傍観者を希望

静流

文字の大きさ
159 / 292

159

しおりを挟む
「…目覚めたことを後悔したくなりますね。何をやっているんだか」

未だに張り巡らされている結界の外で、陛下や宰相殿にドミニク達も混ざって騒いでいる。

心配されているというより、アルフレッド達が責められている。
騒いでいるから、落ち着いたら出ようかと思案していたのを中断して、耳を澄ませた。

「アルフ、一体どういうことだ?私は、寝込んだと報告を受けていない」

「セイ様が、3日間と宣言されたので、静観していました。騒ぎを嫌がられるかと判断させて頂いた結果で、報告を怠った訳ではありません」

「グレン。そなたも同じ考えか?」

「はい。アルフレッドの仰る通りで、セイ様の意向に添ったまでです」

拝跪し返答している姿は、普段と違う堅さを感じる。

「だが、未だに目覚めてないのは、どう釈明する気だ。側仕えを排除して眠るのが、普通だとでも言うつもりか?」

今まで聞いた事がない、冷ややかで高圧的な声音だ。
精霊を通して見ているだけでも、竦み上がるほどの怒気に、目を見張る。
そこまで怒ることだろうか?単に休憩を取っただけだ。何が悪いのかと首を捻った。

「信頼を得ていないという、お咎めでしょうか?その件でしたら、我らは謹んで処罰をお受けします。しかし、目覚めてないのは責められても困ります。まだ休息が足りてないのでしょうから、ゆっくり休んで貰うべきです」

泰然と構えて応じるアルフレッドは、拝跪している割に畏まってもいない自然体だ。
いきり立っている陛下の方が、矮小に見えるくらい平然としている。

脇で小さくなって控えていえるドミニク達といい、どういう状況なのか皆目解らない。

側にいた精霊達に尋ねれば、嬉々として教えてくれるのは良いのだが、断片情報で判然としないのが難点で、繋ぎ合わせるのに苦労するのだ。

なんとか理解できた事によれば、どうも陛下が昼過ぎに訪問したがったのを、ドミニクが止めたのだが、逆に不審がられた結果が現状のようだ。

「全く、ドミニクは腹芸が相変わらず下手ですね」

態とらしさ満載の言動を披露するよりも、いっそのこと沈黙を通した方がマシだが、制止するのには最低限理由が必要だ。

その場にブランディアかリラティスが居れば、上手く煙に撒いただろうが、そう都合良くはいかない。

結界の外では、依然陛下が八つ当たりして気炎を吐いている。
論点も大幅にずれてきているが、その辺りはアルフレッドの誘導だ。

アルフレッドは、寧ろ陛下で遊んでいるようで、目が楽しげな光を放っている。
横で控えているグレンが、察したようで微妙に腰が引けている。

どうやらかなり機嫌が悪いようだと、観ていた此方も口元がピクリと引き攣った。
やはり、あの場でグレンにのみ伝えたのは不味かったようだ。

序でとばかりに、精霊達もこの3日間の様子を口々に言い募ってくれるが、知ったことを後悔したくなる。

アルフレッドは、完全にキレている…。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...