17 / 26
第2章 勇者選別
第17話 魔界の代弁者
しおりを挟む広間が一瞬にして闇に呑まれた。
大聖堂の大理石の床は影に覆われ、光はすべて吸い込まれるように消えている。
空間は歪み、壁も天井も見えない。ただ冷たい風だけが吹き抜けている。
その中心に、鎌を携えた黒影の男が立っていた。
影の揺らめきが床から這い上がり、彼の足元を蠢かせている。
(……あいつの気配、前にもどこかで感じたことがあるな)
仮面の奥で俺は眉をひそめた。
「お前、ソウマがゼインと戦ってた時……見てたろ」
黒影の男はかすかに口元を歪める。
「観測していただけダ。……ダガ今日は、それ以上のものを見せてもらおう」
⸻
鎌がうなりを上げた。黒い残光が閃き、影が槍のように突き出される。
「冥影葬槍!」
鋭い影の槍が俺の胸を狙う。
俺は足を叩きつけ、大地を突き上げた。
「大地震槍!」
石の槍が床を割って飛び出し、影の槍を打ち砕く。破片が宙に舞い、闇と光の衝突音が空間を震わせた。
「……ほう。やはりオマエ、ただのニンゲンではないな」
「お前には言われたくないけど」
⸻
「ナラバ動きを封じる。虚無連鎖!」
漆黒の鎖が虚空から現れ、俺の腕と足を絡め取ろうと迫る。
俺は剣を振り抜き、風を裂いた。
「効かねえな――嵐断裂!」
暴風が吹き荒れ、鎖を粉砕する。風圧に煽られ、ザガドのローブがはためいた。
「ツヨい……ダガ」
鎌に死の波動が収束する。
「シュウエンを喰らえ――黒葬刀!」
虚無の光を帯びた斬撃が、空間そのものを断ち切りながら迫る。
骨まで冷えるような殺意。だが俺は両手を広げてから手を近づけて、空気を震わせた。
「天地咆哮!!」
天地が同時に咆哮するような轟音。大地が揺れ、空気が爆ぜる。
死の波動は掻き消され、影の男が後方へ吹き飛んだ。
テーレは煽るように言った
「どーよ?」
影の男はよろめきながら
「なかナカ....やるナ...」
⸻
影が崩れ落ちる――そう思ったが、まだ立っていた。
その顔には笑みが浮かんでいる。
「……驚いた。我を、ここまで圧する者がいようとは」
黒い霧がその身を覆い、鮮明に形を表し始めた。
だが全身は黒に覆われ姿は見えない。
「我は魔界の代弁者、ザガド。勇者誕生が近いと聞き其の者を見にきた……が思わぬ収穫を得た。お前という存在だ」
「代弁者?」
「いずれわかる。その時まで……また観測を続けよう」
そう言い残し、ザガドは影に溶け、空間から消え去った。
⸻
静寂が訪れる。
俺は剣を下ろし鞘に納め、深く息を吐いた。
(魔の世界の代弁者……勇者だけじゃない。俺にまで興味を持ったか……)
―――
ザガドが影に消えた後、黒い霧は少しずつ薄れていった。
観客たちが声をあげる。
「おい!霧が晴れてきたぞ!」
「仮面の男が立ってる!勝ったのか?」
ソウマそしてユウマはまだ倒れていたが苦しそうに言った
「やったのか?」
「すげえな...はあはぁ..」
俺は拳を空に掲げピースして答えた。
会場からは歓声と安堵で泣いてる人で埋め尽くしていた
(バレてないことだしこの際、あの2人治してってやるか)
「大地命風」
ソウマとユウマに優しい風が流れ込み、生命力を吹き込む。直後に俺はスッとその場を立ち去った。
元気になったソウマがハツラツな声で
「お?あれ、なんか力が漲ってくるぞ!!
おい!ユウマ決着つけようぜ!!」
「あれ?そういえば仮面のあいつどこいった?強さの秘訣聞こうと思ったのに!」
ユウマはため息を吐きながら
「仕方ない。俺も急に力が戻ったからな。つけてやるよ決着」
――――
???「さてさて、私この話のナレーターのコマドと申します。影の男と仮面の男によって勇者候補の戦いが
途中で終わってしまいましたが、ここから1対1の真の勇者を決める戦いが幕をあけ...」
観客席にいるルミナスが大声で割って入ってきた。
「ちょっとまったぁぁぁあ!バカなの?会場もボロボロあんた達もボロボロなのにまだやるつもり!!?」
「また後日にしなさあああい!」
リアナが慌てた顔をしてルミナスを宥める。
「ま、まぁまぁリアナさん落ち着いてください!無事に終わったんですから!」
それを聞いた会場は笑いに包まれた。
その時テーレは...
(さて、どうやって戻ろうかな...)
こうして死の世界の代弁者ザガドとの戦いは一旦幕を閉じた――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる