せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我

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魔族と魔王と魔王軍と……③

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 クレハは魔王軍幹部の娘だと聞いていたが、実際話を聞いた時はあまり実感がわかなかった。そもそも魔王軍って何だろう。魔王軍幹部ってどれくらいすごいんだろう。そんな疑問を抱いていた。
 でも、そんなくだらない疑問は魔族の国に来てすぐに変わった。
「ようこそ!リョウト!私のふるさと魔族の国〈ヴァルドフ〉へ!ここが私の家よ!」
 あまりの光景に俺は呆然としていた。
「ありがとう。〈ソルド〉。後はリョウトと二人で歩いていくわ。あんた達は先に戻っていていいわ」
 転移?の黒い穴を出現させた執事風のおじいさんはソルドという名前らしい。クレハからお礼を言われ指示されると音もなくその場から、スッと消えた。
 その一連の流れに一瞬気を取られるも、俺はやはり目の前の景色にあっけにとられていた。
 クレハに紹介された目の前のクレハの家は、家というには洒落が聞いているともいえるほど大きく一つの村があるんじゃないかというほど広い。
 目の前の門から先が、すべてクレハの家の敷地だとすると、家と思える大きなお城のような建物までもだいぶ距離がある。
「あそこにあるお城みたいなのが、クレハの家なのか?」
「そうだよ!あそこにこれからリョウトも住むんだよ!」
 やはりそうらしい。昨日、ギルドの小さな宿泊部屋のベッドで寝ることに幸福を感じていたのに……。
 展開についていけなくなりそうだ。
 クレハの家へ向かい歩く道中気になっていたことを聞いてみる。
「そうだ!クレハと俺がここに来る経緯はわかるけど、なんでそのためだけにクアントに魔王軍総出で攻めてきたんだ?そんなことして戦う必要なんてなかっただろうに」
 ちょっと強い口調でクレハに問いかける。
「あぁ、あれはね、私に誰かから指輪が贈られて、求愛されて、私がそれに応えて2人が結ばれた場合、指輪が嵌められた時点で魔力の微量な変化から、私の本家、つまり今向かっている家にいる魔族に連絡がいくようになっているの。で、私に生涯のパートナーが出来たことに喜び勇んだ皆が私たちを迎えに大勢でクアントに押し掛けたところを魔王軍に侵略されていると思い込んだ人間たち、冒険者たちが襲ってきて致し方なく戦闘をすることになったんだよ。私が先に迎えに来たみんなのところに行ったときは、まだ戦闘が始まってなかったんだけど、そのすぐ後に何人も冒険者が駆けつけてきて、我先にと攻撃を仕掛けていっていたからみんなは応戦するしかなったの。あまり怒らないであげて…………」
 うーん……なら、仕方ない…なぁ。
 もしかして、魔族って思ったよりも悪いやつじゃないんじゃないだろうか?
「魔族と人間って敵対してるんだよな?」
「敵対しているというか、前にも言ったと思うけど、種族の違いと魔族と仲のいいモンスターもいるっていう理由で人間側が勝手に敵だと思い込んでいるだけだよ。モンスターと仲いいって言っても、この〈ヴァルドフ〉で魔族と一緒に暮らしているモンスター限定だし!あとは、モンスターを連れている魔族が多いのは、リョウトが私にくれた〈キャプリング〉の効果のスキル版〈テイムスキル〉を持っている魔族が多いからで、私達が依頼で討伐したキバノシやブルルと魔族が繋がっているなんてことはないんだよ。あのモンスターは野生の人間の領土で繁殖したモンスターなんだからね」
「へー、そんなスキルがあるのか。………あれ、でもさっきクレハの家の人たちがクアントに来た時に街にいたブルルに俺襲われたんだけど…」
「それは襲ったんじゃなくて、みんながテイムしていたモンスターにリョウトを探すように命令して、探させてたんだよ。で、リョウトを私のところに連れて行こうとリョウトに近づいたら腰の赤いマジックバッグが目に入って、突進するような形になったんじゃないかな?」
 あー、なるほど。
「それに魔族は本当は、人間とも仲良くしたいんだよ!それでこれまでもいろんな方法で人間の国に行ったりしていたんだけど、気づいたら人間に石を投げられることになっていたんだよ。だから、今の魔王様は人間側と手と取り合うことを諦めているの。だから、私と一緒に魔王になって!そして、人間たちと仲良くなれるように頑張りましょう!リョウト!」
「…………。あ、うん、それはいいんだけど、俺は人間だけど、魔王になれるの?」
「それは大丈夫よ!リョウトも今はもう立派な魔族だから!ほら、私は髪で隠していたけど、首の後ろに紋章があるでしょ?これが魔族の証なの。リョウトの、ほら!右の手の甲にも紋章があるでしょ!」
 そんな馬鹿な…。今までなかったのに紋章なんてあるわけが…………。
「…………。本当だ!!なんで!?」
 俺魔族になっちゃったの??
「ほら、ここに来る前に、キバノシの串焼き食べたでしょ?あれに、人間を魔族に変える薬と私の血を少量混ぜておいたのよ!で、無事に魔族になれたってわけ!」
 あぁ、なるほど…………。ってえぇぇぇ!!!声には出さないけど衝撃がすごい、俺心身ともに魔族なのね。
 気持ちはとっくに魔族側になったつもりでいたけど、まさか身体もとは…………。
「なるほど、そういうことだったのか!なら、これでクレハと一緒の魔族だな!俺、うれしいよ!」
「ほんと!!よかった!リョウトならそう言ってくれると思ってた!」
「うん。アハハ…」
 俺、本当に魔族になりました。
「あ、着いたよ!じゃあ、中に入って、魔王軍幹部である私の親にこのことの説明と、次期魔王を決めるこれからのことについて聞きに行きましょう!」
「あぁ……!」
 クレハは、俺の手を握り、大きなお城のような家の扉を開けた。
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