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第九十三話 霞んだ桜色
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「もう!店長まで笑ってる!」
「ごめんごめん、お爺さんが心配していなかったから嘘泣きなのかなって」
「知ってて謝らせたんですか!」
「あはは、ごめんって」
「もう!」
私に向かって唸りながら肩を落とす後輩を覗きながら、少女はわざとらしく後輩の真似を始めた。
「手が痛む?ごめん、本当にごめんね……」
「真似すんな!」
「きゃー!」
走り回る彼女達を見守りながら、改めて広い部屋だと思っていた。二十畳はあるだろうか、寝室というよりリビングにベットを置いたような部屋だった。
真っ白な壁はキャンパスにされていて、精巧な油絵で大きな桜が描かれていた。両手を広げるよりも大きな桜は白、ピンク、赤と、花弁一枚一枚が生きているようだった。
「お姉ちゃんなら、あなたも壁に書いてもらわないとね」
真ん中に描かれた桜を中心にして、右には美しい男女が結婚式を挙げていた。桜色したドレスはフリルの繊維まで見えるようだった。
そして、左にはきっと、少女が描いたのだろう。小学生の落書きのような、それでも微笑ましく両親に挟まれて、手を繋いでいる女の子が描かれていた。弧を描く一本線の目と、三角形の口は嬉しそうに笑っていた。
「ごめんごめん、お爺さんが心配していなかったから嘘泣きなのかなって」
「知ってて謝らせたんですか!」
「あはは、ごめんって」
「もう!」
私に向かって唸りながら肩を落とす後輩を覗きながら、少女はわざとらしく後輩の真似を始めた。
「手が痛む?ごめん、本当にごめんね……」
「真似すんな!」
「きゃー!」
走り回る彼女達を見守りながら、改めて広い部屋だと思っていた。二十畳はあるだろうか、寝室というよりリビングにベットを置いたような部屋だった。
真っ白な壁はキャンパスにされていて、精巧な油絵で大きな桜が描かれていた。両手を広げるよりも大きな桜は白、ピンク、赤と、花弁一枚一枚が生きているようだった。
「お姉ちゃんなら、あなたも壁に書いてもらわないとね」
真ん中に描かれた桜を中心にして、右には美しい男女が結婚式を挙げていた。桜色したドレスはフリルの繊維まで見えるようだった。
そして、左にはきっと、少女が描いたのだろう。小学生の落書きのような、それでも微笑ましく両親に挟まれて、手を繋いでいる女の子が描かれていた。弧を描く一本線の目と、三角形の口は嬉しそうに笑っていた。
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