18 / 19
17話 綺麗な故郷
しおりを挟む
───数週間後後、俺はハロと共に街を歩いていた。
「ハロ、昨日の報酬受け取ったよ!」
「…………」
「ハロ!」
「え?あぁ、ありがとうセータ」
「ハロ、今日はどこに行くの?」
「んー、今日はね……あ、そうだ!ちょっと寄りたいところがあったのを思い出したよ!」
「ハロ、最近忙しすぎるんじゃないか?ちゃんと休んでる?」
「え?うん、僕は毎日元気だよ?」
「そう……」
まあ本人が良いと言うならいいのだろう。
しかし最近はずっとこの調子だ。
上の空だったり、あきらかに元気が無かったり。何かを隠しているような気がする。
そんな事を考えながら歩いているとハロが突然立ち止まる。
「着いたよ、ここだ」
「ここは……武器屋?」
中に入ると鉄の匂いが鼻をつく。
壁一面に剣や槍、弓などが飾られている。
俺が最初に装備を買ってもらったお店とは異なった、とても専門的なお店のようだ。
そして奥には珍しい魔法の道具なども置かれている。
「こんにちは、店長さんいますか?」
「おう、ハロか!久々じゃねぇか!またうちの商品を買ってくれるのか!?いい弓を揃えてるぜ!」
「いえ、今日は違うんです、少しお願いがありまして」
「なんだ?言ってみな!」
「実はですね……」
ハロが事情を説明すると、店主は驚いたように声を上げる。
「おいおい、そりゃ本当か?そいつは確かに珍しいな……わかった、こっちで調べてみるぜ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
そう言うと2人は店の奥へと消えていった。
俺は店の外で待つ事にする。
「……なんかあったの?」
「ああ、ちょっと頼まれ事をされたんだよ」
「ふぅん」
「……セータは僕が急にいなくなったら寂しい?」
「え?いや別に」
「……即答されると傷つくんだけどなぁ」
「だってどうせすぐ戻ってくるでしょ?」
「…………」
「ハロ?」
「……なんでもないよ、さ、帰ろうか」
「ああ」
それから数日は何事も無かった。
いや、正確に言えば、ハロが出かける頻度は増えた。
何をしているかはけっして教えてくれないが、ハロがいない時は大抵あの武器屋の主人の所なようだ。
2人が一体何を話し合っているのかはわからない。
でもハロはいつも笑顔だった。
そして、その日は唐突にやってきた。
「セータ、準備はいい?」
「うん?別にいいけど」
「じゃあ行こうか」
「行くってどこに?」
「僕の故郷だよ」
「ハロの?」
「うん、ついてくれば分かるよ」
「……分かった」
「それじゃあ、いこうか」
俺達はファイに乗り、森を大きく迂回して移動する。
依頼等では滅多に来ない場所だ。
何故ならこの辺りはモンスターが一切出ないからだ。
ファイを森の入り口に待機させ、ハロは僅かに道のようになっているそれを進んでいく。
そこには森の中には似つかわしくない、ステンドグラスでできたようなオブジェクトが置いてあった。
その違和感に多少身構える。
「ハロ……これは?」
「警戒しなくても大丈夫だよ、これはクロスゲートっていう大掛かりな移動用の魔法道具さ」
「移動用……瞬間移動ができるやつ!?」
「はは、そうだね、とても高価な物だから滅多にお目にはかかれないけど」
「なんでこんなところに……」
「セータ、手を」
「ん?」
ハロがそのオブジェクトに触れて魔法を唱えると立ちくらみのような閃光が目の前を包む。
そして一瞬で景色が変わる。
そこは、とても美しい場所だった。
周りには見た事のない植物や果物が実っており、少し遠くに見える村の中にはお洒落な家がいくつも見える。
陽気な音楽が流れてきそうだ。
「ここは?」
「僕の故郷の村さ」
「ハロの?」
「素敵な場所だろう?」
「うん、恐ろしい程綺麗な場所だね」
「気に入ってくれたかな?」
「もちろん」
「良かった」
「ハロの家族や友達に会いにいくの?」
「……そうだね」
ハロは笑ってはいるが、明らかにテンションは低い。
故郷だというのに何故なのだろうか。
その疑問は村の中に入ると徐々に晴れていく。
昼であるというのにあまりに人の気配がない。
しかし生活感はある、だから村の皆がサプライズで隠れんぼをしているかのような、そんな雰囲気だ。
開演前のエルフの村のテーマパークという表現もできてしまう具合だ。
「ハロ……何があったの?」
「ここはもうエルフは住んでないんだ」
「え?」
「それも30年前くらいからね」
「えぇ!?!?」
ハロが言っていることが理解できない。
いや、理解はできるのだが、目の前で見えている景色と30年という歳月は見合わない。
もしかしてハロがずっとここを維持してきたのか?
