そこにある愛を抱きしめて

雨間一晴

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第百十九話 霞んだ桜色(27)

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「え?」

 聞き間違いだと思った。何の感情も込もっていない無機質な声が通り抜けて、寒気だけが私の肩を固くさせた。

「あの子は、あの公園に呪われてしまっているんだよ」

「呪われてるって、何があったんですか?」

 後輩が私の横で少女を見つめながら聞いた。少女は公園に入らずに、辺りを眺めるように見回していた。

「ううん、きっと僕もかな……。あの公園は、あの子の父親が作り上げてくれたんだよ」

「お父さんが……」

「あの公園はね、僕の妻がデザインしたんだよ。そして、娘達が引き継いで完成させてくれたんだ。そして、孫のあの子だけが残ってしまった……」

 あの子だけが残ってしまった。その言い方に彼自身は存在しないような冷たさがあった。
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