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2章 ダンジョン講習
02. まずは食糧確保 ―ダンジョン1日目― ※グロ(スプラッタ)注意
太陽が黄色い。徹夜が少々堪える歳になった。
夜明けと同時に町を出た俺たちは、一気にダンジョンを下りた。
地下なのに、なぜかダンジョンには昼夜がある。地上と連動していて、昼間は明るく夜になると暗くなる。黄昏時に周囲が朱に染まるのまで一緒。理由はわからないが、実は出入口以外に地上と繋がる穴があって、そこから陽の光が入ってくるんじゃないかという説が有力だ。
「取敢えず今夜の夕飯を狩ろうか」
昨日、飯は現地調達するから装備を整えていくように指示してある。所持金の少ないニールに、支度を万全にしろと言っても無理だからだ。一応、ギルドから冒険者セットとして武器や回復ポーションの入った収納袋を持ってきているが、どれも市場価格より二割ほど高めだから、非常用の扱いだ。
三層目には魔鶏の生息地がある。
鶏という生き物は普段不仲でも、外部からの脅威には集団で立ち向かう上に自分たちより弱いと思ったら、執拗に攻撃してくる性格の悪さがあった。
コカトリスほど巨大ではないとはいえ、頭の位置が腰よりも高く鶏としてはかなり大型の魔鶏だ。図体のデカさに似合わず俊敏な上、体重を乗せた蹴りはそれなりに脅威ではある。
「自己調達だ。自分が食いたくないような、酷い獲物とならないよう考えて狩れ」
個人講義とはいえ、E級からD級になりたての冒険者が狙う獲物程度は、指導せずとも問題ないだろうと言いおく。
実際、自身にバフをかければ集団で襲われても大した被害は出ない。そもそもの話、素早いとはいえC級以上のベテラン冒険者にとっては遅く感じる動きだ。蹴りを避ける程度は朝飯前、毒を持たず魔法攻撃もない単純な物理攻撃だけの魔獣など、敵でも何でもなかった。
ニールの動きを目の端で追いつつ、適当な獲物を探す。だがこちらをちらちら見るばかりで、一向に倒す気配がなかった実際に狩るのは、俺を見てからにする心算らしい。
――仕方ない。
先に俺が狩ってみせるか。今の季節なら繁殖期だから、卵も何個か確保できそうだ。産卵のせいで脂のノリはイマイチになる。とはいえ焼き料理に向かないほどで硬くもない。鶏冠の色つやから元気そうな個体を選ぶ。
そうこうしている間に、ボス的な雄鶏が襲ってきた。
「ケーッ!!」
バサリと羽を広げて跳ぶと、鶏にしては太い足を突き出した。
ギラリと爪が光を反射する。
――一閃。
横に身体を交わしつつ、すれ違いざまに首を刎ねた。
「コケーッ!!」
絶叫に似た雄叫びを上げた直後、全力疾走を始める。切断面から血を迸らせつつ首無し鶏が走り回るのは、さながら血まみれホラーだ。
しばらく走り回った後、パタリと横に倒れた鶏を収納袋に放り込む。大きさ的に一羽あれば二人分の食材として十分だが、あと二、三羽は狩っておきたい。ダンジョン内では何が起きるかわからないのだから。特に食糧は多目に持ち歩いておきたい。支度の時間が取れなかったときは。
「その……」
ニールが物言いたそうに近寄ってきた。手にしている獲物は傷だらけだった。
「不味そうだな」
羽根の上からではわからないが、内臓を傷つけていたら肉全体に臭みが回っていそうだ。
「腹を傷つけないなら、首を落とすのが一番良いぞ」
「しかしだな……あの走り回るのが」
よく見るとちょっとばかり顔色が悪い。D級になりたての、初めて魔鶏を狩る若者のようだ。
「血抜きになる。それに不必要に肉を傷つけず状態が良いんだ。怖いとかかわいそうとか言うなよ? 美味しく食べられない方が哀れだ」
命を食うのだ。出来る限り美味く食べるのが供養というものだろう。
「だが、走り回るのは苦しいからじゃ……」
「ただの反射だ。痛みを感じる脳ミソがないんだ。苦しいはずがあるか」
まだ少しグチグチ言いたそうだったが、できるだけ美味く狩れと言うと諦めたようだった。
「手早く血抜きができるんだ。走り回ってくれてありがたいと思え」
小さく嘆息する。お年頃の女の子じゃないんだぞと言いたい。
もっとも冒険者のお嬢さんたちは、そこら辺の男どもより肝が据わっているから、自分たちをか弱い存在に置くなと怒りそうだが。
「イイ歳したおっさんが涙目になっても、かわいくないから止めておけ」
そう言うに留め置く。
それぞれ五羽ほど仕留めた。食糧としては十分過ぎる。
狩ったうちの一羽だけ手早く解体してから、魔鶏の生息地を後にした。
卵も二〇個ほど回収してある。今回の五日ほどの潜行には十分な食料だろう。
「サクサク行こうか」
八〇層あるダンジョンの上層階は、ようやく魔獣討伐ができるようになった駆け出し冒険者の狩場だ。
ニールはD級とはいえ実力はC級に達する。四層あたりで時間を潰し過ぎるのは時間の無駄、一気に中層階まで下りても問題ない。
途中、八階層目で赤猪、十一階層で黒猪に遭遇。取敢えず手本を見せて、その後同じように狩って終わった。
十五層、通称『砂漠階』に到着する。砂漠とはいえ砂まみれかといえばそうではなく、岩肌が目立つ階層だ。
南国を思わせる湿気が高くて気温の高い階層を抜けると、砂漠のように乾燥しつつも気温の高い階層が続く。
「さっさと抜けようぜ」
「そうだな、蠍に襲われるのは面倒だ」
ダンジョンで育つ魔獣は魔素の影響か大型化しやすい。地上のように靴の中や服の間に隠れるようなことはサイズ的にないが、いないとまでは言い切れなかった。その上、強毒性の種が多くて倒すのに神経を使う。その上、肉は毒の味が混じり苦くて不味いのだ。
討伐経験を積むのは悪くないが、限られた日数しかないのなら、もっと下層で金になる魔獣を狩った方が良い。
ジリジリと太陽が照り付けるような――実際に太陽はなく、空に見えるだけのただの天井でしかないはずなのに――中、俺たちは下の階層へと進む。
だが――。
「出やがったか」
面倒臭いと言いたげにニールが呟いた。
目の前には錆の浮いたような、小汚い色の甲殻を持つ魔獣がいた。尾が威嚇するようにそそり立つ。金属蠍だ。
――デカいな。
通常は子犬ほどの大きさだが、目の前のヤツは五割増し。変異体というほどではないが、厄介だと思える程度には大き過ぎだ。
「尾針と最後の節は傷つけるなよ、毒腺は素材として価値がある」
面倒臭さを金に換算する。買い取り額は重量ベースだ。難易度や希少性から基礎額が決定し重量を掛ける。大きければ大きい個体ほど、報酬が多くなる。
「猛毒持ちだ、気を引き締めていけ!」
金属蠍に刺されると動けなくなる。全身が痺れて動けなくなる神経毒を持つのだ。かなり強力で放置すると心臓や呼吸が止まるほどだが、上手に使えば神経痛なんかの鎮痛剤として有用だ。
「蠍らは頭を潰しても死なないから嫌なんだ」
「脳ミソが小さいからな、脚や体節を切らないと動きが止まらん。だが火や熱には弱いからな、焼きながらだと楽だぞ」
ニールのボヤキに、倒し方が悪いとツッコむ。
収納袋の中から小剣ほどの長さの松明を取り出すと、種火から火を点けた。横を見るとニールは剣を構えたままだった。火を点けられるような棒など持ってないのだろう。
「これを使え」
着火前の松明を渡す。私物だが冒険者ギルドで用意している装備パックには入ってないから仕方がない。剣や槍、弓といった一般的な武器は一通り入っていても、それ以外のものはないのだ。
――取敢えずハサミを狙うか。
尾針の次に脅威になるハサミを無効化すべく動いた。金属蠍のハサミはさほど力がないとはいえ、挟まれて動きが止まったら刺される。
ニールも俺の意図を察したらしく、蠍の反対側に回り込んだ。
どちらを先に攻撃するか蠍が逡巡した直後、両のハサミが宙を舞いドゥと地面を響かせて落ちた。肉が焼けた臭いが周囲に漂う。
「――!!」
カチカチと攻撃音が響く。脚と甲殻を擦り合わせているのだ。尾が一段と高く持ち上がった。まるで蛇が鎌首をもたげたように。
怒り狂った金属蠍が尾を左右に揺らしながら、俺の方に突進してくる。
自身にバフをかけながらタイミングを合わせ、尾が反対側に揺らいだ瞬間、まとめて二本の脚を切り離す。といっても剣ではなく松明で引きちぎるような感じだが。同時に傷口を焼き、付け根にある神経節を潰す。
早めに尾針を切り離したいが、猛毒だけに安易に近づけない。脚の半分近くを失ってもそれなりに素早く走った。
その上、尾は健在でデカい図体に似合わず動きが早い。毒を持っていなくても十分過ぎる脅威だった。
八本の脚をすべて切り終わった後、後ろに回り込んで尾節を狙い剣を差し込んだ。脚と違ってさすがに松明で叩き斬るのは難しい。
暴れながら刺そうと尾を動かすが、それよりも早く落とした。
俺が尾に回り込んでいる間に、ニールが頭を落としている。
それでも絶命せずに蠢いているが、じきに活動を停止するだろう。
「一緒に倒した場合はどうなるんだったっけ?」
「共同討伐扱いで折半だ。わかるように共同討伐用の収納袋に仕舞ったぞ。後で揉めなくて済むだろう?」
今回、俺が持っている収納袋は四つ。一つは私物、残り三つはギルドの備品だ。自分が討伐した魔獣などの保管用、 共同討伐した魔獣保管用、残りの一つが冒険者セット入りで依頼人用。講習を受ける冒険者の中には、容量の少ない収納袋しか持ってないこともある。そんな中、講習中に使えるよう用意しているのだ。
「肉は持っていかないのか?」
行こう、と先に進もうと声をかけたとき質問が返ってきた。
「食べられなくはないが、毒の味がまわって苦いし不味いからな。査定も出ないし、邪魔な荷物になるだけだから置いていく。回収するのは毒腺だけだ」
尾針と最終節だけなら、大した荷物にならない。
「そうなのか……食えるのを捨てるのか」
「勿体ないかもしれないが、ある程度マシな物を食っておいた方が安全だしな」
少し考え込んだようだったが、それ以上の言葉は返ってこなかった。
夜明けと同時に町を出た俺たちは、一気にダンジョンを下りた。
地下なのに、なぜかダンジョンには昼夜がある。地上と連動していて、昼間は明るく夜になると暗くなる。黄昏時に周囲が朱に染まるのまで一緒。理由はわからないが、実は出入口以外に地上と繋がる穴があって、そこから陽の光が入ってくるんじゃないかという説が有力だ。
「取敢えず今夜の夕飯を狩ろうか」
昨日、飯は現地調達するから装備を整えていくように指示してある。所持金の少ないニールに、支度を万全にしろと言っても無理だからだ。一応、ギルドから冒険者セットとして武器や回復ポーションの入った収納袋を持ってきているが、どれも市場価格より二割ほど高めだから、非常用の扱いだ。
三層目には魔鶏の生息地がある。
鶏という生き物は普段不仲でも、外部からの脅威には集団で立ち向かう上に自分たちより弱いと思ったら、執拗に攻撃してくる性格の悪さがあった。
コカトリスほど巨大ではないとはいえ、頭の位置が腰よりも高く鶏としてはかなり大型の魔鶏だ。図体のデカさに似合わず俊敏な上、体重を乗せた蹴りはそれなりに脅威ではある。
「自己調達だ。自分が食いたくないような、酷い獲物とならないよう考えて狩れ」
個人講義とはいえ、E級からD級になりたての冒険者が狙う獲物程度は、指導せずとも問題ないだろうと言いおく。
実際、自身にバフをかければ集団で襲われても大した被害は出ない。そもそもの話、素早いとはいえC級以上のベテラン冒険者にとっては遅く感じる動きだ。蹴りを避ける程度は朝飯前、毒を持たず魔法攻撃もない単純な物理攻撃だけの魔獣など、敵でも何でもなかった。
ニールの動きを目の端で追いつつ、適当な獲物を探す。だがこちらをちらちら見るばかりで、一向に倒す気配がなかった実際に狩るのは、俺を見てからにする心算らしい。
――仕方ない。
先に俺が狩ってみせるか。今の季節なら繁殖期だから、卵も何個か確保できそうだ。産卵のせいで脂のノリはイマイチになる。とはいえ焼き料理に向かないほどで硬くもない。鶏冠の色つやから元気そうな個体を選ぶ。
そうこうしている間に、ボス的な雄鶏が襲ってきた。
「ケーッ!!」
バサリと羽を広げて跳ぶと、鶏にしては太い足を突き出した。
ギラリと爪が光を反射する。
――一閃。
横に身体を交わしつつ、すれ違いざまに首を刎ねた。
「コケーッ!!」
絶叫に似た雄叫びを上げた直後、全力疾走を始める。切断面から血を迸らせつつ首無し鶏が走り回るのは、さながら血まみれホラーだ。
しばらく走り回った後、パタリと横に倒れた鶏を収納袋に放り込む。大きさ的に一羽あれば二人分の食材として十分だが、あと二、三羽は狩っておきたい。ダンジョン内では何が起きるかわからないのだから。特に食糧は多目に持ち歩いておきたい。支度の時間が取れなかったときは。
「その……」
ニールが物言いたそうに近寄ってきた。手にしている獲物は傷だらけだった。
「不味そうだな」
羽根の上からではわからないが、内臓を傷つけていたら肉全体に臭みが回っていそうだ。
「腹を傷つけないなら、首を落とすのが一番良いぞ」
「しかしだな……あの走り回るのが」
よく見るとちょっとばかり顔色が悪い。D級になりたての、初めて魔鶏を狩る若者のようだ。
「血抜きになる。それに不必要に肉を傷つけず状態が良いんだ。怖いとかかわいそうとか言うなよ? 美味しく食べられない方が哀れだ」
命を食うのだ。出来る限り美味く食べるのが供養というものだろう。
「だが、走り回るのは苦しいからじゃ……」
「ただの反射だ。痛みを感じる脳ミソがないんだ。苦しいはずがあるか」
まだ少しグチグチ言いたそうだったが、できるだけ美味く狩れと言うと諦めたようだった。
「手早く血抜きができるんだ。走り回ってくれてありがたいと思え」
小さく嘆息する。お年頃の女の子じゃないんだぞと言いたい。
もっとも冒険者のお嬢さんたちは、そこら辺の男どもより肝が据わっているから、自分たちをか弱い存在に置くなと怒りそうだが。
「イイ歳したおっさんが涙目になっても、かわいくないから止めておけ」
そう言うに留め置く。
それぞれ五羽ほど仕留めた。食糧としては十分過ぎる。
狩ったうちの一羽だけ手早く解体してから、魔鶏の生息地を後にした。
卵も二〇個ほど回収してある。今回の五日ほどの潜行には十分な食料だろう。
「サクサク行こうか」
八〇層あるダンジョンの上層階は、ようやく魔獣討伐ができるようになった駆け出し冒険者の狩場だ。
ニールはD級とはいえ実力はC級に達する。四層あたりで時間を潰し過ぎるのは時間の無駄、一気に中層階まで下りても問題ない。
途中、八階層目で赤猪、十一階層で黒猪に遭遇。取敢えず手本を見せて、その後同じように狩って終わった。
十五層、通称『砂漠階』に到着する。砂漠とはいえ砂まみれかといえばそうではなく、岩肌が目立つ階層だ。
南国を思わせる湿気が高くて気温の高い階層を抜けると、砂漠のように乾燥しつつも気温の高い階層が続く。
「さっさと抜けようぜ」
「そうだな、蠍に襲われるのは面倒だ」
ダンジョンで育つ魔獣は魔素の影響か大型化しやすい。地上のように靴の中や服の間に隠れるようなことはサイズ的にないが、いないとまでは言い切れなかった。その上、強毒性の種が多くて倒すのに神経を使う。その上、肉は毒の味が混じり苦くて不味いのだ。
討伐経験を積むのは悪くないが、限られた日数しかないのなら、もっと下層で金になる魔獣を狩った方が良い。
ジリジリと太陽が照り付けるような――実際に太陽はなく、空に見えるだけのただの天井でしかないはずなのに――中、俺たちは下の階層へと進む。
だが――。
「出やがったか」
面倒臭いと言いたげにニールが呟いた。
目の前には錆の浮いたような、小汚い色の甲殻を持つ魔獣がいた。尾が威嚇するようにそそり立つ。金属蠍だ。
