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第十九話 陽だまりを求めて
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祭りが終わり、夏が終わっても、私は窓の外に彼を探していた。
「店長ー、予約の確認なんですけどー。あれ、また彼のこと探してます?」
「べ、別に!探してないわよ!」
「もー、本当に分かりやすいですよね。大丈夫、また会えますって」
「来年また金魚すくいやってるかな……」
「きっとやってますよ、その人は指輪してました?」
「してなかったけど、水仕事だから外してたのかも……」
そっか、小学校の先生なら、結婚してても全然おかしくないよね。
彼に会ってから二ヶ月経ち、私は諦めかけていた。
「店長、もう男はいらないとか言ってませんでしたっけ?」
後輩が目を細めて聞いてきて、少しの動揺に指先が震えた。
「そ、そんなこと言ってたっけ?」
「あー、とぼけちゃって。まあ店長が元気になれたなら、私も嬉しいですから良しとしましょう」
「あんた、たまに私の保護者みたいな立場で、物を言うわよね」
「私の、店長ですからね」
「はいはい」
「まあ、彼以外にも、素敵な男は沢山いますから、誰か紹介されたら会ってみて下さいね。今まで断ってきたんですから」
確かに、彼に会うまでは、恋愛感情は捨てていた。でも彼のせいで、彼氏が欲しいと、ガラスに反射する肩を落とした姿が、寂しがっている自分を映し出していた。
また、あんな陽だまりのような場所に行きたい。もう一度、誰かを信じて笑ってみたかった。
「でも……」
「もし、彼が運命の相手なら、意外と再開出来たりするかもですよ?」
「まさかー?」
「ふふ、世界は思ってるより狭いんですよ」
「……考えとく」
そして、その日の夜に友達から、彼の友達を紹介したい。という連絡が来た。
小学校で道徳を教えている先生なんだけど。という言葉に心が揺らいで、後輩に相談したんだ。
どうせ、彼では無いだろうし、諦めて他の素敵な人を探そうと、考えていたときだった。
友達もやけに強く勧めてくるので、断れなかったのが本当のところだけど……
でも、道徳を教えるような人が、無邪気にポイを改造しないよね、きっと違う人だよね。でも、もしかしたら……
そんな答えの出ない自問自答を繰り返して、もう諦めようと、結婚しているかもしれない人を思い続けるのが辛くて、私は彼を断ち切るためにも男性を紹介してもらったんだ。
それなのに、襖の向こうには彼が居てくれた。
私は嬉しくて、飛び跳ねたい気持ちだったけれど、口を半開きにして明らかに拒絶するような彼の表情に、今までの楽しい記憶は、襖の閉まる音と共に閉じられた。
「店長ー、予約の確認なんですけどー。あれ、また彼のこと探してます?」
「べ、別に!探してないわよ!」
「もー、本当に分かりやすいですよね。大丈夫、また会えますって」
「来年また金魚すくいやってるかな……」
「きっとやってますよ、その人は指輪してました?」
「してなかったけど、水仕事だから外してたのかも……」
そっか、小学校の先生なら、結婚してても全然おかしくないよね。
彼に会ってから二ヶ月経ち、私は諦めかけていた。
「店長、もう男はいらないとか言ってませんでしたっけ?」
後輩が目を細めて聞いてきて、少しの動揺に指先が震えた。
「そ、そんなこと言ってたっけ?」
「あー、とぼけちゃって。まあ店長が元気になれたなら、私も嬉しいですから良しとしましょう」
「あんた、たまに私の保護者みたいな立場で、物を言うわよね」
「私の、店長ですからね」
「はいはい」
「まあ、彼以外にも、素敵な男は沢山いますから、誰か紹介されたら会ってみて下さいね。今まで断ってきたんですから」
確かに、彼に会うまでは、恋愛感情は捨てていた。でも彼のせいで、彼氏が欲しいと、ガラスに反射する肩を落とした姿が、寂しがっている自分を映し出していた。
また、あんな陽だまりのような場所に行きたい。もう一度、誰かを信じて笑ってみたかった。
「でも……」
「もし、彼が運命の相手なら、意外と再開出来たりするかもですよ?」
「まさかー?」
「ふふ、世界は思ってるより狭いんですよ」
「……考えとく」
そして、その日の夜に友達から、彼の友達を紹介したい。という連絡が来た。
小学校で道徳を教えている先生なんだけど。という言葉に心が揺らいで、後輩に相談したんだ。
どうせ、彼では無いだろうし、諦めて他の素敵な人を探そうと、考えていたときだった。
友達もやけに強く勧めてくるので、断れなかったのが本当のところだけど……
でも、道徳を教えるような人が、無邪気にポイを改造しないよね、きっと違う人だよね。でも、もしかしたら……
そんな答えの出ない自問自答を繰り返して、もう諦めようと、結婚しているかもしれない人を思い続けるのが辛くて、私は彼を断ち切るためにも男性を紹介してもらったんだ。
それなのに、襖の向こうには彼が居てくれた。
私は嬉しくて、飛び跳ねたい気持ちだったけれど、口を半開きにして明らかに拒絶するような彼の表情に、今までの楽しい記憶は、襖の閉まる音と共に閉じられた。
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