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「…その件は、先程の謝罪に含まれないのか?含まれないのだな」
「当然では?先程は八つ当たりで暴走された件です。随分と無茶苦茶な理論を展開し、怒鳴り声をあげ、叱責もされてました。お蔭で、今も鼓膜がおかしい気がしますよ」
態とらしく耳を心配する素振りすら見せ、チラッと視線を投げてきた。
「その件については、既に詫びた筈だ。蒸し返すな」
陛下は、嫌そうに顔を顰め、手を振って更なる話を拒否している。
「はい。水に流してますが、それとコレは話が違うと言っているだけです」
「セイ殿。因みに何故、結界を張ったのだ?」
アルフレッドは、鷹揚に頷きつつも釘を刺し、陛下は面倒そうな顔をした後、此方に話を振ってくる。
「無意識で張り巡らせただけで、他意はないですよ。強いて言えば本能的なものです」
実際、寝込むと思わなければ、グレンにも何も言わなかった。
しかし、そうなると気付いたから、敢えて告げて寝込んだのだ。
無意識下では、厳重な結界を張り巡らせるのが、習性になっていて急になおるものではないし、命の危険を想定すれば、なおす気にもならない。
「…無意識って、普通可能なのか?」
「畏れながら、セイ様にはそれが普通で、逆に意識して張る方が難しい筈です」
ライが、仕方なさそうに援護し、助け舟を出してくれる。
「いや、それは…一般的ではないだろ。何でそうなるのだ?」
「陛下。気にすべきは其処ではなく、その状況では?」
何となく察した宰相殿が、陛下に呆れた視線を向けている。
意識する時間がないのが普通だと、指摘し注意を喚起させた。
「えっ。あ、そういうことか…。って、何を冷静に指摘している」
漸く理解した途端、今度は冷静に状況を把握した宰相殿を怒っている。
「私の職務ですが?」
「…私が悪かった。故に、その冷気はどうにかしろ」
八つ当たりの雰囲気が一転し、陛下が顔を青褪めさせている。
宰相殿から、凍りつく程の冷気が漂ったのだが、陛下に言われ一瞬で霧散した。
「ご納得頂いたようですね。そろそろ、アルフレッド殿にも非を詫びた方が宜しいかと」
理解したなら、早急に詫びろと圧力を掛けている姿は、立場が逆転した状態だ。
だが、さっきの今で、陛下も深く考えずに動いている。
「アルフ。結界の件も、私が悪かった。二度と責める事はしないと誓う」
あっさりと宣誓までしてくる始末に、唖然とするが、アルフレッド達は慣れているようで、取り立てて動じてもいない。
「では、次回がないと願いたいですが、あった場合は今回のような騒動にならない、と考えて宜しいですか?」
「ああ。粛々と目覚めるのを待つと誓う」
「分かりました。では、その件も水に流しましょう。グレンも、それで構いませんか?」
「私は、アルフに従うまでです」
陛下から言質を取り、アルフがグレンに確認したら、異論はないと言外に応じている。
「グレン。私に従ってどうするんです…貴方の主人はセイ様ですよ」
グレンの返事に、呆れたように指摘しているが、怒っている訳でもない。
「当然では?先程は八つ当たりで暴走された件です。随分と無茶苦茶な理論を展開し、怒鳴り声をあげ、叱責もされてました。お蔭で、今も鼓膜がおかしい気がしますよ」
態とらしく耳を心配する素振りすら見せ、チラッと視線を投げてきた。
「その件については、既に詫びた筈だ。蒸し返すな」
陛下は、嫌そうに顔を顰め、手を振って更なる話を拒否している。
「はい。水に流してますが、それとコレは話が違うと言っているだけです」
「セイ殿。因みに何故、結界を張ったのだ?」
アルフレッドは、鷹揚に頷きつつも釘を刺し、陛下は面倒そうな顔をした後、此方に話を振ってくる。
「無意識で張り巡らせただけで、他意はないですよ。強いて言えば本能的なものです」
実際、寝込むと思わなければ、グレンにも何も言わなかった。
しかし、そうなると気付いたから、敢えて告げて寝込んだのだ。
無意識下では、厳重な結界を張り巡らせるのが、習性になっていて急になおるものではないし、命の危険を想定すれば、なおす気にもならない。
「…無意識って、普通可能なのか?」
「畏れながら、セイ様にはそれが普通で、逆に意識して張る方が難しい筈です」
ライが、仕方なさそうに援護し、助け舟を出してくれる。
「いや、それは…一般的ではないだろ。何でそうなるのだ?」
「陛下。気にすべきは其処ではなく、その状況では?」
何となく察した宰相殿が、陛下に呆れた視線を向けている。
意識する時間がないのが普通だと、指摘し注意を喚起させた。
「えっ。あ、そういうことか…。って、何を冷静に指摘している」
漸く理解した途端、今度は冷静に状況を把握した宰相殿を怒っている。
「私の職務ですが?」
「…私が悪かった。故に、その冷気はどうにかしろ」
八つ当たりの雰囲気が一転し、陛下が顔を青褪めさせている。
宰相殿から、凍りつく程の冷気が漂ったのだが、陛下に言われ一瞬で霧散した。
「ご納得頂いたようですね。そろそろ、アルフレッド殿にも非を詫びた方が宜しいかと」
理解したなら、早急に詫びろと圧力を掛けている姿は、立場が逆転した状態だ。
だが、さっきの今で、陛下も深く考えずに動いている。
「アルフ。結界の件も、私が悪かった。二度と責める事はしないと誓う」
あっさりと宣誓までしてくる始末に、唖然とするが、アルフレッド達は慣れているようで、取り立てて動じてもいない。
「では、次回がないと願いたいですが、あった場合は今回のような騒動にならない、と考えて宜しいですか?」
「ああ。粛々と目覚めるのを待つと誓う」
「分かりました。では、その件も水に流しましょう。グレンも、それで構いませんか?」
「私は、アルフに従うまでです」
陛下から言質を取り、アルフがグレンに確認したら、異論はないと言外に応じている。
「グレン。私に従ってどうするんです…貴方の主人はセイ様ですよ」
グレンの返事に、呆れたように指摘しているが、怒っている訳でもない。
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