34 / 292
34
しおりを挟む
長官室へと通される。
少々お待ち下さい、とお茶を出して案内の役人は下がって行った。
長官室といっても、応接室より多少造りが良いだけで広さも変わらない感じだ。
逆に執務机や本棚があるから手狭に感じるが、此方の方が落ち着く。
部屋を観察しているのに気付いたアルフレッドが、咳払いをしてくる。
マナー違反だとは思うが、こういう機会はそうないから好奇心が湧いてしまう。
注意されても、ソワソワしているのに気付いたグレンは、反対にドアの側に寄りかかる。来たら合図してくれるようだ。
同じように気付いたアルフレッドが、呆れたように相方の名を呼んでいる。何をしてるという感じだが、それ以上何もしない。
暗黙の許可が出たので、これ幸いとキョロキョロと観察する。
本棚はこれ以上入らない程詰め込まれている。
ほぼ薬草に関する専門書で、他に法律や地理などの関連本がある。
置物等の飾りはなく、執務机もすっきりとしている。
掃除がしやすい空間だが、生活感は全くない。
他の長官室も似たような状態なのだろうか?
問題がある訳ではないが、多少味気なさ過ぎる気がするのだ。
グレンが壁から離れて、元の位置へ移動した。
同時にノックが響いてドアが開く。
薬師長ともう一人役人が一緒に入ってきた。
「遅れて申し訳ありません。私が、薬師長のライです。こちらは、副長官のアルノルド。お見知りおきを」
「ご丁寧にありがとうございます。ミンスファ領主のセイ・グラントです。急な来訪に応じて頂き感謝しています」
「このような場所に足をお運び頂き申し訳ありません。何か問題があったのでしょうか?」
「アル、落ち着きなさい。セイ様も領主ではなく、緑雲宮の主として来たのでしょう?」
「この部屋に居る以上は、立場を名乗るのが礼儀でしょう?まあ、先触れでは緑雲宮とした方がいいと判断したからですが」
「噂で聴いていましたが、壮々たる顔触れですね。対応した部下も慌てのでしょうが、そのお茶は申し訳ありません。貴方に出す物ではない」
アルノルドは不審気な態度を改めずに観ていたが、長官の言葉に目を瞬かせ一つだけ置かれていたお茶へ視線を向けた。
別段、何時もと変わらないお茶に見えるが、長官としては気に入らない様で茶器を自分の方へ移動させている。
何もない空間から新たにティーセットを出して人数分のお茶を手早くいれていく。
呆気にとられて見ていたが、拙いと慌てて制するが問題ないと退けられる。
その段階で、相手方を見遣ったら気の毒そうな表情で逆に見られてる。
「ライに振り回されてますね。お疲れ様です」
挙句よく解らない慰めを受けた。
隣から忍び笑いが聞こえて「酷いですね。至って普通でしょう?」と軽口を叩いている。
「ライ?普通は長官自らお茶をいれないし、グレン達の分まで用意しない」
「ですが、近衛騎士団長と宮司長を単なる側仕えの者と遇するのはどうかと」
「気にするのはそっちの方か。私の方が感覚が麻痺しているのか」
後ろで控えてる二人に座るように促したが、予想通り拒否され職務中ですの一点張りでお茶どころではなさそうだ。
「客人として参られたなら、どうぞお座りください」
ライから妙な圧を掛けられる。
動かない二人にだから甘えて貰えないんですよと、ボソッと言われたのには反応して腰掛けてきた。
「茶菓子は如何されます?お好きな物がありますよ」
茶菓子を出してくれるのならと、この間の要領で人数分の小皿を造り出して配った。
「っ!」「エッ⁉︎」「何処から?」と微妙な反応。
目の前の長官こと精霊は、「セイ様には負けます。何を新たに造っているんです」と苦笑したが、しっかり器の上には茶菓子が配されてる。
「何を競っているんですか?お二人が知己であるのはよく解りました。私は席を外しましょうか?」
「どうせなら、最後まで付き合いなさい」
「私もこのまま居てもらって構わない」
何故か共犯者(情報を共有する者)は必要だから逃さないという声が聞こえてくるような雰囲気が二人してある。
巻き添えになったようなイヤな予感がするアルノルドだった。
少々お待ち下さい、とお茶を出して案内の役人は下がって行った。
長官室といっても、応接室より多少造りが良いだけで広さも変わらない感じだ。
逆に執務机や本棚があるから手狭に感じるが、此方の方が落ち着く。
部屋を観察しているのに気付いたアルフレッドが、咳払いをしてくる。
マナー違反だとは思うが、こういう機会はそうないから好奇心が湧いてしまう。
注意されても、ソワソワしているのに気付いたグレンは、反対にドアの側に寄りかかる。来たら合図してくれるようだ。
同じように気付いたアルフレッドが、呆れたように相方の名を呼んでいる。何をしてるという感じだが、それ以上何もしない。
暗黙の許可が出たので、これ幸いとキョロキョロと観察する。
本棚はこれ以上入らない程詰め込まれている。
ほぼ薬草に関する専門書で、他に法律や地理などの関連本がある。
置物等の飾りはなく、執務机もすっきりとしている。
掃除がしやすい空間だが、生活感は全くない。
他の長官室も似たような状態なのだろうか?
