扇屋の梟

音羽夏生

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前触れ

2

 気持ちの上では心底嫌で汚らわしい行為だったが、だらしない体は諾々と、蜻蛉から与えられる快楽の言いなりになってしまう。そのことも蜻蛉の強気を増長させる一因なのだと思うと、この状況を打開する術がまるで見つからず、梟は暗澹たる日々を過ごしていた。
 そんな状況で迎える、帝国最強騎士との試合。

(その相手に、女のように抱かれるなんて……)

 結局、帝国騎士団にも公募で集めた剣士にも、先代『青龍』である蜻蛉以上の使い手はいなかったのだ。
 模擬試合には毎回同行したが、騎士として名乗りを上げることはせず、梟の剣技を見極めるように観戦するだけだったのは、皇帝の隠し玉のような存在だったからだろう。
 梟の記憶にはないが、以前梟に敗れて以来、蜻蛉はその剣技に一層の磨きをかけて、雪辱の機会を待っていたに違いない。
 明日の試合相手が明かされたのは、今日。
 御前試合は夕刻からで、蜻蛉いわく「手加減した」交わりの影響が残るとは思えなかったが、前夜にまで手を出してくる男の神経が信じられない。

「明日の試合でおまえが勝てば、もう言い訳はきかない。おまえは青龍となり陛下のものとなる」

 枕を並べて、しかし腕枕で梟を背後から抱き込みながら、蜻蛉は、散々吸われて腫れぼったく赤い梟の胸の突起を指先で悪戯している。
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