そこにある愛を抱きしめて

雨間一晴

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第九十九話 霞んだ桜色(7)

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「よし、お待たせしちゃったね。こんな物しか出来なかったけれど、素敵な出会いに乾杯ということで」

 彼はピンク色のコップを軽く持ち上げて、少し照れ臭そうに宣言してくれた。

「かんぱーい!」

「ちょっと、そんな勢いよくやったら溢れるでしょ!」

「お姉ちゃんもちゃんと乾杯しなきゃ駄目なんだよ!」

「良いから、ちゃんとコップ持ちなさい」

「先生はちゃんと乾杯してるよ!」

 こちらを見て少し驚いた顔をしてから、彼女も照れ臭そうにコップを持ち上げた。四つのピンク色したコップが宙に浮いて、壁に描かれた大きな桜に滲んでいくようだった。

「よし、頂こうか。お口に合うと良いけれど」

 筋の通った細長い鼻を掻きながら、スプーンを持って私達が手を付けるのを待ってくれている気がした。

「凄く美味しそうです、こんな物だなんてとんでもないですよ。ありがたく頂きます」

 初対面の人の家、しかもベッドの上でご飯をご馳走になっているなんて、まだ夢を見ているようで、浮ついた気分のままスプーンに手を伸ばした。

「私が食べさせてあげる!」

 もう口にケチャップを大量に付けたまま、少女は木製の椅子を蹴飛ばすように脱出して、慌てるように駆け寄ってきた。

「へ?」

 手は問題なく動かせるし、自分で食べれるのだけれど、少女の真剣な眼差しに押されてしまって、変な驚きの声しか出せずに固まってしまった。

「こら!店長は自分で食べれるから大丈夫でしょ!」

「駄目なの!絶対に私が食べさせてあげなきゃ!」

「もう、布団にケチャップが付いちゃうでしょ、席に戻りなさいよ」

「嫌!食べさせてあげなきゃ駄目なの!」

 後輩が言い聞かせながら少女の肩に手を伸ばしたとき、彼の声が嫌に響いた。

「すまない。やらせてあげて……。くれないか……」

 一段と低い声が、不安になる変な間を作りながら、後輩の手を止めさせた。心配になって彼を見てみると、何かに耐えるように俯いて、その手に握られたままのスプーンが震えていた。
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