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告白
10
『すべて』を失い、この世で手に入るものなど何もないという諦念の中に生きてきた梟を、この世で手に入らぬものなど何もない男が、度を超した執着で切望している。
笑えない冗談、何という運命の皮肉。
そう断じてみるものの、失ってなお欲していた人の腕のぬくもり、記憶の中のそれを遥かに凌ぐ肌の熱、そしてこれまで知らずにいたすべてを押し流すような情熱は、恐慌と背中合わせの、痺れるような心地好さを梟に注ぎ込むものだった。
未知の熱、未知のぬくもり。
今思えば、悪霊の呪いは梟にとって都合がよかったのかもしれない。
抗うことができずに流されているだけという状況と言い訳がなければ、いまだ戒律に縛られる精神は、穏やかに蜻蛉の腕に包まれることさえ許さなかっただろう。兄のようにも思っていた椿と違い、蜻蛉は最初の印象が最悪で、その後も警戒を要する相手だったのだから。
「もしかして、悪霊も蜻蛉の仕業か?」
今更陛下と呼ぶ気にもなれず、これまでと同じ口調で引っ掛かっていた問いを口にすると、何故か皇帝は嬉しそうに目許をゆるめた。
「皇家に伝わる秘薬だ。焚けば無色無臭の煙が体の自由を奪う。口にすれば意識も失い仮死となる。慣れた余には効かぬがな」
「そうして卑怯にも無抵抗の怪我人を嬲り、悪霊を恐れる相手を強姦したわけか」
「冷感症の己の所業を棚に上げて、人聞きの悪いことを言うでない」
笑えない冗談、何という運命の皮肉。
そう断じてみるものの、失ってなお欲していた人の腕のぬくもり、記憶の中のそれを遥かに凌ぐ肌の熱、そしてこれまで知らずにいたすべてを押し流すような情熱は、恐慌と背中合わせの、痺れるような心地好さを梟に注ぎ込むものだった。
未知の熱、未知のぬくもり。
今思えば、悪霊の呪いは梟にとって都合がよかったのかもしれない。
抗うことができずに流されているだけという状況と言い訳がなければ、いまだ戒律に縛られる精神は、穏やかに蜻蛉の腕に包まれることさえ許さなかっただろう。兄のようにも思っていた椿と違い、蜻蛉は最初の印象が最悪で、その後も警戒を要する相手だったのだから。
「もしかして、悪霊も蜻蛉の仕業か?」
今更陛下と呼ぶ気にもなれず、これまでと同じ口調で引っ掛かっていた問いを口にすると、何故か皇帝は嬉しそうに目許をゆるめた。
「皇家に伝わる秘薬だ。焚けば無色無臭の煙が体の自由を奪う。口にすれば意識も失い仮死となる。慣れた余には効かぬがな」
「そうして卑怯にも無抵抗の怪我人を嬲り、悪霊を恐れる相手を強姦したわけか」
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