傍観者を希望

静流

文字の大きさ
74 / 292

74

しおりを挟む
審判の騎士が、旗を振り下ろすと同時に打ち込む。

久々に剣を握っただけに、勘を取り戻す前に勝負がつく。

「大分鈍っているようだな」

「何とでも言えばいいが、次は貰う」

宣言通りに2本目は頂いた。

外野が騒いでいるが、勝負の前では音は掻き消される。

最後の勝負は、瞬殺で勝った。

体力や体格の差を身軽な俊敏さで補う。

私の場合は、如何に短時間で決着をつけるかで勝敗が左右される。

お互いの癖を知り尽くしている相手だけに、時間が長引くほど不利だ。

故に、ブランクを加味すれば、かなり無茶な闘い方をした。

「少しは手加減してくれてもいいのに、大人げない」

「おいおい。勝った方が言う台詞ではないし、手加減が必要な腕でもないだろう」

「現役の騎士の方が体力的に有利だろう」

「その有利さを、帳消しにするだけの技量持ちだ」

「騎士団長からお墨付きを貰ったと、喜んでおくよ」

「腕は、以前より格段に上がっているのは確かだ。保証する」

軽口に真面目な対応をされて見上げれば、何か言いたげで気遣うような眼差しだ。

打ち合えば気付くことを計算に入れてなかった。
詰めの甘さに気付いても後の祭りだ。

下手に誤魔化したら炎上どころでは済まない。
それだけに、この場でことを荒げない分別に感謝する。

視界の隅にグレンの呆然とした顔を捉えた。

執事であるアルフレッドは、早い段階で腕が立つことに勘付いていた。

本職のグレンは、何故か全く不審にすら思わないから、こうして荒治療する羽目になった。護衛対象が、自分よりも腕が上と理解していないと、身の危険がある。

面白くはないだろうが、知っていれば剣の腕のみを、主張する護衛が付く必要もない。


欲しい人材が向こうから近づいて来る。

内心ニヤリとするが、無関心をよそおう。

「手合わせを希望する者は5人まで受け付ける。誰かいるか?」

「では、手合わせ願いたい」

「同じく、お願い申す」

「私も手合わせをお願いします」

「我も是非とも手合わせを」

「私も手合わせを希望します」

提案すれば即座に声が上がる。申し合わせたように定員通りだ。

騎士同士で咄嗟に調整したのだろう。


息の合った団員に関心していれば、横から呆れたような嘆息が聞こえる。

「よくまあ、内の上位順が集まったな」

「そうなのか?上から観て気になった者は含まれているが」

「ああ。悪いが胸を貸してやってくれ」

「言われるまでもない、運動不足を解消させてもらおう」

「セイ様が、運動不足ならここに居る者は皆、鍛練不足と言われそうだな」

「自分の部下を脅してどうする。第一自分も含まれるだろう」

「10年ほどまともに運動一つしてない者に、負ける時点で痛恨したぞ」

「幾ら何でも柔軟運動くらいはしてる。騎士らしく、勝敗に尾を引かないでくれ」

「捨身の戦法で、仕掛けてきたセイ様には、言われたくないんだがな」

「私は騎士ではないし、生き残る為の剣だから意味が違う」

肩を竦めて告げれば、嘆息されるが反論はなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...