傍観者を希望

静流

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静かな青白い炎のような怒りで、陛下は気付いていない。

しかし、勘の良い宰相殿は、しっかり認識しているようで、ドミニク達の側で同様に身を縮めている。自己防衛本能の賜物だ。

反して、陛下は八つ当たり対象にされているのに、全く勘付いてない。
怒りに任せて、気炎を上げているように見えて、アルフレッドに翻弄されている。
一種の操り人形だが、誘導が上手いので、察知されてないともいえた。

「流石だが…あんな芸当もアルフなら可能か」

元側仕えは伊達ではない。しかし、自分も大差ない立場で、非常に微妙な光景だ。

怒りの矛先が、陛下にも向いている事に気付いたのだが、理由がよく分からない。
私自身は、現状から考えても納得がいく。

「私に休息を勧めた事か?…いや、それも可笑しいか。では、巻き込んだことか?」

1人で自問自答を繰り返して、いるうちに状況が変化していた。

いつの間にか、完全に軌道が逸れ、本当に暴走している。
アルフレッドの操縦ミスのようだが、当人はさほど慌ててもいない。

それとは別に、何故だか義兄が此方に向かっていた。
陛下から言い聞かされた筈なのだが、今更なんの用があるのかと呆れが先にくる。

精霊によると、どうやら領地返上を迫りに来ているようで、心底ゲンナリさせられた。

あの両親の子にしては真面だと、多少は信用していただけに裏切られた気分になる。
だが、その反面やっぱりなと、どこか思っているのだ。

勝手さにかけては、似た者親子だと、半眼になっていた。

暴走中の陛下に、詰所を通過した義兄、鉢合わせすれば炎上どころでは済まない。
緑雲宮で、主の意向を無視して、騒ぎを引き起こす者たちに頭痛がしてくる。

「もう一度休憩し直したら、収拾が着かないでしょうが、放置したくなってきますね」

愚痴を漏らしながら、義兄の元に転移を試みていた。


「うっわぁ。びっくりした。驚かせないで下さい、セイ様」

飛び退いて、苦情を言われた。

「その言葉、そのままお返しします。いったい何の用ですか?」

「機嫌が悪いようですが、此方も寝耳に水で怒っているんです。なぜ勝手に国に領地を返上したのか、お聞かせ願いたい」

機先を制された所為で、顔を顰めて主張してきた。
さも、怒っていると言わんばかりの態度で、踏ん反り返っている。

滑稽過ぎて笑いが出るが、敢えて殺さない。

「その件なら、10年前に前当主である公爵が了承している。陛下が、説明しませんでしたか?」

「父上が了承したなんて聞いてません。第一、そんな真似する筈がない。割譲した領地を返上させたの間違えでは?」

鼻でせせら笑う義兄に、馬鹿らしくなってくる。
陛下と衝突させない様に、気を遣ったことが虚しくなった。

「先ず、屋敷で書類を確認されては?此方に来られても、無駄足になるだけです」

肩を竦めてみせたら、余計に熱り立って顔を赤黒くさせた。
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