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第二十話 酔いに任せて
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見たことのない彼の嫌そうな表情に、一瞬の喜びは緊張に変わることもなく、背筋を冷たくしていった。
彼の目に映るのは、金髪パンクロッカーなのだから……
もう嫌われちゃったな。そう思いながら、投げやりに不良を演じた。
あれだけ、もう一度会いたかったのに、こんな見た目でいることと、彼を忘れようとして参加したことが、彼の目を見ることも出来なくしていた。
早く酔おう。こんなんじゃ、どうせもう会ってくれない。何やってるんだろう、私……
「あのー、お休み中、大変申し訳ないのですが。そろそろラストオーダーなんですけど……」
遠くから、ぼんやり聞こえる声に目を覚ましたらしい、私は寝ちゃってたんだ……
視界がボヤけて、グルグルと回っている。
あれ、彼と会ってたんじゃなかったっけ。また夢だっけ……
「……俺はー、まだ飲めますよー、姉御ー?」
「え?」
彼の声が真下から聞こえてきて、意識が急激に鮮明になり、絞るように彼の顔にピントが合った。
座る私の膝の上で、真っ赤な彼の顔が気持ち良さそうに寝ていた。
彼を膝枕してる事実に、胸が爆発しそうになる。
「あれ、ん?」
彼がゆっくりと目を開けて、半開きのまま見つめてくる。少し眉間にしわを寄せていた。
「やっぱり姉御ー、顔は可愛いんですから、その髪型勿体無いですよー」
私は理由も分からず悲鳴をあげて、彼を投げ飛ばすように払い除けた。
「お客様!大丈夫ですか?」
心配する店員の声で我に返り、倒れる彼に駆け寄った。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「んん。姉御、また力比べですか?今度は負けませんよお」
ゆらゆらと立ち上がろうとして、膝から崩れ落ちる彼を呆然と見ていた。
私は酔ってる間に彼と何を話したのだろう、姉御と呼ぶように言ったのだろうか。想像するだけで頭が重くなる。
「店員さん、大丈夫です。こいつ、俺の友達なんで、送ってきます」
友人の彼氏が、どこからか現れて、倒れる彼に肩を貸した。
「こいつが、こんな酔ってるの初めて見たよ。きっと、あなたのことを気に入ったんだと思いますよ」
少しはにかみながら言われて、ほっとするような暖かさが胸に灯った。
「姉御ー、また飲みましょうねー、ではではー。おい、お前どこ行ってたんだー?」
「はいはい、帰りましょうね」
千鳥足で部屋から見えなくなる彼を、しばらく見つめていた。
「あの、お会計お願いします」
「あ、お会計なら、もう頂いておりますので、大丈夫ですよ。御来店ありがとうございました」
「え、どなたが?」
「それは、その、内緒にしておいて下さいと言われましたので……」
一体誰だろう。
とりあえず、応援してくれた後輩に連絡を取ろうと、店を出てすぐに電話をかけた。
真っ暗な空に、眩しい満月が優しく笑っているような気がした。
「あ、もしもし?今終わったんだけどさ、ちょっと聞いてよ!」
今頃になって彼が、また飲みましょうって言ってくれたことや、再会出来たことが嬉しくて、自然と声のトーンが跳ね上がっていた。
「ちょっと待って下さい、店長。後ろに誰かいませんか?」
「え?」
刺すように冷静な後輩の声に、足首を掴まれているような寒気が走った。
「誰か。いますよね?」
「ちょ、ちょっと何言ってるの?」
「振り向けますか?」
「え……」
恐る恐る振り向くと、ピースをして馬鹿みたいに笑う後輩が立っていた。
彼の目に映るのは、金髪パンクロッカーなのだから……
もう嫌われちゃったな。そう思いながら、投げやりに不良を演じた。
あれだけ、もう一度会いたかったのに、こんな見た目でいることと、彼を忘れようとして参加したことが、彼の目を見ることも出来なくしていた。
早く酔おう。こんなんじゃ、どうせもう会ってくれない。何やってるんだろう、私……
「あのー、お休み中、大変申し訳ないのですが。そろそろラストオーダーなんですけど……」
遠くから、ぼんやり聞こえる声に目を覚ましたらしい、私は寝ちゃってたんだ……
視界がボヤけて、グルグルと回っている。
あれ、彼と会ってたんじゃなかったっけ。また夢だっけ……
「……俺はー、まだ飲めますよー、姉御ー?」
「え?」
彼の声が真下から聞こえてきて、意識が急激に鮮明になり、絞るように彼の顔にピントが合った。
座る私の膝の上で、真っ赤な彼の顔が気持ち良さそうに寝ていた。
彼を膝枕してる事実に、胸が爆発しそうになる。
「あれ、ん?」
彼がゆっくりと目を開けて、半開きのまま見つめてくる。少し眉間にしわを寄せていた。
「やっぱり姉御ー、顔は可愛いんですから、その髪型勿体無いですよー」
私は理由も分からず悲鳴をあげて、彼を投げ飛ばすように払い除けた。
「お客様!大丈夫ですか?」
心配する店員の声で我に返り、倒れる彼に駆け寄った。
「ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「んん。姉御、また力比べですか?今度は負けませんよお」
ゆらゆらと立ち上がろうとして、膝から崩れ落ちる彼を呆然と見ていた。
私は酔ってる間に彼と何を話したのだろう、姉御と呼ぶように言ったのだろうか。想像するだけで頭が重くなる。
「店員さん、大丈夫です。こいつ、俺の友達なんで、送ってきます」
友人の彼氏が、どこからか現れて、倒れる彼に肩を貸した。
「こいつが、こんな酔ってるの初めて見たよ。きっと、あなたのことを気に入ったんだと思いますよ」
少しはにかみながら言われて、ほっとするような暖かさが胸に灯った。
「姉御ー、また飲みましょうねー、ではではー。おい、お前どこ行ってたんだー?」
「はいはい、帰りましょうね」
千鳥足で部屋から見えなくなる彼を、しばらく見つめていた。
「あの、お会計お願いします」
「あ、お会計なら、もう頂いておりますので、大丈夫ですよ。御来店ありがとうございました」
「え、どなたが?」
「それは、その、内緒にしておいて下さいと言われましたので……」
一体誰だろう。
とりあえず、応援してくれた後輩に連絡を取ろうと、店を出てすぐに電話をかけた。
真っ暗な空に、眩しい満月が優しく笑っているような気がした。
「あ、もしもし?今終わったんだけどさ、ちょっと聞いてよ!」
今頃になって彼が、また飲みましょうって言ってくれたことや、再会出来たことが嬉しくて、自然と声のトーンが跳ね上がっていた。
「ちょっと待って下さい、店長。後ろに誰かいませんか?」
「え?」
刺すように冷静な後輩の声に、足首を掴まれているような寒気が走った。
「誰か。いますよね?」
「ちょ、ちょっと何言ってるの?」
「振り向けますか?」
「え……」
恐る恐る振り向くと、ピースをして馬鹿みたいに笑う後輩が立っていた。
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