傍観者を希望

静流

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「セイ様、一言よろしいでしょうか?」

「構わないけど、急に改まってどうかしたのか?」

「では、失礼ながら言わせて頂きますが、失策を前提に協議するのは如何なものかと。ステファン殿を、次期領主に指定した方が疑ってどうするんです。信用して任せるのでしょう?」


「…そうだが。一抹の不安もあるんだよ。若さと経験値の低さが、功を成す可能性を秘めている。しかし、騒動を引き起こしかねない要素もある。そして、問題が起こった際の対処法を、実地で学んでない。だから、突発事項に弱いんだよ。下手をすれば、遣ること為すこと全て裏目に出て、余計に空回りする事態に見舞われることも想定できる」


「それは、何方が領主になっても起こり得るのでは?」


「ああ、誰でもあり得る事態だが、代理領主である場合は致命的で辞職の危機だよ。だから、失策の際の救援策が、交渉材料になり得る」


「ステファン殿故の、提案ではないということですか。では、代替わり後は、全ての領主に当て嵌まる事項ということですね」


なるほど、其処に繋げる為の不線だったのかと納得する。

陛下は笑っているが、宰相殿は舌打ちしている。


「そういう事です。それで良いのですよね?」

にっこりと作り笑いで、了承を求めれば頷かれる。

ここで拒否するのは、得策ではないし、勘付かれた抜け穴を使うほど落ちぶれてない。


ライトが指摘してくれて助かった。

お礼を込めて見遣れば、嬉しそうな笑顔を向けられる。

幸せのお裾分けのようで、妙に楽しくなる。


「ミンスファ領の、今後の代理領主全てに適用した処で、まだ過多だと思うが‥、他には何かないのか?」


せっつく様に言われても、ない袖は振れない。

いい加減面倒になって、貸しにする事にした。


「貸しとは、また微妙な内容だな。無期限でお受けするが、利息はどうする?」


面白そうに訊いてくるが、金銭の貸付と同様に取り扱う気かと、げんなりする。

「利息は無しで良いのではないか?第一、どの程度の貸しかも不明なんだが」


自分で貸しにしたが、規模や程度に関しては借り手に判断を委ねた。


「セイ殿。面倒だからと、丸投げはしないでくれないか。まあ、気持ちは解らないではないが」


「では、使用範囲と回数制限を付けましょうか」

丸投げを咎められたので、無難な提案を上げれば、受入れられた。


政治関与しない範囲で、年に5回まで使用可能。

使わなかった時は繰越可とする。

なお、総数で50回分の貸付で落ち着いた。

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