傍観者を希望

静流

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手合わせの順番が決まったようで、一人が近づいて来た。

「団長、歓談中に失礼します。始めてもよろしいでしょうか?」

「構わないが、断る相手を間違えてるぞ」

「名乗ってもいないんだから、礼を失しているのは私の方だよ」


断りを団長に求めた団員に叱責するのを制止する。

しかし、敢えて名乗るつもりもない。

移動して暗に開始を促す。

騎士は名乗らない相手に顔を顰め、団長に視線を向けている。

騎士団長は、苦笑し首を振って解答を拒否していた。


先程と同じ騎士が審判を務める。

旗が振り下ろされ、騎士が打ち込んでくる。

相手をいなし、打ち返す。

暫く繰り返す内に、苛立ったような振れた剣筋を跳ね上げ剣を飛ばした。

呆然としながらも、礼を返す所作は騎士らしい。


二番手の相手に流れるように変わり、試合が開始する。

前回同様、突っ込むように打ち込んでくる。

相手の剣を流し、打ち返す。力自慢のようで流さずに受ければ、手が痺れそうだ。

踏込む瞬間の隙を狙い、呆気なく勝負がつく。


三番手と四番手は共にのらりくらりとした剣だが、臨機応変さが足りない。

一人は此方の罠にかかり負け、もう一人は自爆して負けた。


五番手は緩急つけた剣筋で、隙を突きにくい。

始めて自分から仕掛けて俊速さで勝った。


流石に肩で息をしていると、五番手の騎士が寄ってくる。

「ありがとうございました。あの、失礼を承知でお訊きします。足を怪我されていませんか?」

「気付かれちゃったか。団長とした時に痛めたが、歩行には問題ないよ」

「いけません。癖になったらどうするんですか」

治療を勧め、救護班がいる所へ案内してくる。

「合格」と小さく呟き、アルフレッドへ視線を遣る。

即座に頷き了承を示してくる。
敏腕執事だけはあるが、どういう思考回路なんだか。

頼もしい執事だが、此方の一挙手一投足を見逃さないのも怖い。

促されるままに歩きかけたが、「失礼を」という言葉と共に抱きかかえられた。

「ぅあ⁉︎」と奇声を上げ、暴挙の主を見れば、騎士団長だ。

「もう気は済みましたよね。これ以上痛めるおつもりで?」

丁寧な言い方だけに圧が凄い。

反論は許すつもりはないと言外に告げている。


「いえ、充分満足です。お手数お掛けします」

反論なんて全くないと、大人しく腕の中に収まっておいた。

これで自分で歩くなんて言えば、烈火の如く怒ると解っている。


以前やらかして、暫くベットから降りることすら、禁止された過去があるのだ。
あれだけは、何がなんでも遠慮したい。
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