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「セイ殿には迷惑をかけるが、ドミニクにとって母親のようなものなのだろう。今暫くは、相手をしてやってくれないか?」
逃げ場として頼まれては、流石に邪険にもできない。
「何方にしても、他の王子達も押し掛けてきますから、構いませんよ」
溜息を零し、肩を竦めるものの、結局は応じてしまう。
これでも、情は湧いているし、懐かれて嫌な訳でもないのだ。
母親の有無に関わらず、全員此処に入り浸っているのだから、今更だとも言える。
「ん?ちょっと待て、他の王子全員ではないだろうな?」
「残念ながら全員ですよ。面倒をみたのは事実ですが、此処に入り浸るとは想定外でした」
「…入り浸る?兄弟仲が、急に良くなったのはそういう事か」
唖然として、宰相殿に目を遣っている。
「私も存じませんでした。報告を忘れた訳ではありません」
宰相殿は、無実だと言わんばかりに強調していた。
だが、此方としては今更すぎて、白けた視線を向けたくなる。
先日から、何度も此処で顔を合わせただろうと、内心突っ込んでいた。
「陛下。ご子息方の動向を、全く把握されてないのですか?」
アルフレッドが、冷ややかな冷気を放ちながらも、穏やかに確認をとっている。
しかし、却って凄味を増し、陛下の顔色が一気に悪くなった。
「あ、いや…そのだな、最近忙しく…そう!忙し過ぎて見落としていただけだ」
陛下は、しどろもどろ言っていたが、急に勢いづいて力説しだした。
「陛下…もう少し真面な釈明が出来ないのですか?セイ様が、憂いた気持ちがよく分かりますな」
ドミニク同様の稚拙な内容に、アルフレッドが態と嘆いて見せている。
「アルフ、何が言いたいのだ。そう端折られては、話が見えないのだがな」
「ドミニク様が、精神的に幼いと憂いていたのですが、陛下を観て私も同様に感じたまでです。元侍従にして、教育係としては立つ瀬がなく哀しくなります」
憔然と言い募れば、陛下が居心地の悪そうな表情を浮かべ、目が泳いでいる。
「ドミニクは、まだ若く自覚に欠けているだけだ。そのうち落ち着くのではないのか?」
奇しくも、アルフレッドと似た言葉を返してきた。
当のアルフレッドも、気付いたようで上を仰ぎみている。
「私の周りには、何故こうも手がかかる者が多いのだか…」
嘆息混じりで零せば、皆揃って目を逸らす始末で、救いがない。
「その辺は、セイ殿の人徳だと思うが…。煩わしいのなら、制限を設けても構わないが、どうする?」
陛下は、形だけの提案をしてくるのだが、それほど本気ではなさそうだ。
「する気がないと判断しての提案は、お辞め下さい」
嘆息し、首を振って拒否しながらも、苦情を口にする自分に対して嫌気が差す。
「私としては、どちらでも構わないのも確かだ。何時でも応じる用意があるのは、心に留めておいてくれ」
陛下が苦笑を浮かべ、それは誤解だと肩を落としている。
「ですから、人を試すような言動はお控え下さい、と何度もご注意したのです」
アルフレッドが、慰めとも苦言とも取れる物言いをしている。
宰相殿も微妙に頷いていて、目はよく言ったと称賛しているようだった。
逃げ場として頼まれては、流石に邪険にもできない。
「何方にしても、他の王子達も押し掛けてきますから、構いませんよ」
溜息を零し、肩を竦めるものの、結局は応じてしまう。
これでも、情は湧いているし、懐かれて嫌な訳でもないのだ。
母親の有無に関わらず、全員此処に入り浸っているのだから、今更だとも言える。
「ん?ちょっと待て、他の王子全員ではないだろうな?」
「残念ながら全員ですよ。面倒をみたのは事実ですが、此処に入り浸るとは想定外でした」
「…入り浸る?兄弟仲が、急に良くなったのはそういう事か」
唖然として、宰相殿に目を遣っている。
「私も存じませんでした。報告を忘れた訳ではありません」
宰相殿は、無実だと言わんばかりに強調していた。
だが、此方としては今更すぎて、白けた視線を向けたくなる。
先日から、何度も此処で顔を合わせただろうと、内心突っ込んでいた。
「陛下。ご子息方の動向を、全く把握されてないのですか?」
アルフレッドが、冷ややかな冷気を放ちながらも、穏やかに確認をとっている。
しかし、却って凄味を増し、陛下の顔色が一気に悪くなった。
「あ、いや…そのだな、最近忙しく…そう!忙し過ぎて見落としていただけだ」
陛下は、しどろもどろ言っていたが、急に勢いづいて力説しだした。
「陛下…もう少し真面な釈明が出来ないのですか?セイ様が、憂いた気持ちがよく分かりますな」
ドミニク同様の稚拙な内容に、アルフレッドが態と嘆いて見せている。
「アルフ、何が言いたいのだ。そう端折られては、話が見えないのだがな」
「ドミニク様が、精神的に幼いと憂いていたのですが、陛下を観て私も同様に感じたまでです。元侍従にして、教育係としては立つ瀬がなく哀しくなります」
憔然と言い募れば、陛下が居心地の悪そうな表情を浮かべ、目が泳いでいる。
「ドミニクは、まだ若く自覚に欠けているだけだ。そのうち落ち着くのではないのか?」
奇しくも、アルフレッドと似た言葉を返してきた。
当のアルフレッドも、気付いたようで上を仰ぎみている。
「私の周りには、何故こうも手がかかる者が多いのだか…」
嘆息混じりで零せば、皆揃って目を逸らす始末で、救いがない。
「その辺は、セイ殿の人徳だと思うが…。煩わしいのなら、制限を設けても構わないが、どうする?」
陛下は、形だけの提案をしてくるのだが、それほど本気ではなさそうだ。
「する気がないと判断しての提案は、お辞め下さい」
嘆息し、首を振って拒否しながらも、苦情を口にする自分に対して嫌気が差す。
「私としては、どちらでも構わないのも確かだ。何時でも応じる用意があるのは、心に留めておいてくれ」
陛下が苦笑を浮かべ、それは誤解だと肩を落としている。
「ですから、人を試すような言動はお控え下さい、と何度もご注意したのです」
アルフレッドが、慰めとも苦言とも取れる物言いをしている。
宰相殿も微妙に頷いていて、目はよく言ったと称賛しているようだった。
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