フフッ……。ほら、こっちに来てくれるかい?日中聞けなかった話を聞かせてくれ。」
私は火照った頬を隠しながら、広げられたアルトさんの腕の中に向かう。そしてそのままアルトさんの膝の上へと座らされる。
「あの、こうする理由ってあるんですか……?」
私は今日ずっとアルトさんとの距離が近いことに疑問を持ち、率直に聞いた。
「もちろん、ハルとくっついていたいからだが?」
アルトさんはおかしなことでも聞くものだとでも言わんばかりに答えるので、呆気に取られてしまった。
「それだけ、ですか……?」
「ん?そうだぞ?恋人とくっついていたいと思うのは普通のことではないか。ハルもそう思っているのではないか?」
確かにさっき、今のようにして欲しいとお願いしたのは心がポカポカしてくるからだけど、でも……。
「……私はアルトさんに抱きしめられると、ドキドキしてしまいます……。」
私が思っていることを正直に伝えると、アルトさんは頭上でくつくつと笑った。私はそれに疑問に思っていると、アルトさんによりギュッと抱きしめられた。
「ハルは可愛いな。ハルがそう思ってくれていて嬉しいよ。」
私はより濃くなったアルトさんの匂いと体温に頬を赤らめて固まってしまった。
「アルト様、お風呂の準備が整いましたので、お好きな時にお入りください。」
ノックと共にウォルトさんの声が扉越しに聞こえる。その声に反応してアルトさんの腕が少し緩み、密着状態から少し解放され気持ちを落ち着かせる。
「そうか、もうそんな時間か……。寝てしまって夕食が遅れたからか。ハル、今から風呂に入ろうか。」
「お風呂、ですか……?」
お風呂か……。もう随分と入っていないな。長い間シャワーや簡易的な水浴びだけだったからすっかり存在を忘れていた。
「ちょっと待っていてくれ。」
私がお風呂について考えていると、アルトさんはヒョイと私をベッドの上に下ろし、チェストから服を二着取り出す。そして、サッと手を差し出される。
「さぁ、行こうか。ハルの分の服も持っているから安心してくれ。」
えっ……、お風呂って一人一人入るものじゃないの?まさかこれって、一緒に入るってこと……!?
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