扇屋の梟

音羽夏生

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躾 ※

13

「……許してっ……もう、だめ、……許して、椿ぃっ」

 救いを求めるように椿の名を叫んだ途端、首筋に鋭い痛みが走り、束の間梟は自分を取り戻す。
 のろのろと振り向くと、涙でぼやけてよく見えない視界に自分を犯す男の顔が映った。──蜻蛉だ。
 信じられない、と梟の目が見開かれる。自分に愛を囁いた男が、他の男たちの前で、他の男のために自分を抱くなど。

「どんな具合ですかね、お毒味役様?」
「……問題ない」
「よかったねえ梟、お毒味役様のお墨付きが出たよ」

 梟の絶望を取り残し、にっこりと笑う椿は、さらに残酷なことをさらりと口にした。

「ほら、あと二度お毒味役様から精を搾るんだよ」
「……え……?」
「花筒で男に仕える男は、男を三度達かせてからでないと自分が極めることは許されない。花街の掟だ。全身でお毒味役様にお縋りしてごらん、ご褒美はそれからだよ」

 皇帝の前で蜻蛉に抱かれろと、淫らに変貌した花筒であと二度絶頂へ導けと、椿は言うのだ。
 誰に抱かれても蜻蛉だけは嫌だと心が血を流すが、呂律の回らない舌は上手く言葉を紡げない。
 それに椿が──調教師が命じたなら、梟に逃れる術はないのだ。
 諦念と絶望、そして狂おしい放出の欲望に全身を染めながら、梟は懸命に花筒を操ろうと努めた。
 けれど、蜻蛉の精を浴びて痺れたようになっているそこは、勝手な収縮を繰り返すばかりで梟の言うことを聞かない。
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