傍観者を希望

静流

文字の大きさ
214 / 292

214

しおりを挟む
「精霊の子が、本来どんな存在か失念しているのですかね?私なら、というより我が国ならとても恐ろしくて出来ません」

「桑原桑原」と呟いて首を竦めて見せるアルフレッドは、如何にも態とらしい上に目の奥が笑っている。だが、ふざけた真似で空気が少し弛むのを肌で感じ、気付かないうちに入っていた肩の力が抜けるようだった。

「アルフ。幾ら何でも、当人の前で普通しないぞ。私は、雷神になった覚えもないのだがな?」

「おや、言われてみればそうでしたな。これは失礼を致しました。ただ…こういう場合なんて言うのが正しいのでしょうか?」

「「桑原桑原」と言わないのは確かだが…。いや、そういう問題か?」

誘導されるままに、災い避けの言葉を考えかけて、ふと我に返った。
呆れた視線を投げかければ、ニヤッと笑われて全て込みの悪ふざけだと理解し、肩どころか全身脱力した。

「お引止めして申し訳ありませんでしたが、そろそろお休み下さい。何でしたら、ココアでもご用意致しましょうか?」

「いや、それには及ばないよ。じゃあ、お先に。アルフも、早く休んでね」

「御意に」

アルフレッドは、スッと態度を一変させ、静かに首を垂れ見送ってくる。
この辺りの絶妙さは年季故だろうが、此方の姿が見えなくなる迄、その姿勢を維持して微動だにしないのは、逆に此方の頭が下がる徹底ぶりだった。

「居るのだろう?」

部屋に戻って、ベットに浅く腰掛け虚空に言葉を投げれば、微かな忍び笑いの声が聞こえてきた。

「セイ様。このままで、失礼をさせて頂いて宜しいですかな?以前よりも監視、もとい警護の網が厳しくなってますからな、転移なんぞすれば即警報が響く仕組みのようですね」

「この部屋は私の管理下だが…、それでも無理そうか?」

「…二重三重に網が張られ、今や宮全体をすっぽりと包んで隙間すらありませんし、音は兎も角として、熱に反応するので無理ですよ。突如熱反応が増えたと察知されてしまいます」

「…何で、そう無駄に妙な技術は進化するんだか。技術大国でも目指してるのかね」

大国の精霊主義とは異なり、この国は科学技術が盛んで精霊が居なくても困らない生活が根付いている。だから、魔法を使えるものは少ないし、使えないのが一般的なのだ。

大国は生活を精霊と魔法に頼っている分、そちらが特化しているが、此方はそれに代わる人力や技術が発展し、探知魔法の代わりにセンサーが配備され、人力的には眼鏡で熱を感知する警備が主流だったりして、段々と遜色がなくなっている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

愛されない妻は死を望む

ルー
恋愛
タイトルの通りの内容です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

処理中です...