――デカいな。
通常は子犬ほどの大きさだが、目の前のヤツは五割増し。変異体というほどではないが、厄介だと思える程度には大き過ぎだ。
「尾針と最後の節は傷つけるなよ、毒腺は素材として価値がある」
面倒臭さを金に換算する。買い取り額は重量ベースだ。難易度や希少性から基礎額が決定し重量を掛ける。大きければ大きい個体ほど、報酬が多くなる。
「猛毒持ちだ、気を引き締めていけ!」
金属蠍に刺されると動けなくなる。全身が痺れて動けなくなる神経毒を持つのだ。かなり強力で放置すると心臓や呼吸が止まるほどだが、上手に使えば神経痛なんかの鎮痛剤として有用だ。
「蠍らは頭を潰しても死なないから嫌なんだ」
「脳ミソが小さいからな、脚や体節を切らないと動きが止まらん。だが火や熱には弱いからな、焼きながらだと楽だぞ」
ニールのボヤキに、倒し方が悪いとツッコむ。
収納袋の中から小剣ほどの長さの松明を取り出すと、種火から火を点けた。横を見るとニールは剣を構えたままだった。火を点けられるような棒など持ってないのだろう。
「これを使え」
着火前の松明を渡す。私物だが冒険者ギルドで用意している装備パックには入ってないから仕方がない。剣や槍、弓といった一般的な武器は一通り入っていても、それ以外のものはないのだ。
――取敢えずハサミを狙うか。
尾針の次に脅威になるハサミを無効化すべく動いた。金属蠍のハサミはさほど力がないとはいえ、挟まれて動きが止まったら刺される。
ニールも俺の意図を察したらしく、蠍の反対側に回り込んだ。
どちらを先に攻撃するか蠍が逡巡した直後、両のハサミが宙を舞いドゥと地面を響かせて落ちた。肉が焼けた臭いが周囲に漂う。
「――!!」
カチカチと攻撃音が響く。脚と甲殻を擦り合わせているのだ。尾が一段と高く持ち上がった。まるで蛇が鎌首をもたげたように。
怒り狂った金属蠍が尾を左右に揺らしながら、俺の方に突進してくる。
自身にバフをかけながらタイミングを合わせ、尾が反対側に揺らいだ瞬間、まとめて二本の脚を切り離す。といっても剣ではなく松明で引きちぎるような感じだが。同時に傷口を焼き、付け根にある神経節を潰す。
早めに尾針を切り離したいが、猛毒だけに安易に近づけない。脚の半分近くを失ってもそれなりに素早く走った。
その上、尾は健在でデカい図体に似合わず動きが早い。毒を持っていなくても十分過ぎる脅威だった。
八本の脚をすべて切り終わった後、後ろに回り込んで尾節を狙い剣を差し込んだ。脚と違ってさすがに松明で叩き斬るのは難しい。
暴れながら刺そうと尾を動かすが、それよりも早く落とした。
俺が尾に回り込んでいる間に、ニールが頭を落としている。
それでも絶命せずに蠢いているが、じきに活動を停止するだろう。
「一緒に倒した場合はどうなるんだったっけ?」
「共同討伐扱いで折半だ。わかるように共同討伐用の収納袋に仕舞ったぞ。後で揉めなくて済むだろう?」
今回、俺が持っている収納袋は四つ。一つは私物、残り三つはギルドの備品だ。自分が討伐した魔獣などの保管用、 共同討伐した魔獣保管用、残りの一つが冒険者セット入りで依頼人用。講習を受ける冒険者の中には、容量の少ない収納袋しか持ってないこともある。そんな中、講習中に使えるよう用意しているのだ。
「肉は持っていかないのか?」
行こう、と先に進もうと声をかけたとき質問が返ってきた。
「食べられなくはないが、毒の味がまわって苦いし不味いからな。査定も出ないし、邪魔な荷物になるだけだから置いていく。回収するのは毒腺だけだ」
尾針と最終節だけなら、大した荷物にならない。
「そうなのか……食えるのを捨てるのか」
「勿体ないかもしれないが、ある程度マシな物を食っておいた方が安全だしな」
少し考え込んだようだったが、それ以上の言葉は返ってこなかった。
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