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第四話 前編
犬神と雉本 2
しおりを挟むもし、自分に妹がいたら、姉のように寄り添ってあげられるのだろうか
口の中でなくなった飴を名残惜しみながら、犬神絵美は口の中の苺味を舌で探す
人生で後、どれぐらい食べられるか分からない
犬神里美が亡くなってから、さらに人間不信に拍車がかかり、気に入らないことでも、どんな手を使ってでも自分の思い通りにしてきた
利用できそうな男を見つけては、弱みを握るか小金を握らせる
それが通じなさそうな時は…
ただ、勘違いして恋愛感情をみせてくる男には、心を闇に突き落とすまで罵声を浴びさせ、時には男たちを使って圧力をかけ、二度と近付けさせなかった
これは組織ではなく、単に自分のわがままを聞いてくれる便利な男の集まりに過ぎない
ただ、男に頼りすぎると逆に弱みを握られかねない
自分の身は自分で守る
必要な護身術や格闘技を通いながら身につけてきた
「………」
着信が鳴る
まさか、と犬神絵美は画面を見ると、やはり猿渡慎吾からだ
「あんた、猿のくせに学ばないね」
犬神絵美はトーンを下げて応えた
「猿じゃなくて猿渡だから、犬神ちゃん」
「かけ直すなって言ったのに。話を聞かない男は嫌い」
「犬神ちゃんも犬なだけに、従順な性格がお好きなの?」
「バカにしてんの?」
「そっちから仕掛けてきたんじゃん。それより、さっき話が途中だったからさ、続きを話したくて」
犬神絵美はネットカフェの店員を叩きつけた光景を思い出す
そういえばあの店員、何か話があるって言ってたな
姉の言う通り、自分は相手の話を聞かずに行動してしまう
「もしも~し、犬神ちゃん?聞こえてる?」
「猿がキーキーうるさい」
「そんなに吠えないでよ~」
横断歩道で赤信号に引っかかる
高校の建物が視界に入る
「それより続きだけど。立花桃を知ってそうな奴は、御島崎高校の生徒ってさっき伝えたけど、名前をまだ言ってなかった。名前は亀田留衣(かめだ るい)、男子生徒、今は3年生。うちのグループ内でアルバイトをしてたらしいけど、立花桃が行方不明になってから仕事を辞めてる」
「その程度の偶然で繋がってるとは思えないんだけど」
「そんなこと言いながら、どこかの店を飛び出してもう高校へ向かってるんじゃない?」
「なんで分かるの?」
信号が青に変わる
「会計する男の声が聞こえたから。ご利用時間って聞こえたから、ネットカフェ?」
「だったら何なの」
「いいね~、犬神ちゃんとカップルの部屋に入ってさ、薄暗い空間で2人きりで、俺も楽しみたいなあ」
「あんたとは行かない」
「え、まさか彼氏いるの?」
「いないけど、あんたにチャンスは無いから。てか、無駄な話が多すぎ。立花と亀田の繋がりは確か?」
「確かだよ。亀田はリサイクルショップで働いていて、その店に立花桃が買取り客として店に来ているんだ。だから、この買取履歴で立花桃が引っかかってくれたんだよ。社員はよく覚えていた。かなりの量を持ってきて、それを高校生の亀田一人で対応したから、らしい。あまりに時間が掛かっていたから、その社員は2人の様子を遠くから見守っていて、かなり親しく話してたそうだよ。なんでも、連絡先まで交わしてるみたいでさ。その後も、毎日のように亀田は客の立花桃の話ばかり楽しそうにして。ところが、立花桃が行方不明になった辺りから、急に立花桃の話をしなくなり、突然、仕事を辞めたらしい」
気付けば、犬神絵美は御島崎高校の門の前に着いていた
「偶然っぽくないだろ?どうだ、この短時間でなかなかの情報。凄いだろ!猿渡グループの組織力と俺の権力!」
「そうね、ありがとう。ただ、あんたは話が長いから苦手」
一方的に通話を終える
自慢話を売りにする男は信用できない
姉、犬神里美から教わったことだ
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