いや、流石にそれは無理だろう。魔法か何かによるものなのだろうか。
「ここはね、数十年間ずっと、あまりに浄化されすぎた場所だったんだ」
「……浄化?どういう事?」
「少し長い話になるけどね」
ハロは初めて彼の過去を語ってくれた。
それはそれは悲しい、1人のエルフの少年の話を。
「ハロ、昨日の報酬受け取ったよ!」
「…………」
「ハロ!」
「え?あぁ、ありがとうセータ」
「ハロ、今日はどこに行くの?」
「んー、今日はね……あ、そうだ!ちょっと寄りたいところがあったのを思い出したよ!」
「ハロ、最近忙しすぎるんじゃないか?ちゃんと休んでる?」
「え?うん、僕は毎日元気だよ?」
「そう……」
まあ本人が良いと言うならいいのだろう。
しかし最近はずっとこの調子だ。
上の空だったり、あきらかに元気が無かったり。何かを隠しているような気がする。
そんな事を考えながら歩いているとハロが突然立ち止まる。
「着いたよ、ここだ」
「ここは……武器屋?」
中に入ると鉄の匂いが鼻をつく。
壁一面に剣や槍、弓などが飾られている。
俺が最初に装備を買ってもらったお店とは異なった、とても専門的なお店のようだ。
そして奥には珍しい魔法の道具なども置かれている。
「こんにちは、店長さんいますか?」
「おう、ハロか!久々じゃねぇか!またうちの商品を買ってくれるのか!?いい弓を揃えてるぜ!」
「いえ、今日は違うんです、少しお願いがありまして」
「なんだ?言ってみな!」
「実はですね……」
ハロが事情を説明すると、店主は驚いたように声を上げる。
「おいおい、そりゃ本当か?そいつは確かに珍しいな……わかった、こっちで調べてみるぜ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
そう言うと2人は店の奥へと消えていった。
俺は店の外で待つ事にする。
「……なんかあったの?」
「ああ、ちょっと頼まれ事をされたんだよ」
「ふぅん」
「……セータは僕が急にいなくなったら寂しい?」
「え?いや別に」
「……即答されると傷つくんだけどなぁ」
「だってどうせすぐ戻ってくるでしょ?」
「…………」
「ハロ?」
「……なんでもないよ、さ、帰ろうか」
「ああ」
それから数日は何事も無かった。
いや、正確に言えば、ハロが出かける頻度は増えた。
何をしているかはけっして教えてくれないが、ハロがいない時は大抵あの武器屋の主人の所なようだ。
2人が一体何を話し合っているのかはわからない。
でもハロはいつも笑顔だった。
そして、その日は唐突にやってきた。
「セータ、準備はいい?」
「うん?別にいいけど」
「じゃあ行こうか」
「行くってどこに?」
「僕の故郷だよ」
「ハロの?」
「うん、ついてくれば分かるよ」
「……分かった」
「それじゃあ、いこうか」
俺達はファイに乗り、森を大きく迂回して移動する。
依頼等では滅多に来ない場所だ。
何故ならこの辺りはモンスターが一切出ないからだ。
ファイを森の入り口に待機させ、ハロは僅かに道のようになっているそれを進んでいく。
そこには森の中には似つかわしくない、ステンドグラスでできたようなオブジェクトが置いてあった。
その違和感に多少身構える。
「ハロ……これは?」
「警戒しなくても大丈夫だよ、これはクロスゲートっていう大掛かりな移動用の魔法道具さ」
「移動用……瞬間移動ができるやつ!?」
「はは、そうだね、とても高価な物だから滅多にお目にはかかれないけど」
「なんでこんなところに……」
「セータ、手を」
「ん?」
ハロがそのオブジェクトに触れて魔法を唱えると立ちくらみのような閃光が目の前を包む。
そして一瞬で景色が変わる。
そこは、とても美しい場所だった。
周りには見た事のない植物や果物が実っており、少し遠くに見える村の中にはお洒落な家がいくつも見える。
陽気な音楽が流れてきそうだ。
「ここは?」
「僕の故郷の村さ」
「ハロの?」
「素敵な場所だろう?」
「うん、恐ろしい程綺麗な場所だね」
「気に入ってくれたかな?」
「もちろん」
「良かった」
「ハロの家族や友達に会いにいくの?」
「……そうだね」
ハロは笑ってはいるが、明らかにテンションは低い。
故郷だというのに何故なのだろうか。
その疑問は村の中に入ると徐々に晴れていく。
昼であるというのにあまりに人の気配がない。
しかし生活感はある、だから村の皆がサプライズで隠れんぼをしているかのような、そんな雰囲気だ。
開演前のエルフの村のテーマパークという表現もできてしまう具合だ。
「ハロ……何があったの?」
「ここはもうエルフは住んでないんだ」
「え?」
「それも30年前くらいからね」
「えぇ!?!?」
ハロが言っていることが理解できない。
いや、理解はできるのだが、目の前で見えている景色と30年という歳月は見合わない。
もしかしてハロがずっとここを維持してきたのか?
いや、流石にそれは無理だろう。魔法か何かによるものなのだろうか。
「ここはね、数十年間ずっと、あまりに浄化されすぎた場所だったんだ」
「……浄化?どういう事?」
「少し長い話になるけどね」
ハロは初めて彼の過去を語ってくれた。
それはそれは悲しい、1人のエルフの少年の話を。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました
水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。
世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。
「見つけた、俺の運命」
敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。
冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。
食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。
その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。
敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。
世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる