英国紳士の恋の作法

音羽夏生

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英国紳士の恋の作法

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 そういう訳で、マイケルは毎朝ザ・ジャロルズに寄り、一流商社を動かす共同経営者としてジェイムズと打ち合わせを行い、それから本社に出社するのが日課となっていた。
 それにしても気になるのは、J&M商会の株価同様に社の未来に影響を及ぼす、ジェイムズの恋の行方だ。

「ところであんたとその想い人は、その後どうなってんだ?」

 意を決した今朝。
 業務報告を終え、机上に広げていた書類をまとめて鞄に突っ込むと、マイケルは何気ない風を装って訊ねた。

「まさかあんたがしくじるわけはないよな、もう落としたか?」
「…半落ちだ」

 書斎の椅子に体を預けたジェイムズは、難解なパズルに挑んでいるかのような顔で嘆息する。

「この私に愛されて何を思い悩むことがあるのか。さっぱり理解できん」

 傲慢な言い草だが、一理ある。世の人々が羨むすべてを持つ男に愛されたなら、階級差を乗り越える覚悟さえあれば、高水準の生活が保証され人生は安泰だろう。
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