そこにある愛を抱きしめて

雨間一晴

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幻影

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「私は、あなたのおかげで、あの人と出会えたんだよ。だからもう十分幸せにしてもらったでしょ。お願い、今度は私に手伝わせて」

「うう、店長ー。ありがとうございます……」

「とにかく、辛いかも知れないけれど、状況を教えて。何か手伝えることがあるかも知れないし。そもそも、どうして姉に取られたって分かったの?」

「彼のSNSから、姉に対してコメントしていたんですー!おかしいなと思って姉の方見たら『彼氏が出来ましたー』って写真が載ってて!信じられない!何なの!これです、これ!」

 後輩の携帯電話に映っていたのは、嬉しそうに笑う女と、少しぎこちなく苦笑いしている男だった。すぐに違和感を覚えた。強引に腕を組んでいる彼女は、茶色い肩までウェーブした髪に、ピンク色をしたフェルト生地のような、ロングコートを着ていてお洒落にしていた。そして完璧に作られた可愛い笑顔を見て、知らない人を見ているようだった。

「何かその、別人みたいだね、お姉さん……」

 後輩が勢い良く私を睨み付けた。その目は赤く血走っていて、寒気を覚えるほどだった。

「そうなんです!猫被ってるんですよ!あいつ!美容院に来たときが本性なのに、こんな女に取られるくらいなら、死んだ方がましです!コートも髪型も私と被ってるし、もう何から何まで嫌いなんです!あー!もう!死ねば良いんだ!あんな女!」

「お、落ち着いて!それで、彼とは上手くいってなかったの?」

「うう、それが……。やっぱり私が悪いんです、死んだ方が良いのは私なんです……」

 赤く沸騰したように怒った顔が、一瞬で凍り付いて、すすり泣く声をなぞるように丸まった背中を撫で続けた。

 改めて腕を組む二人を見ると、雲に紛れて滲むように、大きな城が映っていた。
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