傍観者を希望

静流

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執務室に迎え入れられて、何処か後ろめたそうな、よそよそしい対応に笑いが漏れる。

子供の頃と変わらない反応なだけに、安堵したのも事実だが、悪戯が見つかった時と同じというのも可愛いのだ。

領内の薬草園という閉鎖的な環境下だが、腹芸の一つも出来ない程の純真な訳でもないことは知っている。

それでも、素直なのは私への信頼と甘えからだと思えば、責める気にならない。
最も、それを見越した上でやっている可能性もあるが…。

「セイ様!そう笑わなくてもいいでしょう。もう。どうせ、私がする事は底が浅いですよ」

ぷりぷりと怒ってみせるが、本気でもなく、目がしっかり笑っている。

「態と分かるような真似をしていて、そう言うのは可笑しいだろう。もうやる必要もないから、中止して問題ないよ」

現状を伝え、勧められる前に席に着く。
呆きれ混じりの視線を向ければ、居心地が悪そうな顔をしている。

「つまり、大元も押さえたという事ですか?」

「そう、と言いたいところだけど、ちょっと違うかな。でも、此方に圧力をかける余裕はないから、安心していいよ」

妙な顔をされるが、事実だから仕方ない。
多少は仕掛けたけど、隠居に追い込んだのは義兄で私ではない。

「ありがとうございます?あの、それで訪問の理由は…」

何とも曖昧な言い回しで、本意を探ってくる。

「何で懐疑的なのか、じっくり話し合いたいところだが…、まあそれは、置いておいて、逆に尋ねたい。何故、賛同したフリをしてまで、馬鹿なことをしたか」

ジトと見据えれば、目を泳がせるように逸らしている。
口を開くまで、待つ姿勢を見せれば、暫く逡巡した後に諦めて応じてきた。

「セイ様。お気付きでは?それでも、敢えて尋ねる必要がありますか」

「大体の予想は着くが、確実でもない。それに、話を聞いて欲しいから、粗のある計画を立てたのだろう?」

悪足掻きをするなと睨めば、肩を竦める始末だが、結局のところステファン絡みだとは解っている。

何処までも、友情に厚い性格だ。
ただし、相手に理解されてない上に、空回りしている方が多いのが難点なのだが…。

「あれの勘が悪いのを知っているだろう。特に今回は、他にも問題が多発して気付いてもいない。伝えたい事があるなら、直接言わないと」

認めたくない事実に、顔を歪めているが、反論もない。

「次期領主は、ステファンに決定している。後は、実績を積んで信頼を得るのが、今後の課題で、乗り越えるべき壁だ。若さ故の問題もあるが、それも捉え方次第では強味になる。全て、ステファン次第だが、可能だと信じている」

顔をくしゃっとさせて、泣き笑いのようだ。

幼馴染なだけに、性格も熟知していて不安だったのだろう。

若さで暴走して潰されないか、心配して、領主には不向きだと判定を下して欲しかったのだ。

若しくは、自分から降りるのを望んで、あちこちに仕掛けを施していたのだ。
残念ながら、ほぼ私が回収してしまったのだが。

「撤回される事はないという事ですか…。でも、身内贔屓で判断してませんか?遠慮深謀にはほど遠いですし、短慮で短気なステファンですよ」

「まあ、間違っても権謀術数に適しているとは、言えないのは事実だが。昔ほど気は短くない。頭も切れるし、宰相殿に伝手があるだけでも、運営に有利だ」

友達にここまで駄目出しをされる、ステファンも多少哀れだが、さほど間違ってもいない。

でも、不正をはたらく者より、多少融通の効かない愚直な方が向いているのだ。

ステファンが一番適役だと、推す所以を知れば、機嫌を損ね兼ねないことを解っているから、敢えて無難な回答を返すが、自分でも説得力に欠けていると感じた。
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