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第五十九話 幻影(7)
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「寂しい思いをさせちゃってごめんね……」
「それは私の台詞なんです!謝るのは私なんです!私は店長に彼の連絡先を教えなかった!ううん、それだけじゃない。彼と連絡を取っていたんですよ、彼氏と喧嘩しているとはいえ、少し好きになっちゃんたんです!」
大きな城を背景にして、優しい笑顔の彼と後輩が腕を組んでいる。そんなイメージが頭に打ち付けられて何も言えなかった。
「でも、二ヶ月経っても店長は寂しそうにしてて……。いつも窓の外に彼を探していて!私のことを、あんまり見てくれなくなって!店長に連絡先を教えてあげなきゃ、自分だけ浮気みたいなことをして、店長の好きな人まで取ろうとして!私は結局あの姉と同じなんです!店長も彼氏のことも大好きなのに、裏切ってばかりで!最低で!自分勝手で!言い訳ばかり!こんな奴は死んだ方がいいんです……」
「……大丈夫だから、そんなこと言わないで。私は、あなたに居て欲しい。同じ人を好きになったとしても、あなたのことも好きだもの、だからもう泣かないで」
「……駄目なんですよ、もう。何もかもが駄目なんです。私は寂しそうな店長と、卑怯な自分に耐えれなくなって、店長と共通の友達と、その彼氏に手伝ってもらいました。金魚すくいのお兄さんが、その彼氏と友人だったんですよ……」
「……あなたが、彼と会わせてくれたんだね。自分も大変なのに、ありがとうね。何も知らずに浮かれちゃって、ごめんね。あなたの気持ちも考えずに」
「感謝なんてしないで下さい。もっと早く店長に教えるべきなんです。私は独りぼっちになりたくなかった。ただそれだけの理由で、店長にまで寂しい思いをさせちゃって……」
「ううん、それでも、あなたは私と彼を会わせてくれたじゃない。そんなに自分を責めないで」
「……店長、もう、さよならですね……」
「……え?」
自分を責めるように地面に向かって首を振り、涙を落とし続けていた彼女が顔を上げた。とても寂しそうに、それでいて、どこか幸せそうな笑顔だった。
「それは私の台詞なんです!謝るのは私なんです!私は店長に彼の連絡先を教えなかった!ううん、それだけじゃない。彼と連絡を取っていたんですよ、彼氏と喧嘩しているとはいえ、少し好きになっちゃんたんです!」
大きな城を背景にして、優しい笑顔の彼と後輩が腕を組んでいる。そんなイメージが頭に打ち付けられて何も言えなかった。
「でも、二ヶ月経っても店長は寂しそうにしてて……。いつも窓の外に彼を探していて!私のことを、あんまり見てくれなくなって!店長に連絡先を教えてあげなきゃ、自分だけ浮気みたいなことをして、店長の好きな人まで取ろうとして!私は結局あの姉と同じなんです!店長も彼氏のことも大好きなのに、裏切ってばかりで!最低で!自分勝手で!言い訳ばかり!こんな奴は死んだ方がいいんです……」
「……大丈夫だから、そんなこと言わないで。私は、あなたに居て欲しい。同じ人を好きになったとしても、あなたのことも好きだもの、だからもう泣かないで」
「……駄目なんですよ、もう。何もかもが駄目なんです。私は寂しそうな店長と、卑怯な自分に耐えれなくなって、店長と共通の友達と、その彼氏に手伝ってもらいました。金魚すくいのお兄さんが、その彼氏と友人だったんですよ……」
「……あなたが、彼と会わせてくれたんだね。自分も大変なのに、ありがとうね。何も知らずに浮かれちゃって、ごめんね。あなたの気持ちも考えずに」
「感謝なんてしないで下さい。もっと早く店長に教えるべきなんです。私は独りぼっちになりたくなかった。ただそれだけの理由で、店長にまで寂しい思いをさせちゃって……」
「ううん、それでも、あなたは私と彼を会わせてくれたじゃない。そんなに自分を責めないで」
「……店長、もう、さよならですね……」
「……え?」
自分を責めるように地面に向かって首を振り、涙を落とし続けていた彼女が顔を上げた。とても寂しそうに、それでいて、どこか幸せそうな笑顔だった。
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