ちゃぼ茶のショートショート 「二股演劇」

ちゃぼ茶のショートショート 「二股演劇」

「ちょっと待って…マジで！」

おれの目の前には俺たちを見た彼女が…

鬼のような形相で俺に向かって歩いてくる…

「本当に誤解なんだって」


～～～10分前～～～

ピンポーン！

「はぁーい！」

俺は一人暮らしをしている小さな部屋に綺麗な女性を招き入れた

交際している彼女ではないが…

部屋に来たのはミキ

最近SNSで知り合ってからの仲だ

「マサキ君！今日来ちゃったけど大丈夫なの？彼女さん」

「大丈夫大丈夫！今日は出張に行ってるから！」

そう

同棲している彼女のヨウコは今日出張で九州に今朝、家を出た

そう言ってミキを部屋のソファーに座らせる

ミキは俺に彼女がいることは知っている

知り合ったのは最近だが、考えていることが驚くほど通じるのだ

2人でソファーに座り、ムフフな展開を…

その時

ガチャ

「忘れ物したーー」

彼女のヨウコが帰ってきた…

「ま、まずい」

「マサキ！？まだ寝てるの～？」

「「あ……」」

ば、バレた…

「マサキ！誰この人？？」

「いや、この人、俺のストーカーみたいな…」

「はぁ？」

ミキが俺をにらみつける

「いや………」

俺は小声で隣のミキに伝える…

「さ、さっして…お願い」

俺はお願いするように子犬のような目でミキを見る

今こそ俺たちの心の繋がりを信じて考えをテレパシーで伝える

この場だけ、悪者になってくれる事を祈る

すると

「わ、わかったよ…」

小声でミキが言う

「何ごちゃごちゃ言ってるのぉ！！」

ヨウコが俺の胸ぐらを掴む

「だから、この人最近嫌がらせしてくるストーカーで…すぐに帰ってもらうから…」

「おい！すぐ帰れこのストーカー！」

俺はミキに向かって少し興奮気味に

我ながら演技が上手い…

と、周りを見渡す

ミキがいない

ガチャガチャ

音のするキッチンを見ると

ミキがキッチにいた

「マサキが言ったんだからね！！！」

ミキが叫びながら俺に向かって走ってくる

ドスゥ

「はぁ」

俺のお腹に激痛が走る

目を向けると、そこには包丁が

ミキはその場で倒れ込みながら

つぶやいた

「マサキが言ったんだからね…これでいいんだよね？」

「刺してって…」

ミキが言った言葉を聞きながら俺は倒れた…

言葉にできていたか分からないが

俺は口にした

「察してって言ったのに…」