傍観者を希望

静流

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「セイ様?何を打診されたのですか」

「ああ、返答を聴いて話すつもりだったが、ライトとライカを緑雲宮で雇いたいのだ」

「雇うのは問題ありませんが、何をさせるおつもりですか?」

「ライトは侍従、ライカはメイドで置こうかと駄目かな」

「承知しました。では、その様に手続きをしておきます」

「手間をかけて済まない。それから、二人とも剣の腕は、ランより上だから安心していいよ」


「それでは、代理要員は不要なのではありませんか?」

「いや、対外的に騎士が不在なのは、問題だから必要だよ」

「では、なぜ二人を雇われるので?」

「気に入ったと言っても納得しないだろうね」

「ええ、ただ気に入っただけは雇わないでしょう?」

「来客時にも、警戒可能な人員が必要になりそうだからね」

「成人後に、備えるということですか」

「未成年の間は、色々と免除されていたけど、今後はそういう訳にはいかないでしょう?」

「ある程度は拒否して大丈夫です。回避できないものも有りますが、精霊の子に無理強いする程の集まりはないですから、ご安心下さい」


「意外に緩めな縛りだけなのか、子供の頃のように刺客が暗躍跋扈し、腹の探り合いをするものと決めてかかっていた」

「セイ様。幼少の頃に刺客が来ていたのですか?」

「ほぼ毎日のように来ていたが。どうかしたのか?」

「毎日違う刺客ですか?」

「勿論、毎日違う者だ。大体、仕留めた者がまた来たら、死体だぞ」

「まさか、全てセイ様が返討ちにされたのですか?」

「稀に体調を崩している時は、精霊が対処していたが、後始末が大変だった」

ふと当時の光景を思い出してしまい、吐き気を覚える。

あれは、悪夢にまでみる最悪な状況で、二度と御免だ。

精霊たちが、面白半分にいたぶり尽くして、放置したのだ。

有り体に言えば、興味が失せた時点で放り出して、忘れ去られたのだ。

回復後に、部屋から出て目にしたものは、地獄絵図の様な凄惨さがあった。

悲鳴に気付いた精霊王が、一瞬で綺麗にしたが、充満する死臭や血の香りが、消えるのに時間を要した。

完全に消えても臭う気がする。

幻臭だとも言われたが、強烈な体験がいつ迄も尾を引いた。

精霊は可愛いが、純粋で残酷な面があるのがよく分かった一件だった。


「セイ様、顔色が優れませんが大丈夫ですか?」

「問題ない。嫌なことを思い出しただけだから」

「未だ憶えているのか?」

「偶々、浮かんだだけだが、あれは簡単には忘れられない光景だ」

「確かにあれは、幼子に見せるべきでは無いな」

「精霊が本来どんなものか解る教訓にもなったが、どちらも知らない方が幸せだ」

「未だ癒えてないのだな、済まない」

「過ぎたことだ」

詫びるのを、一言で終わらせる。折り合いが、自分の中でもついてない。

悪いのは刺客であって、精霊は防いだだけだ。

やり方に多少‥いや、甚大な問題があるが、警護の一環として正しい。

精霊に文句を言うのは筋違いだ。

そう理解できるが、あの光景が全て台無しにする。


堂々巡りの思考を放棄して、アルフレッドに他に質問はと訊くが、此方も黙考中だったようで反応が鈍かった。

「念の為に確認ですが、王宮に移られた後は、刺客に襲撃されたりしましたか?」

「それは、訊くまでもないだろうが一切ないよ」

「それを聴き安堵しました。ですが、毎日の様に刺客を放たれるのは、普通は有り得ません。一応、緑雲宮の外の警備を強化するよう言っておきます」

「そこまで、神経質にならなくても大丈夫だよ」


「では、しばらくこの件は保留にしておきます」

成人後に再考して提案するのかもしれないが、以前の様な事態にはならない筈だ。

あれは、義母と大国の親族が、躍起になった所為で起こった事と調べがついている。

義母は未だに狙っているが、刺客を雇うほどの金を自由にできないように管理されている。

大国は金に糸目もつけずに仕掛けていたが、精霊の子を襲うほど愚かではない。

現在は、自国に取り込もうと策を弄していると報告書にもあった。

結果的に、両者から襲撃される確率は低くなっている。

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