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第八十七話 傷物(26)
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「痛くない?私は大丈夫だから、先に流しておいで」
「痛いのは慣れちゃいました、今は店長と一緒にいれるのが嬉しいんです。傷のことを言ったら、彼と同じように拒絶されると思っていましたから……」
「……彼のことは乗り越えられそう?」
「……分かりません」
「今度は、辛くなったら遠慮なく相談してね。その肩にいる私は、御守りのような物。私同様いつも、あなたを見守っているわ。だから、傷付けちゃだめだよ」
「……はい。元彼の名前も早く消したいですしね。はーあ、あんな女のどこが良いんだろ」
「……ねえ、約束よ。一人のときも、忘れないでね。どうしても辛くて、私にも相談しづらいときは、病院の先生に言うんだよ。仕事を休む理由なんて言わなくて良いから、良いわね?」
「ふふ、お母さんみたいですね」
「もう、真面目に心配しているのよ」
「ありがとうございます、店長は優しすぎます。本当に良いお母さんになると思いますよ、店長の子に産まれたかったな」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、分かったらほら、さっさと流して来なさい。ちゃんと治療してもらうんだからね」
「はーい」
「ふふ。全く、調子良いんだから」
後輩の姿が浴室に消えたあと、糸を切られたように全身から力が抜けて、洗面所に崩れ落ちた。
「痛いのは慣れちゃいました、今は店長と一緒にいれるのが嬉しいんです。傷のことを言ったら、彼と同じように拒絶されると思っていましたから……」
「……彼のことは乗り越えられそう?」
「……分かりません」
「今度は、辛くなったら遠慮なく相談してね。その肩にいる私は、御守りのような物。私同様いつも、あなたを見守っているわ。だから、傷付けちゃだめだよ」
「……はい。元彼の名前も早く消したいですしね。はーあ、あんな女のどこが良いんだろ」
「……ねえ、約束よ。一人のときも、忘れないでね。どうしても辛くて、私にも相談しづらいときは、病院の先生に言うんだよ。仕事を休む理由なんて言わなくて良いから、良いわね?」
「ふふ、お母さんみたいですね」
「もう、真面目に心配しているのよ」
「ありがとうございます、店長は優しすぎます。本当に良いお母さんになると思いますよ、店長の子に産まれたかったな」
「何馬鹿なこと言ってるのよ、分かったらほら、さっさと流して来なさい。ちゃんと治療してもらうんだからね」
「はーい」
「ふふ。全く、調子良いんだから」
後輩の姿が浴室に消えたあと、糸を切られたように全身から力が抜けて、洗面所に崩れ落ちた。
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