傍観者を希望

静流

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「グレンも、公爵家の長男ならば、この手の事は慣れてると思うが…違うのか?」

「話術は、巧みとは言い難いですが、言質を与えるほど、愚かでもないかと」

心許ない後押しだが、得た情報から判断する限りでは、断固拒否を貫いてはいるようだった。

「あ、陛下が到着したようだ。上手く、宥めてくれるといいのだが、弁が立つからな」

「どのお后様なんですか?」

「ブランの母君だよ。流石に、親子だけはあるが…。ああ、相手方が引いたようだ。アルフ、陛下のお茶も用意しておいて」

「はい。直ぐにご用意致します」

「心配せずとも、揉めてないようだ。どうも、王女殿下だけ不満そうらしいよ」

アルフレッドの顔色をみて、安心させるように軽く告げた。
直ぐにと言いつつも、動けないでいたアルフレッドも、小さく嘆息を漏らし退がっていく。何やかんや言いつつも、かなり心配だったようだ。

「セイ殿、お邪魔するよ。ああ、それからお届けもの」

陛下が、苦笑しながら入ってきて、グレンを前に出し茶化してくる。
抵抗する訳にもいかないグレンが、眉尻を下げ、申し訳なさそうにしていた。

「陛下。お手数おかけしましたが、もの扱いは、あんまりかと思いますよ」

「そう言うが、実際に回収してきたのは確かだぞ?」

「ええ、そうお願いしましたから、間違いないでしょうね。ですが、側室様と王女殿下では、グレンも分が悪いのでも頼みしたんです」

敢えて、王女殿下に力を入れて言えば、陛下も真顔になり、頭を下げてきた。

「その件は、私の手落ちだ。迷惑をかけて申し訳なかった」

「では、もう次はないと?」

「恐らく…としか言えん。引き際だけはいいが、残念ながら信用はできん」

陛下も顔を顰めているが、厄介な一族に狙われたものだ。
グレンに目を遣れば、此方は口元が引き攣っている。

「専任騎士を、無理矢理解雇する気ですか?」

「アレなら、やりかねんな。セイ殿も、よくご存知だろう?」

「ブランの件なら、同意しますが…国法まで、普通無視しますか?」

「我が子を、病人に仕立てる女だ。それくらい平気ですると思わんか?」

王位継承権がないならっと、病気にさせて使い潰すような親だ。
陛下の疑念も、強ち間違いに聞こえない。

「そうお思いなら、どうにかして下さい。側妃でしょう?」

「どうにか出来るのなら、とうにしている。あれは私の手に負えん」

顔を顰めて言われても、こっちも困るのだが、夫である陛下に無理なら、精々自衛するしかない。

「グレン。暫くは、この宮から出るのは禁止でいいか?アルフも、そのつもりで頼む」

「「畏まりました」」

「いや、何もそこまで警戒せずとも、大丈夫ではないか?」

「陛下が無理なら、自衛するまでですが?それとも、他にいい手段がありますか?」

過剰防衛だと言う割に、他の有効な手はないようで、黙ってしまった。
当のグレンは、出れない事に、異論はないどころか、何故か喜んでいるようだ。
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