そこにある愛を抱きしめて

雨間一晴

文字の大きさ
106 / 121

第百六話 霞んだ桜色(14)

しおりを挟む
「ありがとうね」

「て、店長!」

 思っていたよりも目の前にある後輩の顔が、どんどん赤くなっていき、こっちまで恥ずかしくなった。

「い!いつから起きてました?わわ!」

 軽い羽毛布団ごと後輩を包み込んだ。

「ふふ、今起きたってことにしておいてあげる」

「ちょ!ちょっと!苦しいですってば!どうしたんですか急に」

「可愛い後輩がやきもちを妬いていたから、つい可愛くなってね」

「あー!やっぱり起きていたんじゃないですか!酷いですよ!」

「ごめんごめん。ちゃんとあんたの前でもはしゃぐようにするからさ」

「もう!恥ずかしいから忘れて下さいよ!本当に坊主にしちゃいますよ!」

 布団に埋れてバタバタと両手を動かしている彼女の頭を、そっと撫でた。ゆっくり噛み締めるように。

「いつもありがとうね。必ず幸せになるのよ、約束だからね」

「はい、必ず幸せになります。もう吹っ切れました、あいつらに後悔させてやりますよ」

「ふふ、その意気よ。何だか包丁で刺し殺しちゃいそうな勢いだけどね」

「そんなことしませんよ!もう、飛び切り可愛くなってやりますよ!そして店長や先生より凄い美容師になってやります!もう怒りました!」

「うんうん、あんたなら本当になれるかもね。怒らせると恐いし、ふふ」

「ええ、私はやりますよ!見てて下さいね!」

「うん、元気になって良かった。応援しているからね、何があっても私は味方だから、頑張るのよ」

「はい!」

 窓から差し込む光が、気付けば西日となって部屋をオレンジ色に染めていた。黄金色に輝く壁の桜が、酷く綺麗で目眩がしそうなくらいだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

処理中です...