問題がある訳ではないが、多少味気なさ過ぎる気がするのだ。
グレンが壁から離れて、元の位置へ移動した。
同時にノックが響いてドアが開く。
薬師長ともう一人役人が一緒に入ってきた。
「遅れて申し訳ありません。私が、薬師長のライです。こちらは、副長官のアルノルド。お見知りおきを」
「ご丁寧にありがとうございます。ミンスファ領主のセイ・グラントです。急な来訪に応じて頂き感謝しています」
「このような場所に足をお運び頂き申し訳ありません。何か問題があったのでしょうか?」
「アル、落ち着きなさい。セイ様も領主ではなく、緑雲宮の主として来たのでしょう?」
「この部屋に居る以上は、立場を名乗るのが礼儀でしょう?まあ、先触れでは緑雲宮とした方がいいと判断したからですが」
「噂で聴いていましたが、壮々たる顔触れですね。対応した部下も慌てのでしょうが、そのお茶は申し訳ありません。貴方に出す物ではない」
アルノルドは不審気な態度を改めずに観ていたが、長官の言葉に目を瞬かせ一つだけ置かれていたお茶へ視線を向けた。
別段、何時もと変わらないお茶に見えるが、長官としては気に入らない様で茶器を自分の方へ移動させている。
何もない空間から新たにティーセットを出して人数分のお茶を手早くいれていく。
呆気にとられて見ていたが、拙いと慌てて制するが問題ないと退けられる。
その段階で、相手方を見遣ったら気の毒そうな表情で逆に見られてる。
「ライに振り回されてますね。お疲れ様です」
挙句よく解らない慰めを受けた。
隣から忍び笑いが聞こえて「酷いですね。至って普通でしょう?」と軽口を叩いている。
「ライ?普通は長官自らお茶をいれないし、グレン達の分まで用意しない」
「ですが、近衛騎士団長と宮司長を単なる側仕えの者と遇するのはどうかと」
「気にするのはそっちの方か。私の方が感覚が麻痺しているのか」
後ろで控えてる二人に座るように促したが、予想通り拒否され職務中ですの一点張りでお茶どころではなさそうだ。
「客人として参られたなら、どうぞお座りください」
ライから妙な圧を掛けられる。
動かない二人にだから甘えて貰えないんですよと、ボソッと言われたのには反応して腰掛けてきた。
「茶菓子は如何されます?お好きな物がありますよ」
茶菓子を出してくれるのならと、この間の要領で人数分の小皿を造り出して配った。
「っ!」「エッ⁉︎」「何処から?」と微妙な反応。
目の前の長官こと精霊は、「セイ様には負けます。何を新たに造っているんです」と苦笑したが、しっかり器の上には茶菓子が配されてる。
「何を競っているんですか?お二人が知己であるのはよく解りました。私は席を外しましょうか?」
「どうせなら、最後まで付き合いなさい」
「私もこのまま居てもらって構わない」
何故か共犯者(情報を共有する者)は必要だから逃さないという声が聞こえてくるような雰囲気が二人してある。
巻き添えになったようなイヤな予感がするアルノルドだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。
発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。
何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。
そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。
残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる