傍観者を希望

静流

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目の前で跪き、深々と叩頭する義兄に、呆気にとられる。

アルフレッドに、案内されて東屋に入るやいなやの行動だ。

前置きもなく、急にされては流石に驚く。

「義兄さん、頭を上げて下さい。いったい、何事ですか?」

「セイ殿のお蔭だと陛下に伺いました。母がした事は、決っして赦されない事ですが、それでも命だけは、と願わずにいられませんでした。心から感謝します」

そう言って、折角上げた頭を再び叩頭する。
気持ちは分かるが、石畳と仲良くされるのは微妙だ。

「義兄さん、お気持ちは解りましたから、頭を上げて椅子に座って下さい」

渋る相手を、再三説き伏せて、漸く座ってもらった。

謹厳実直だとは、噂では聴いていたが、ここ迄だとは思わなかった。
かなりの頑固者だ。反面教師か隔世遺伝だろうか、親とは真逆に見える。


「あまり興味はないでしょうが、両親は田舎の領地で隠居することになり、私が領主に決まりました。弟は成人までは補佐役をし、その後は騎士団へ入る予定です」

淡々と、決定事項を報告してくれるが、何かと苦労が多くなる。

「こう言っていいのか疑問だけど、就任おめでとう。それから、結婚はどうするの?こう言ってはなんだけど、義兄さん達だけだと、女手が足りなくて回らなくなる」

祝辞を伝えたが、同時に懸念事項を挙げれば、顔を顰められた。

部外者が口を出す事ではないと、気分を害したかと不安になる。


「祝辞をありがとう。結婚話だが…、有るにはあったが、今回の件で流れた。まあ、縁がなかったんだろう。後、女手は遠縁のお嬢さんが、行儀見習いを兼ねて来る予定だ」

先程までの畏まった物言いが崩れ、素が出てしまっている。

意識が逸れて、気が回らなくなったようだ、と内心苦笑する。

アルフレッドは、冷ややかな目になっているが、悟られるような真似もしない。


「そう、いい人だと良いね。義兄さん、話は変わるけど。学園について内情を教えてくれないかな?」

急な話題の変更に眉を顰めるが、特に文句も言わずに乗ってくれる。

気が咎めている人の、感情を利用するような方法は、褒められたものではない。

解ってはいるが、嘘や偽り混じりの情報を避けるのには、義兄の様な存在は必要だ。


「藪から棒な質問ですが、学園の何が知りたいのですか?」

「学生側の内情、もっと言えば、表沙汰になっていない内々の情報が聴きたい」

説明するほど、顔が険しくなっていく。


「学園内の事は、学園内で治めるのが、最善だと思います。それでも、なお聴きたいと願われるのでしょうか?」


「その学園の、質の劣化を危ぶまれているとしたら、どうかな?実は、改善案を求められて、困っているんだ」


暗に、陛下の命令だと匂わせた。

サクッと話してくれないかと期待するが、顔が蒼白になっている。

公爵家がコレでは、内情は想像以上に悪そうだ。

溜息を吐き、義兄が我にかえるのを待つことにした。
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