108 / 292
108
しおりを挟む
「取り敢えず、大国はそれで対処できそうですか?もし、それでもごねる様なら、母の罪状も含めて大国が負うのか、お尋ね下さい。恐らくそれで黙るでしょうから」
「母とは義母のことか?それとも、まさか生母ではあるまいな」
ギョッとして此方を凝視してくる。
残念ながら実母の方だが、説明するのも気が滅入る。
拒否する様に目を逸らしたことが、雄弁に物語っている。
陛下は、疲れ果てた様に嘆息し、項垂れている。
「精霊が、此処に保護を求める筈だ。環境が悪いにも程がある。ああ、それから大国の方は報告書で事足りるだろうが、その伝言は保険として預かっておこう」
気を取り直すように、感謝を示してくる。
普段通りに振る舞おうとして、逆に空回りするような違和感が、空気を更に暗くした。
重苦しい雰囲気を、空間の歪みに気を取られて、皆一瞬忘れる。
ライカより、器用に結界への負荷を減らし、ライトが転移して帰還した。
即座に跪き、入手した証拠を差し出す。
此方が書類に目を通している間に、細々とした補足説明を、口頭で挟んでくる。
予想通りだが、よくこんな証拠が、都合よく見つかったものだ。
風の精霊とはいえ、短時間で的確な証拠を探し出す手腕には脱帽する。
陛下に、証拠を渡してライトを労う。
椅子に座らせ、新しいお茶を渡し、休憩を勧める。
しかし、この空間ではそう休んだ気がしないだろう。
寧ろ気疲れして、余計に体力や気力が枯渇しそうだ。
勧められるままに、ライトは淡々と無言でお茶を飲んでいる。
先程から、空気のように気配を消しているライカは、茶菓子を堪能している。
よくまあ、この雰囲気の中で、そんなに食べるものだ。
呆れ混じりに見ていれば、茶菓子が欲しいと勘違いして、差し出そうとする。
気にしなくていいと告げれば、不思議そうな顔をされる始末。
ライトは、そのやり取りを見て、こちらへ申し訳なさそうに頭を下げてくる。
差し詰め「ライカに悪気はないんです。申し訳ありません」という事だろう。
面倒見の良い兄のようで、微笑ましい光景だ。
首を微かに振り、構わないと無音で口で告げれば、肩の力を抜いている。
「この証拠があれば、自供に頼る必要もない。此方としては非常に助かるが、交渉材料が過多している。何か他に希望や要求はないのか?」
確かに、これでは慈善事業並みで、交渉としての取引になっていない。
とはいえ、これ以上希望する案件があったかと、頭を抱えて悩むのも、可笑しな話だ。
どうしたものかと、首を傾げる。
一つ思い浮かぶが、実際にやったら不都合が生じそうだ。
想像して顔を顰めた瞬間を陛下に見られ、言うだけ言ってみるように促される。
「ステファンが何か失策をした際に、援助若しくは助力をする権利は駄目…ですよね。では、此方も猶予期間をお願いするのは如何でしょうか?」
「立て直せるかの判断を、一定期間保留にするということか?」
「それよりは、失策後に国が梃入れするのを許可してくれれば、領主は据置きの方が良くはないか?その場合は、制限も含めて詳細を取り決めておく必要があるがな」
判断保留よりは、領民に負担が掛からないが、内政干渉にも繋がる懸念も出てくる。
その辺りを、話し合いで先に詰めておけば、不安は減るが…。
「では、後者の案で。但し、大国対策も兼ねているのでしょうから、国の管理下だと、揶揄されない内容になることが、大前提だと忘れないで下さい」
念の為に牽制しておけば、苦笑され解っていると返された。
「母とは義母のことか?それとも、まさか生母ではあるまいな」
ギョッとして此方を凝視してくる。
残念ながら実母の方だが、説明するのも気が滅入る。
拒否する様に目を逸らしたことが、雄弁に物語っている。
陛下は、疲れ果てた様に嘆息し、項垂れている。
「精霊が、此処に保護を求める筈だ。環境が悪いにも程がある。ああ、それから大国の方は報告書で事足りるだろうが、その伝言は保険として預かっておこう」
気を取り直すように、感謝を示してくる。
普段通りに振る舞おうとして、逆に空回りするような違和感が、空気を更に暗くした。
重苦しい雰囲気を、空間の歪みに気を取られて、皆一瞬忘れる。
ライカより、器用に結界への負荷を減らし、ライトが転移して帰還した。
即座に跪き、入手した証拠を差し出す。
此方が書類に目を通している間に、細々とした補足説明を、口頭で挟んでくる。
予想通りだが、よくこんな証拠が、都合よく見つかったものだ。
風の精霊とはいえ、短時間で的確な証拠を探し出す手腕には脱帽する。
陛下に、証拠を渡してライトを労う。
椅子に座らせ、新しいお茶を渡し、休憩を勧める。
しかし、この空間ではそう休んだ気がしないだろう。
寧ろ気疲れして、余計に体力や気力が枯渇しそうだ。
勧められるままに、ライトは淡々と無言でお茶を飲んでいる。
先程から、空気のように気配を消しているライカは、茶菓子を堪能している。
よくまあ、この雰囲気の中で、そんなに食べるものだ。
呆れ混じりに見ていれば、茶菓子が欲しいと勘違いして、差し出そうとする。
気にしなくていいと告げれば、不思議そうな顔をされる始末。
ライトは、そのやり取りを見て、こちらへ申し訳なさそうに頭を下げてくる。
差し詰め「ライカに悪気はないんです。申し訳ありません」という事だろう。
面倒見の良い兄のようで、微笑ましい光景だ。
首を微かに振り、構わないと無音で口で告げれば、肩の力を抜いている。
「この証拠があれば、自供に頼る必要もない。此方としては非常に助かるが、交渉材料が過多している。何か他に希望や要求はないのか?」
確かに、これでは慈善事業並みで、交渉としての取引になっていない。
とはいえ、これ以上希望する案件があったかと、頭を抱えて悩むのも、可笑しな話だ。
どうしたものかと、首を傾げる。
一つ思い浮かぶが、実際にやったら不都合が生じそうだ。
想像して顔を顰めた瞬間を陛下に見られ、言うだけ言ってみるように促される。
「ステファンが何か失策をした際に、援助若しくは助力をする権利は駄目…ですよね。では、此方も猶予期間をお願いするのは如何でしょうか?」
「立て直せるかの判断を、一定期間保留にするということか?」
「それよりは、失策後に国が梃入れするのを許可してくれれば、領主は据置きの方が良くはないか?その場合は、制限も含めて詳細を取り決めておく必要があるがな」
判断保留よりは、領民に負担が掛からないが、内政干渉にも繋がる懸念も出てくる。
その辺りを、話し合いで先に詰めておけば、不安は減るが…。
「では、後者の案で。但し、大国対策も兼ねているのでしょうから、国の管理下だと、揶揄されない内容になることが、大前提だと忘れないで下さい」
念の為に牽制しておけば、苦笑され解っていると返された。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる