傍観者を希望

静流

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居心地が悪そうなアルノルドを尻目に、たわいの無い話をしながらお茶を一頻り楽しんだ。

「今更だけど、アルノルドは何処まで把握しているんだ?」

「同期で色々と見られてしまいましてね。空間魔法や治癒等が使えることは知られています」

「意外にそれだけなんだ。もう少し突っ込んだところまで知っているかと思った」

「では、外しますか?私としてはお薦めですが」

「いや、構わない。先ずは、改めて名はセイ。精霊の子といわれる立場で、薬草園と治癒園の責任者。魔力はライ以上。何か質問は?」

絶句して、挙動不審に手が意味もなく動いている。
副長官という割には、肝が座ってない。

隣に腰掛けていたアルフレッドから冷ややかな視線を向けられ、更にビックっとして少々不憫な感じだ。

「コレは取り敢えず放っておいて、話を進めましょう。報告書の件かと思いますが違ったでしょうか?」

「相違ない。ライから誘われた後に受け取ったから、半ば予想してたのか?」

「ええ、部下に説明する訳にもいかないので、通しましたがあの内容では問題があります」

「協議をしたところで時間の無駄になると解っているが、領主が長官へと物申したとなれば面倒な事態になる。その抜け道を提示されて助かった」

「セイ様なら気付くかと踏んでの言葉でしたが、社交辞令として甘えて貰えないかと気を揉んでいたところです」

「社交辞令にしては変だ。あの時いた者の中で、訪ねても問題ないのはライだけだった。逆に気付いたら怒るのではないか?」

「大丈夫ですよ。その為にあの場に招待したのです。感謝したのを後悔しているくらいでしょう」

いい笑顔で応えるが内容は腹黒い。

ライはそれで済むが、特別扱いはできないから他の面々とも算段をつけて会うより他にないだろう。考えるだけ憂鬱で面倒だと溜息がでる。

「本題だが、薬師への依頼等は全て不要ということでいいか?今まで通り提携するのは薬草のみ。下の者同士での研究や実験は好きにして貰って構わない」

「ええ、それが妥当でしょう。逆に研究をお目こぼしして貰って申し訳ないくらいです」

「ちょっと待って下さい。なぜ依頼は不要なんです?必要でしょう。こう言っては何ですが、そちらの部下の方々では荷が重過ぎるでしょう」

「やっぱり。そう言ってくると思ったから、ライと話した方が早いと判断したんだ。治癒園に卸す分の肩代わりは不要だ。不要な在庫も要らないし、品質が一定ではない物は困る」

「アル。先程の内容を忘れてないか、セイ様は魔力量も多く質もいい。はっきり言って薬師達では足元にも及ばない。だから、申出自体が失礼極まりないんだよ」

「そんなことを言われましても、知りようがないでしょう」

「だから、報告書は通した。セイ様も敢えて角をたてない方法でお見えになったということだ」

「この後は其方の内部で上手く処理してくれれば、問題ない」

薬草園と治癒園は最近拡張した際に、職員を増員している。
まだ育成段階の者をみての言葉だろうが、領内の者を見下したような物言いは気分が悪い。

腹立ち紛れに後処理を丸投げさせて貰った、全て知った以上は下手な真似は出来ない。
いくら有能でも骨が折れるだろうが、見下した分は苦労してもらわないと面白くないと勝手なことを思っていた。

「アル。残念ながら自業自得です。ちゃんと注意したのに自爆してどうするんです」

「長官、一体いつ忠告をしたと?自爆後にフォローされても意味がないでしょう」

「おや、気付かなかったのですね。逆ギレは恥ずかしいですよ」

無駄口を叩かずに、どう処理するかを考えなさいと冷ややかに告げていた。

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