傍観者を希望

静流

文字の大きさ
270 / 292

270

しおりを挟む
「では、アルフにしてみれば、グレンの立場の方が羨ましいとなるのか?」

「それこそ、当然ではありませんか?グレンは、本来の職務のみで雇用契約を締結させてます」

「当人はその事実こそを、引け目に感じているのだから、上手くいかないものだな」

どちらも、無いものねだり状態だと漏らせば、グレンは幾分顔色が悪い。

嫌な予感を抱きつつ、アルフレッドを見れば、態とらしい笑みを向けられ、漸く自分が術中に嵌まっていたと悟った。

「そんな顔をされて、如何なさいました?」

「アルフ、敢えて聞く方が意地が悪くないか?」

「それは、言い掛かりというものかと存じます。私は騙した訳ではありません。ましてや、嘘も付いてませんのに、酷いのでは?」

「先程の、アルフの言葉をそのまま返そうか?“ものは言いようだ”とね」

白々しく問われ、呆れ半分で応じたが、段々と苛立ちの方が勝ってきた。

上手く言いくるめられ、白状したようなもので、元々面白くなかった分も相乗し、最後には嫌味が混じる。

「ご無礼を致しました。グレンと結託され、少々言葉が過ぎたようです」

気分を害したと察し、即座に謝罪されれば、それはそれで自分が情けなくなる。

アルフレッドとの、年齢差を考慮すれば、当たり前だとしても、精神的な余裕が足りてない、と突き付けられている気がするのだ。

むろん、そんなことは誰も言わないし、単なる自分の被害妄想だと分かっている。

「アルフが詫びる必要はない。単なる八つ当たりだから、逆に悪かったな」

「セイ様が、我らに気兼ねする必要はないのですよ?年相応の我儘を言ったり、悪態を吐いても構いません」

「私は確かに未成年だが、領主であり、この宮の主だ。そんな真似は出来かねる」

アルフレッドの助言は、自分にとって許容外だったが、2人揃って肩を落とせば、なにやら悪いことを言った気がしてくる。

「セイ様の仰られる通りですが、それでは一体いつ、息抜きをされるので?」

「此処は、セイ様の家ではないのですか?」

其々の切り口は違えども、結局は同じ問いかけだ。
どちらも間違ってないのだが、それに対する応えが出てこない。

つい目を泳がせてしまい、アルフレッドが哀しげな顔をした。

「我々は、セイ様を困らせたい訳ではありません。ただ、一度よく考えて頂けませんか?」

「…分かった。だが、それで本当に良いのか?」

「はい。応えも不要ですから、焦らずに頭の片隅にでも、置いて頂ければ充分です」

そう、あっさりと引かれると、返っておざなりにも出来ない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。  発端は彼女の父親が行方不明となり、叔父である父の弟が公爵邸に乗り込んで来たこと。  何故か叔父一家が公爵家の資産に手を付け散財するが、祖父に相談してもコロネに任せると言って、手を貸してくれないのだ。  そもそも父の行方不明の原因は、出奔中の母を探す為だった。その母には出奔の理由があって…………。  残された次期後継者のコロネは、借金返済の為に事業を始めるのだ。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

処理中です...