傍観者を希望

静流

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長官室へと通される。
少々お待ち下さい、とお茶を出して案内の役人は下がって行った。

長官室といっても、応接室より多少造りが良いだけで広さも変わらない感じだ。

逆に執務机や本棚があるから手狭に感じるが、此方の方が落ち着く。

部屋を観察しているのに気付いたアルフレッドが、咳払いをしてくる。

マナー違反だとは思うが、こういう機会はそうないから好奇心が湧いてしまう。

注意されても、ソワソワしているのに気付いたグレンは、反対にドアの側に寄りかかる。来たら合図してくれるようだ。

同じように気付いたアルフレッドが、呆れたように相方の名を呼んでいる。何をしてるという感じだが、それ以上何もしない。

暗黙の許可が出たので、これ幸いとキョロキョロと観察する。

本棚はこれ以上入らない程詰め込まれている。
ほぼ薬草に関する専門書で、他に法律や地理などの関連本がある。

置物等の飾りはなく、執務机もすっきりとしている。
掃除がしやすい空間だが、生活感は全くない。

他の長官室も似たような状態なのだろうか?
問題がある訳ではないが、多少味気なさ過ぎる気がするのだ。

グレンが壁から離れて、元の位置へ移動した。

同時にノックが響いてドアが開く。
薬師長ともう一人役人が一緒に入ってきた。

「遅れて申し訳ありません。私が、薬師長のライです。こちらは、副長官のアルノルド。お見知りおきを」

「ご丁寧にありがとうございます。ミンスファ領主のセイ・グラントです。急な来訪に応じて頂き感謝しています」

「このような場所に足をお運び頂き申し訳ありません。何か問題があったのでしょうか?」

「アル、落ち着きなさい。セイ様も領主ではなく、緑雲宮の主として来たのでしょう?」

「この部屋に居る以上は、立場を名乗るのが礼儀でしょう?まあ、先触れでは緑雲宮とした方がいいと判断したからですが」

「噂で聴いていましたが、壮々たる顔触れですね。対応した部下も慌てのでしょうが、そのお茶は申し訳ありません。貴方に出す物ではない」

アルノルドは不審気な態度を改めずに観ていたが、長官の言葉に目を瞬かせ一つだけ置かれていたお茶へ視線を向けた。

別段、何時もと変わらないお茶に見えるが、長官としては気に入らない様で茶器を自分の方へ移動させている。

何もない空間から新たにティーセットを出して人数分のお茶を手早くいれていく。

呆気にとられて見ていたが、拙いと慌てて制するが問題ないと退けられる。
その段階で、相手方を見遣ったら気の毒そうな表情で逆に見られてる。

「ライに振り回されてますね。お疲れ様です」

挙句よく解らない慰めを受けた。
隣から忍び笑いが聞こえて「酷いですね。至って普通でしょう?」と軽口を叩いている。

「ライ?普通は長官自らお茶をいれないし、グレン達の分まで用意しない」

「ですが、近衛騎士団長と宮司長を単なる側仕えの者と遇するのはどうかと」

「気にするのはそっちの方か。私の方が感覚が麻痺しているのか」

後ろで控えてる二人に座るように促したが、予想通り拒否され職務中ですの一点張りでお茶どころではなさそうだ。

「客人として参られたなら、どうぞお座りください」

ライから妙な圧を掛けられる。
動かない二人にだから甘えて貰えないんですよと、ボソッと言われたのには反応して腰掛けてきた。

「茶菓子は如何されます?お好きな物がありますよ」

茶菓子を出してくれるのならと、この間の要領で人数分の小皿を造り出して配った。

「っ!」「エッ⁉︎」「何処から?」と微妙な反応。
目の前の長官こと精霊は、「セイ様には負けます。何を新たに造っているんです」と苦笑したが、しっかり器の上には茶菓子が配されてる。

「何を競っているんですか?お二人が知己であるのはよく解りました。私は席を外しましょうか?」

「どうせなら、最後まで付き合いなさい」

「私もこのまま居てもらって構わない」

何故か共犯者(情報を共有する者)は必要だから逃さないという声が聞こえてくるような雰囲気が二人してある。
巻き添えになったようなイヤな予感がするアルノルドだった。
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