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第五十四話 幻影(2)
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「ここって、あの遊園地だよね?」
「うう、そうですよ……」
「お姉さんが彼をデートに誘ったのかな?」
「……違うんです、彼と姉は同級生だったんです。大学のゼミが一緒だったとかで。それで同窓会みたいな感じで、久しぶりに友達と会うだけって言ってたのに……」
「ここには、彼から告白されちゃったって書いてあるけど。あ、ごめん。そういうつもりじゃなくて……」
後輩の顔が、このままだと潰れて元に戻らなくなりそうで心配だった。苦しそうに眉間に皺を寄せ過ぎている。
「……絶対に嘘です。これは強がりなんかじゃないです。あいつは自分を良く見せることしか考えていません、きっと上手いこと彼を誘導したに違いありません。美容院に来たあいつが本当の顔なんですから」
「でも、結果として付き合っちゃったのなら、彼は浮気したことになっちゃうよね。あなたという、こんなに素敵な彼女が居ながら。そうだったら私、許せない……」
「私が別れようって言っちゃったんです。そんなつもりじゃなかったのに。私のせいなんです。私なんか……」
後輩は肩にかかる髪の毛を鷲掴みにしていた。下に向けて引き千切るように痙攣して、ブチブチと鈍い音を立てた。
「うう、そうですよ……」
「お姉さんが彼をデートに誘ったのかな?」
「……違うんです、彼と姉は同級生だったんです。大学のゼミが一緒だったとかで。それで同窓会みたいな感じで、久しぶりに友達と会うだけって言ってたのに……」
「ここには、彼から告白されちゃったって書いてあるけど。あ、ごめん。そういうつもりじゃなくて……」
後輩の顔が、このままだと潰れて元に戻らなくなりそうで心配だった。苦しそうに眉間に皺を寄せ過ぎている。
「……絶対に嘘です。これは強がりなんかじゃないです。あいつは自分を良く見せることしか考えていません、きっと上手いこと彼を誘導したに違いありません。美容院に来たあいつが本当の顔なんですから」
「でも、結果として付き合っちゃったのなら、彼は浮気したことになっちゃうよね。あなたという、こんなに素敵な彼女が居ながら。そうだったら私、許せない……」
「私が別れようって言っちゃったんです。そんなつもりじゃなかったのに。私のせいなんです。私なんか……」
後輩は肩にかかる髪の毛を鷲掴みにしていた。下に向けて引き千切るように痙攣して、ブチブチと鈍い音を立てた。
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