179 / 292
179
しおりを挟む
「痛み入ります。では、私もアルフ同様に、ロバートの件をお願い申し上げます」
右に倣えとばかりに告げられ、陛下が苦笑を浮かべていた。
「陛下。私からの嘆願は、本来の責任者の安否確認を早急にお願いします」
宮の主人として、当然の主張をすれば、他の面々が眼を瞬かせている。
「そういえば、失念していたな。直ちに調査させよう」
陛下が、宰相殿に目配せをしていた。
「確か…名はサムでしたか?」
宰相殿が確認してきたが、意外にスルリと名が出てきた。
「そうですが、よくご存知ですね」
「おや?セイ様は、ご存知ではなかったのですか?彼は、結構有名人ですよ」
「…あのサムが、ですか?好好爺然としてますが…」
想像が思い付かず、首を傾げてしまう。
「本当に知らないのですね…。彼は、武勇伝で有名なんです」
眼を丸くして「は?」と聞き返し、二度見していた。
「別に、担いではないからな。若い頃は、国一番の腕だったのだ」
陛下が、笑って口添えしてきた。
「国一番って、あのサムですよね?」
つい、グレンに目を遣っていた。現在では、グレンがそう言い囃されているのだ。
「セイ様、サムは今でも現役ですよ。だから、下の詰所にいるんです」
腕を買われた、と言っているようなものだった。
「この宮、戦力過多では?」
何を考えてるんだかと、陛下に呆れた視線を向けた。
「セイ殿は、ご自分が暗殺者に狙われているのを、お忘れか?」
「雷を落とした後は、来てもいませんよ」
「残念ながら、一概にそうとも言えないのは、知らぬようだな」
「妙に、含みのある言いようですね」
眉根を寄せ、明確な情報を求めた。
「対外的な情報では、セイ殿の宮は他の所にしてあったのだが、そこには年間で数十件の暗殺者が入り込んで捕まっている。また、詰所が食い止めたものも何件かあった。これでも不要だと思うか?」
「…知らぬ間に、幾重にも守られていたという事ですか?囮の方に被害は?」
「捕縛時に負傷者が出た事もあったが、軽症で直ぐに復帰している程度だ。心配せずとも、子供は使ってないからな」
「セイ様、囮は等身大の人形です。気に病む必要はありません」
アルフレッドも言葉を添え、安心する様にと気遣ってくる。
だが、その内容自体が衝撃だった所為で、言葉は表面を撫でただけで、心には響かなかった。
「それは全て大国の手の者ですか、それとも他からでしょうか?」
感情の欠如した声音に、陛下が痛ましげな視線を向けていたが、それすら気付けない状態だった。
「全て大国だったが…。何をそれほど驚いているのだ?」
蒼白状態に陥っている私を、訝しげに見遣って聞いてきた。
「あの国は、精霊の子と知って一度は退いた筈なのに、なお狙う意図は何なのです?」
「それは私の方が知りたい。いったい何を考えてるんだか…」
陛下は首を傾げ、逆に探るような目で観てくる。
右に倣えとばかりに告げられ、陛下が苦笑を浮かべていた。
「陛下。私からの嘆願は、本来の責任者の安否確認を早急にお願いします」
宮の主人として、当然の主張をすれば、他の面々が眼を瞬かせている。
「そういえば、失念していたな。直ちに調査させよう」
陛下が、宰相殿に目配せをしていた。
「確か…名はサムでしたか?」
宰相殿が確認してきたが、意外にスルリと名が出てきた。
「そうですが、よくご存知ですね」
「おや?セイ様は、ご存知ではなかったのですか?彼は、結構有名人ですよ」
「…あのサムが、ですか?好好爺然としてますが…」
想像が思い付かず、首を傾げてしまう。
「本当に知らないのですね…。彼は、武勇伝で有名なんです」
眼を丸くして「は?」と聞き返し、二度見していた。
「別に、担いではないからな。若い頃は、国一番の腕だったのだ」
陛下が、笑って口添えしてきた。
「国一番って、あのサムですよね?」
つい、グレンに目を遣っていた。現在では、グレンがそう言い囃されているのだ。
「セイ様、サムは今でも現役ですよ。だから、下の詰所にいるんです」
腕を買われた、と言っているようなものだった。
「この宮、戦力過多では?」
何を考えてるんだかと、陛下に呆れた視線を向けた。
「セイ殿は、ご自分が暗殺者に狙われているのを、お忘れか?」
「雷を落とした後は、来てもいませんよ」
「残念ながら、一概にそうとも言えないのは、知らぬようだな」
「妙に、含みのある言いようですね」
眉根を寄せ、明確な情報を求めた。
「対外的な情報では、セイ殿の宮は他の所にしてあったのだが、そこには年間で数十件の暗殺者が入り込んで捕まっている。また、詰所が食い止めたものも何件かあった。これでも不要だと思うか?」
「…知らぬ間に、幾重にも守られていたという事ですか?囮の方に被害は?」
「捕縛時に負傷者が出た事もあったが、軽症で直ぐに復帰している程度だ。心配せずとも、子供は使ってないからな」
「セイ様、囮は等身大の人形です。気に病む必要はありません」
アルフレッドも言葉を添え、安心する様にと気遣ってくる。
だが、その内容自体が衝撃だった所為で、言葉は表面を撫でただけで、心には響かなかった。
「それは全て大国の手の者ですか、それとも他からでしょうか?」
感情の欠如した声音に、陛下が痛ましげな視線を向けていたが、それすら気付けない状態だった。
「全て大国だったが…。何をそれほど驚いているのだ?」
蒼白状態に陥っている私を、訝しげに見遣って聞いてきた。
「あの国は、精霊の子と知って一度は退いた筈なのに、なお狙う意図は何なのです?」
「それは私の方が知りたい。いったい何を考えてるんだか…」
陛下は首を傾げ、逆に探るような目で観てくる。
0
あなたにおすすめの小説
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる